初の3Dカービィは「簡単だけど面白い」が詰まっていた 『星のカービィ ディスカバリー』Switch 2版プレイレポ

 2025年8月28日に『星のカービィ ディスカバリー Nintendo Switch 2 Edition + スターリーワールド』が発売された。

 本作は2022年3月25日に発売された『星のカービィ ディスカバリー』のNintendo Switch 2版だ。画質やフレームレートを向上させただけでなく「スターリーワールド」という新しいステージも追加されている。

 この機会に本作を初めて触った筆者が、本編も含め、全体の感想を述べさせていただく。

 本作は1992年にゲームボーイ向けに発売されたソフト『星のカービィ』シリーズの最新作だ。ピンクの丸い生物であるカービィが、敵を吸い込み、コピーした能力を駆使して先に進んでいくというゲームデザインであり、ポップでキュートなビジュアルや、ゲーム初心者向けの難易度などの特徴がある。

 『星のカービィ ディスカバリー』は、本編シリーズ初の3D空間が主体となった作品であるものの、初代からの特徴は引き継いでいる。しかし、簡単にクリアできるデザインでありながらも、ハードコアゲーマーでも楽しめるようなちょっとした工夫や、収集要素を集めたいと思わせる綺麗な導線などが光る作品だった。

 ある日、カービィは謎の渦に巻き込まれ、とある世界に行き着く。そこではビースト軍団という連中がワドルディを拉致していた。カービィはエフィリンという新しく出会った仲間とともに、ワドルディを取り戻すことに決めるのだった。

 早速だが、この任天堂のIPらしいシンプルで一見ひねりがないようにも思えるストーリーが、思わぬ着地を見せたことに驚いた。本作は発売前から倒壊したビルや浸水した廃墟といったいわゆるポスト・アポカリプスものの様相を見せており、ちょっとカービィらしからぬ雰囲気をまとっていると話題になっていたが、エンディングまでにこの設定が一定の解決を見せる。

 お菓子とおひるねのことくらいしか頭になさそうなカービィという主人公像に対して、ラスボスが妙に邪悪なのが本シリーズの特徴だが、今回はその塩梅がちょうどよく、巻き込まれ型のSFとしてしっかりと描けていたように感じた。感動するかどうかは人それぞれだが、少なくともアートワークの必然性を担保する程度には納得感のあるシナリオだった。

 さて、本作の目玉は「ほおばりヘンケイ」である。

 こちらはステージの各所に落ちている投機物(車や歯車、自販機など)をカービィが無理矢理ほおばることにより、カービィの形が変化し、それぞれに応じたアクションが取れるというものだ。

 たとえば、車をほおばれば道路を駆け抜けてレースができるようになったり、自販機をほおばれば缶を射出して壁を壊したりできるようになる。

 コピー能力と異なる点は、これらのほおばりヘンケイは使用できる場所が限られているという点だ。つまり、ステージ上のある一定の区間に置かれており、ステージを進めたり、収集物をアンロックするための謎解きに使ったりするのである。

 あからさまに置かれているので、「謎解き」というには簡単すぎるのだが、それらの使い方はなかなか凝っており、見ているだけでも面白かった。序盤こそ自明すぎるものもあったが、ステージギミックと合わさることで、だんだんと操作する手が忙しくなっていく。ベルトコンベアに運ばれてしまう階段をほおばったり吐き出したり、歯車をほおばったまま小船に乗って風を起こしたりなどなど、一目見て何をすべきかわかるうえに、やってみると楽しいアクションが満載だった。

 腕を組んで考えなければならないステージは一切なく、ゆえに一定のテンポ感でストレスなく進めることができ、収集物を集め出すとちょっとは苦労することになるという、任天堂ファーストタイトルが得意とするゲームデザインは今回も健在だ。

 コピー能力もギミック解決に使用することはあるが、『星のカービィ64』のように、戻れないくせに特定のコピー能力が必要な箇所があるといったいわゆる“持ち物検査”みたいな箇所はまったくない。好きなコピーを使ってガンガン進み、敵を色々な方法で倒してみたいと思えるようになっている。

 ワドルディを救出していくことで、街が発展していくのも素晴らしい点だ。釣りやボスラッシュなどのミニゲームが楽しめるようになるほか、コピー能力の進化も行える。これによりコピー能力がどんどん物騒かつ高火力になっていき、ボス戦のサイド目標を達成するためにもう一度チャレンジしてみようと思わせる作りになっていたのも評価したい点だ。

 スピーディーにステージを攻略するのも良いが、背景や小物にも注意してもらいたい。

 本作は人がいなくなったあとの都市が舞台で、なんとも郷愁を誘う廃墟が立ち並んでおり、そんな世界にカービィとお馴染みの敵キャラが浮いているだけでも面白い。そのうえ、ゲーム的な矢印や記号もわんさか置かれており、明らかにリアリティラインがぶっ壊れているのだが、遊びやすさの点では間違いなく正しいし、そのチグハグさが味にもなっている。

 ゲームボーイ以来のポップなビジュアルの陰に、少しだけシリアスさを感じるような、独特のセンスである。このアートワークだからこそ、比較的低い難易度でもやりごたえがあるというか、ときにはスリープを吸い込んでしばらくひと休みしようかな……なんて思わせてくれる不思議な感覚がある。ナイトキャップを被って鼻提灯を膨らませる、この愛おしい姿を見てほしい。

 エンドコンテンツの繰り返し感は否めないうえに、ボスバトルの多さの割にカービィ側の取れるアクションがプラットフォーマーステージと同じものでしかない点などは気になったが、シリーズが持っていた魅力はそのままに、初心者向けに逃げないで多くのゲーマーが楽しめるよう工夫した点は高く評価したい。普段はソウルライクやRTSを遊んでいるようなコアユーザーでもきっと楽しめることだろう。

 さて、スターリーワールドについても語っておこう。

 新世界に飛来した謎の火山島。その島にくっついていた闇の星を封印するため、カービィは散らばってしまったスターリーを集めることにした、というストーリーだ。こちらはゲーム開始後からさほど経たずに遊ぶことができる。

 基本的には本編ステージのアセットを流用しているが、こちらはスターリーの飛来によって至るところが結晶化しており、透き通った青いクリスタルがそこら中に突き刺さっている。ステージには新しい道やギミックが大量に追加されているので、本編ステージを遊びつくしたプレイヤーでも新鮮に感じられるだろう。

 アートワークはさらに磨きがかかっており、ただでさえ廃墟美術とゲーム的な記号が入り混じったハイブリッドなビジュアルだったのが、クリスタルによってギラギラと輝いているため、もはや何を参考にしたのかもわからない謎の世界観になっている。

 一見足し算のしすぎにも思えるが、Nintendo Switch 2のマシンパワーを感じさせるにはちょうどいい表現になっており、これまた不思議といやらしさはない。結晶化したゲーム的な廃墟で、新しいほおばりヘンケイを試しまくろうではないか。

 あくまでゲーム体験は本編の延長ではあるが、本編が楽しめたのなら買わない手はないだろう。

 『星のカービィ ディスカバリー Nintendo Switch 2 Edition + スターリーワールド』は、子どもの頃に夢中になったカービィ世界の優しさや可愛らしさを残したまま、あらゆるゲーマーが楽しめるようテンポとギミックに気を遣った優秀なアクションプラットフォーマーだった。

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