『Cronos: The New Dawn』プレイレポ:異界を旅し、住民たちを救え 『サイレントヒル2』リメイク制作陣が贈るサバイバルホラー

 『Cronos: The New Dawn』をプレイした。

 本作はリメイク版『サイレントヒル2』や『Layers of Fear』シリーズなどの開発で知られるポーランドのBloober Teamによる完全新作だ。彼らが得意とするサバイバルホラー体験を凝縮した、非常にウェルメイドな一本に仕上がっていた。

 『Cronos: The New Dawn』はTPSのサバイバルホラーだ。主人公はコレクティブという組織に属するトラベラーであり、謎のウィルスの蔓延により異界と化した過去のポーランドに飛び、住民を救助しつつ、元の世界に戻る方法を探す使命を帯びている。

 特徴的なヘルメットとゴツゴツしたスーツに身を包んだ彼女にできることは、ソードという変形ハンドガンによる銃撃と、アイテムを消費して使用できる火炎放射である。パンチと踏みつけといった近接攻撃も可能だが、ほとんどダメージはないうえに、反撃を許してしまうので、ソードの弾がないときの緊急手段でしかない。

 ゲーム中は、オーファンという白くブヨブヨした異形が襲ってくるので、銃撃で対処することが求められる。ソードはハンドガンやショットガンといった形態変化が可能で、それぞれに異なる弾薬を所持していなければならない。

 そのまま射撃しても大したダメージにはならないので、ほとんどの場合はチャージショットを使用することになる。チャージ中はエイムが強くブレるため、完璧に狙った箇所を撃ち抜くことは難しい。“弾薬の管理”と“ブレるエイム”という遊びはまさしく彼らが『サイレントヒル2』で培ったポイントだ。

 弾薬は常に心許なく、闇雲に撃っていてはすぐに枯渇してしまう、けれどインベントリの枠数は限られているので何もかも拾っていくわけにはいかない。そんなシビアな選択を迫られるデザインだが、同時に決して詰むこともないし、敵が強すぎてげんなりすることもない。ちょうどいい緊張感と不安感が持続する素敵な体験に仕上がっていた。

 本作の目玉は、敵が死体と融合する点にある。「バイオハザード」シリーズに登場するクリムゾン・ヘッドのようなギミックに近く、他の敵が死体に近寄り、能力を吸収して強くなってしまうのだ。

 よってここで火炎放射のギミックが関係してくる。トラベラーはインベントリの中身を整えられるセーブポイントで「トーチ」「パイアー」というアイテムを入手することができる。

 トーチはトラベラーの近辺を燃やし、パイアーは投擲型地雷として近くの敵を燃やすことができる。トラベラー自身は火に耐性があるので、巻き添えを考える必要はない。

 これで敵の死体を燃やしておくことができるのだが、残念ながらこのギミックはあまり上手く機能していなかった。

 そもそも、トーチは最初の時点でインベントリにひとつしかスタックしないにもかかわらず、敵は何体も出現するため、すべてを燃やして回るのは現実的ではない。そのうえ、道中でトーチやパイアーによって燃やすことで突破できる壁も出現し、その先には資源となるアイテムが置かれているので、敵に使わずにその壁が出てきたときのために取っておきたくなるのだ。

 使用後にいちいちセーブポイントまで取りに戻ることもできるが、いたずらにプレイ時間が伸びるうえに面倒だ。ほぼ完璧に配置されている弾薬や回復アイテムに比べて、融合や火炎放射周りのギミックはあまり美しくなかった。

 アートやサウンドはばっちりである。東欧のブルータリズム建築で建てられた集合住宅や研究所に、浮遊する瓦礫などの異界感がマッチし、なんとも言えない世界観を醸している。マップがなく、ほぼ全域が薄暗いためにしょっちゅう迷子になるのは問題だが、どことも知らぬ世界でさまよっている感覚は味わえた。

 ストーリーについても惹き込まれる作りになっている。トラベラーは崩壊した過去世界で困窮している住民を確保し「アセンション」という儀式に参加させ、コレクティブの一員に加えていく。表向きは救助のように見えるが、実際のところは何をしているのかわからない。

 かなりスローペースで進行するシナリオにやきもきしつつも、この先どうなるのかと思わせるのには成功しており、それがプレイのモチベーションに繋がっている。オリジナル用語だらけのSFタイトルにしては、そこまで置いてけぼりにされる感覚はなかった。

 サバイバルホラーTPSとして、新しい挑戦を行った部分については問題点もあるものの、高品質なつくりであることは間違いない。ファンの求めているスリリングな体験が詰まっている一作だった。

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