連載「堀江晶太が見通す『VRChat』の世界」第1回:前編

新連載「堀江晶太が見通す『VRChat』の世界」 VRとの出会い、ハマったきっかけ、本業への還元を語る

連載「堀江晶太が見通す『VRChat』の世界」第1回:前編

 ボカロP・作編曲家・ベーシストなど、さまざまな顔を持つ音楽家・堀江晶太。押しも押されもせぬ一流のクリエイターである彼には、これまで公に明かしていなかった趣味がある。それが、ソーシャルVRプラットフォーム『VRChat』だ。

 コロナ禍をきっかけに『VRChat』に入り浸るようになったという堀江。普段は音楽家として活動しながら、VRの世界では“ひとりのユーザー”としてこの世界を楽しんでいるという。

 今回からリアルサウンドテックでスタートする不定期連載「堀江晶太が見通す『VRChat』の世界」では、堀江の『VRChat』愛、そこで体験したさまざまな出来事、リスペクトする「注目のクリエイター」などについて語っていく。

 初回となる今回は、堀江晶太が『VRChat』と出会ったきっかけや、魅了されるものが後を絶たない魅力のポイントについて話を聞いた。(編集部)

コロナ禍をきっかけに、“夢のような世界”を知る

堀江晶太

――そもそも堀江さんは『VRChat』とどのように出会ったのでしょうか? 最初に訪れたきっかけを教えてください。

堀江晶太(以下、堀江):2021年ごろ、コロナ禍でライブなどのイベントや、音源リリースなどのものづくりが、全てストップしたのがきっかけです。いきなり時間がたくさん余ってしまい、かつ家からは基本的には出られない環境になりました。

 楽器を弾いたり、音楽に向かってなにかをするのが当たり前だったので、こうした環境でもできることを探していたところ、友人からオンラインセッションサービス『NETDUETTO(現:SYNCROOM)』を教えてもらいました。堀江晶太とは名乗らずに一人のユーザーとして入っていき、ランダムマッチングでいろいろな人と演奏を楽しんでいました。

 やがて、オンライン演奏を楽しむ人たちは他にもいろいろな場所にいると知り、その一つとして友人から「『VRChat』ってやつがあるらしい」と教えてもらったんです。

 曰く、そこでは音楽や演劇、イラストといった創作活動だけでなく、ただお話しだけをするような、“生活している人”がいる場になっているらしいと。

——最初にその話を聞いたとき、どんな印象を持ちましたか?

堀江:夢のような世界だな、と感じましたね。

 最初はしっかりとしたVR環境がないとアクセスできないものだと思い込んでいたのですが、Windows PCが一台あれば無料でアクセスできると知り、それならばと友人に呼ばれる形で入っていったのが、自分の『VRChat』の始まりでした。

――わりとスルッと入っていかれたんですね。『SYNCROOM』もそうですが、堀江さんは知らない人との交流がとても好きな方なんだなと感じます。

堀江:自分はSNSなどで、日常の発信や意思表明をあまりやらないのですが、実は人とのコミュニケーションは昔から好きなんですよ(笑)。オンラインに限らず、たとえば旅行に行ったときも、個人が経営している飲み屋に一人で足を運んで、そこにいる人と乾杯をする……みたいなことがすごく好きなんです。なので、ある意味でその延長としてオンラインコミュニケーションを捉えている節はあると思います。

体験して初めて理解した、VRがもたらす“実在感”

――最初はデスクトップモードで始められたとのことですが、VR機器を購入したのはいつ頃ですか?

堀江:始めてから1~2カ月後には買っていたと思います。現地の友人が増えていく中で「あったほうがいいよ」と教えてもらって、『Oculus Quest 2(現:Meta Quest 2)』を購入しました。

――最初にVRモードでアクセスした時の感想はどのようなものでしたか?

堀江:ものすごく感動しました。体験前は、ただ画面が少し立体的に見えるだけなんだと思っていましたが、立体的に見えるだけでなく、自分の頭と両手の動きがアバターにリンクする感覚が、想像以上に「ここにいる感じ」を強く生み出していて、ものすごく驚かされましたね。

 一方で、もともと三半規管が弱いので、ひどいVR酔いも経験しました(笑)。いまも基本はデスクトップモードでアクセスしています。いろいろ体験した結果、自分は前後に移動すると酔いやすいタイプで、周囲を見回すだけなら酔わないとわかったので、友人からアドバイスももらいながら対策はしています。「扇風機を動かしておくと、風の方向を認識できて、酔いにくくなる」といった、おばあちゃんの知恵のようなTipsもいただきつつ(笑)。

 それと、最近『PICO 4 Ultra』とモーショントラッカーを用いた、フルトラッキングも体験しました。あれにも驚かされましたね。頭と手に加えて足もリンクすることで、さらに一段深い没入感が得られる。とても感動したので、体験した後に自費で購入しちゃいました。

 今お話したような感覚って、横で見ていても「そういうものなんだね」くらいにしか思えず、自分で体験することで、初めて実感できるものなのだなと思いました。

――少し話はそれますが、堀江さんは身長が高く、足も長いですよね。フルトラッキングになった際、アバターの身体とのズレや違和感を感じることはありましたか?

堀江:意外と違和感はなかったですね。もちろん、ダンサーのように、指先まで厳密に合わせる必要が生じるなら話は別ですが、そうでないならば問題ないと感じました。不思議な感覚ですが、小さなアバターになっても「自分である」意識が実感できるという。

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