子どもたちに大流行「トゥントゥントゥンサフール」って? 新たな“キモかわ”キャラの広がりを考察
いま小学生のあいだで大流行している「トゥントゥントゥンサフール」を知っているだろうか。筆者がその存在を初めて知ったのは、TikTokで流れてきた曲がきっかけだった。タイトルは「トゥントゥントゥンサフールに恋している」。最初は「AIキャラを使って誰かがMVを作ったのか」程度にしか思っていなかった。
AIで作られたMVやショート動画が溢れているこの時代、初めて見たときはそこまで衝撃ではなかったのだが、このキャラクターたちが小学生のあいだで大バズりしているということをあとから知ったときは驚いた。小学生の子どもがいる編集部社員や知人などに聞いたところ、子どもはこの謎のキャラクターたちに軒並みハマっているという。
今回は、「トゥントゥントゥンサフール」とはなんなのか。また、なぜそこまで子どもたちがハマっているのかについて考えていきたい。
「トゥントゥントゥンサフール」とは
まず「トゥントゥントゥンサフール」というのは、「イタリアンブレインロット」という海外発のミームのなかで生まれたキャラクターのひとつだ。「イタリアンブレインロット」は生成AIで作られており、胴体が果物の猿や、頭部がカプチーノになったバレリーナなど、どれも“生き物”と“物体”を組み合わせた造形になっている。
そして「イタリアンブレインロット」のなかでも人気なのが、「トゥントゥントゥンサフール」。木に手足が生えており、ギョロっとした目玉、手にはバッドを持っている。
まず見た目なのだが、可愛く……はないと思う。むしろちょっと不気味ではないだろうか。ほかのキャラクターもホラーとまではいかないが、擬人化キャラにしてはテイストが少しリアルすぎる。
ますます、なぜ子どもウケしているのか疑問に感じるが、時代を遡れば、“ちょいコワ”、“ちょいキモ”キャラクターは、いつの時代も子どもから一定の人気を集めている。少し前だとホラーゲーム『Poppy Playtime』に登場するハギーワギー、昔だと『テレタビーズ』や『えいごリアン』のキャラクターは、可愛さのなかに掴めない不気味さがあるような気がする。可愛いだけではない目の離せなさが、より子どもたちを惹きつけているのかもしれない。
ちなみに2025年10月時点で「イタリアンブレインロット」のキャラクター数は100を超えている。知人の子どもいわく、「新しいのがどんどん出てくるのが楽しい!」とのことだ。AIを使うことで誰でも簡単に新キャラを生み出せるので、そのスピード感が見ている子どもたちを飽きさせないのかもしれない。
「イタリアンブレインロット」には、ほかにも「トララレロ・トラララ」や「リリリ・ラリラ」といったキャラクターがいるのだが、名前の意味のわからなさも子どもは夢中になるようだ。知人の子どもは、「難しいから何度も見てしまう」と言っていた。筆者からすると暗号のようだが、この絶妙に覚えづらいネーミングも、中毒性を生み出しているのだろうか。
AI発による“入り口”の多さ
「イタリアンブレインロット」の最大の特徴は、AIによって誕生したということだ。著作権の観点では明確な作者が存在しないため、自由にどこでも使えるキャラクターとなっている。筆者が知った曲もそのうちのひとつだ。「トゥントゥントゥンサフールに恋している」という曲は、クリエイターのザビャンによって制作された作品である。
@the_byan イタリアンブレインロット曲「トゥントゥントゥンサフールに恋している」フルバージョン
「トゥントゥントゥンサフールに恋している」は2025年10月時点で1400万回再生を突破しており、「イタリアンブレインロット」の知名度をさらに押し上げた。
そして「イタリアンブレインロット」は音楽方面だけではなく、ゲーム方面でも多用されている。たとえば人気キャラクターの「トゥントゥントゥンサフール」は、見た目の不気味さ、武器を手に持っていることから、ホラーゲームに多用されている。
また、『マインクラフト』や『ロブロックス』などのゲームにも、イタリアンブレインロットのキャラクターたちはよく登場する。『マインクラフト』ではMODを使ってイタリアンブレインロットのキャラクターをゲーム内に登場させており、『ロブロックス』では「Steal a Brainrot」というイタリアンブレインロットたちを盗んで自分の陣地に持ち帰るゲームが流行している。そういったゲームの実況動画やショート動画を見て、さらに子どもたちのあいだで知名度が広がっているようだ。
当初はショート動画やTikTokを通して子どもたちのあいだで流行していた「イタリアンブレインロット」だが、こうしてゲームや音楽の世界に派生することで、大人たちにも認知されるようになり、大きなムーブメントになっている。
いままでの子ども文化と違うのは、“誰かが作った”キャラクターが流行しているのではなく、AIという、ある意味作り手が存在しないキャラクターが人気を集めているということだ。「イタリアンブレインロット」」のキャラクターは誰もが自由自在に使えるため、間口も広い。現に子どもたちが「イタリアンブレインロット」と出会うきっかけも、音楽やゲーム、ショート動画などさまざまだ。
さらに子どもたちは、キャラクターを“見る側”ではなく“操る側”として関わることもできる。誰かが作った世界のなかで遊ぶのではなく、自分たちの世界に取り込んで遊ぶことができるのだ。こうした遊び方の変化がいままでとは大きく異なり、大人たちが「なんでイタリアンブレインロットにここまでハマるの?」と、思ってしまう感覚のズレの背景になるのかもしれない。