下半期注目の恋愛番組『バチェラー』『ラブトランジット』『ラブキャッチャージャパン2』が映す現代の恋

下半期注目の3番組が映す現代の恋愛観

 恋愛リアリティーショーの人気が止まらない。いや、むしろ加速している、と言った方が正確かもしれない。この秋から冬にかけて、特に注目を集めているのが、ABEMAで全話無料配信中の『ラブキャッチャージャパン2』、そしてAmazon Prime Videoの『ラブ トランジット3』『バチェラー・ジャパン シーズン6』だ。それぞれまったく異なるアプローチで「恋愛」を切り取る3つの番組を、じっくり紹介していきたい。

『ラブ トランジット シーズン3』

 元恋人たちが一つ屋根の下で共同生活を送る——。この設定だけで、もうドラマが始まっている。『ラブ トランジット シーズン3』が描くのは、別れた相手と再会しながら、新たな出会いも経験するという、他の番組にはない独特の世界観だ。シーズン1・2の大反響を経て、もはや恋愛リアリティショーの新定番と言っていいだろう。

 大きな見どころは、元恋人であるXと向き合う、参加者たちの心の揺れ方だ。かつて愛し合った相手の変化に戸惑い、同時に変わらない部分に心を揺さぶられる。新しい出会いに心を開きながらも、元恋人との過去の記憶からは逃れられない。この「清算できない過去」と「踏み出せない未来」の狭間で揺れる姿は、多くの視聴者の胸に刺さる。

 復縁か、新しい恋か。その選択の過程で見せる参加者たちの素直な感情の揺れこそが、この番組最大の魅力だ。それぞれの恋愛観が色濃く現れるからこそ、見終わった後に「あのシーン、どう思った?」と誰かに話したくなる。そんな番組なのである。

『バチェラー・ジャパン シーズン6』

 「恋愛リアリティーショーといえば?」と聞かれたら、多くの人が真っ先に思い浮かべるのが『バチェラー』シリーズではないだろうか。1人のバチェラーを巡って複数の女性が競い合う、シンプルだが、それゆえに普遍的な魅力を持つ王道フォーマットだ。

 シーズンを重ねても色褪せないのは、このシンプルな設定の中に現代の恋愛の本質が凝縮されているからだろう。限られた時間の中で相手を知り、自分をアピールし、ライバルとも向き合う。女性同士の駆け引きも見どころの一つで、この極限状態が参加者たちの本音を容赦なく引き出していく。煌びやかなロケーションでのカクテルパーティは、まさに現代版シンデレラストーリーを彷彿とさせる。シーズン6の久次米一輝が「王子様すぎる」と話題を呼んだことも記憶に新しい。

『ラブキャッチャージャパン2』

 恋愛リアリティーショーの常識を覆したのが『ラブキャッチャージャパン2』だ。参加者は「ラブキャッチャー(愛を求める者)」と「マネーキャッチャー(賞金を狙う者)」に分かれ、この設定が生む、かつてない心理戦が最大の魅力となっている。

 シーズン2では賞金が1000万円に大幅アップ。この高額賞金を山分けするため、マネーキャッチャーたちは必死にラブキャッチャーを演じなければならない。しかも、マネー   キャッチャー同士がカップルになると賞金はもらえない。マネーキャッチャーは賞金を得るために本物のラブキャッチャーとカップルになる必要があり、全員が「相手の正体」を見抜かなければならないのだ。この二重、三重に張り巡らされた駆け引きが、予測不能なドラマを生み出している。

 注目すべきは、シーズン2の参加者たちの恋愛スキルの高さだ。特にマネーキャッチャーの恋愛テクニックには目を見張るものがある。自然な距離の詰め方、絶妙なタイミングでの気遣い、相手の心に響く言葉選び——恋愛番組を見慣れた視聴者でさえ「これは本物の恋では?」と思わせる巧妙な演技を披露するのだ。

 一方で、ラブキャッチャーたちの観察眼も侮れない。デートでの言動、些細な表情まで、すべてが「愛の証明」か「演技」かを見極める材料になる。相手の矛盾や違和感を見逃さず、細かな言動から正体を探ろうとする姿勢は、まさに恋愛における真剣勝負そのものだ。

 しかし、これが意外と難しい。本気で愛を求めるラブキャッチャーをマネーキャッチャーと疑い、脱落させてしまうケースも少なくない。この読み違いが生む予想外の展開もまた、番組の面白さの一つと言えるだろう。

 三角関係、四角関係は当たり前。さらに「現在のマネーキャッチャーが3人なら、おそらく……」といった推理も加わったレベルの高い心理戦が、従来の恋愛番組にはない『ラブキャッチャージャパン』ならではのスリルを生み出している。視聴者も参加者と同じ目線で推理を楽しめるのが、この番組最大の醍醐味だ。

3番組が映し出す現代の恋愛観

 現代の恋愛は、以前に比べてスピード感が増している。マッチングアプリやSNSで知り合い、メッセージのやり取りを経て、あっという間に初デート。そこから交際へと、すべてがスピーディーに進んでいく。効率的で、多くの人と出会えるというメリットもある。だが一方で、「この人は本当にどんな人なのか」を十分に知る前に関係が深まってしまう。そんなもどかしさを感じている人も少なくないのではないだろうか。

 そんな時代だからこそ、これらの番組が描く「限られた空間で濃密に相手と向き合う」という体験に、多くの人が惹きつけられるのかもしれない。共同生活や連日のデートを通じて、相手の素顔が少しずつ明らかになっていく。短期間ながらも、日常の断片的なデートでは見えにくい本質に迫っていく姿。それは現実では難しい「効率よく、しかし相手を深く知ってから選ぶ」という、ある種の理想を体現しているとも言える。

 もちろん、多様な恋愛スタイルを目撃できる面白さは、恋愛リアリティーショーの醍醐味として以前からあった。積極的にアプローチする人、慎重に距離を測る人、感情を素直に表現する人、駆け引きを楽しむ人。参加者それぞれの恋愛観やコミュニケーションを観察しながら、「この人のアプローチ上手いよね」「自分ならこうするのに」とワイワイ語り合う。この楽しさは変わらない。そうした根強い人気を背景に、『バチェラー』『ラブトランジット』『ラブキャッチャージャパン』と、それぞれ異なる切り口で恋愛を描く番組が登場し続けているのだろう。

 今回紹介した3つの番組からは、それぞれ違った角度から「現代の恋愛」が見えてくる。中でも『ラブキャッチャージャパン2』は、ABEMAで11月18日(火)21時まで全話無料配信中。最終回直前の今なら、一気見するにはちょうどいい。SNSで盛り上がる「正体当て」に参加しながら、参加者たちと同じ目線で推理を楽しんでみてはどうだろう。きっと、週末の時間があっという間に過ぎていくはずだ。

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