『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』アニメ化の背景に“異色の作品性” フロム作の映像化の成功例となるか

8月20日、『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』のアニメ化が発表された。
和の世界を舞台にしたアクションアドベンチャーとして、発売から6年以上が経過した現在も広く支持される同作。満を持してのメディアミックスを続編発売の伏線ととらえる向きもある。はたして『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』のアニメ化は成功を収められるだろうか。作品性からその背景を読み解く。
和の世界を舞台にしたフロム・ソフトウェア発のアクションアドベンチャー『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』
『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』は、2019年にフロム・ソフトウェアが発売したアクションアドベンチャーだ。プレイヤーは、戦国時代末期の日本を舞台に、御子「九郎」に仕える隻腕の忍者「狼」となり、主を連れ去った仇敵「葦名弦一郎」へと復讐するための孤独な冒険に身を投じていく。
特徴となっているのは、和の色彩を用いた日本ならではの美しい風景と、刀と刀がぶつかり合う激しい剣戟、隠密を駆使した暗殺システム、鉤縄によるワイヤーアクションなど。『Demon's Souls』『DARK SOULS』より続くフロム・ソフトウェア製高難度アクションゲームの系譜に連なる作品でありながら、独自の世界観/ゲーム性で好評を博した作品が『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』だ。

本稿で取り上げる同作のアニメ化は、8月24日までドイツ・ケルンで開催されていたゲームの見本市『gamescom 2025』で明らかとなったもの。『SEKIRO: NO DEFEAT』というタイトルで、全編手描きの2Dアニメーションになるという。あわせて発表された情報によると、監督を『ぶらどらぶ』や『火狩りの王』『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』などの作品で知られるアニメーター/アニメーション監督の沓名健一氏が、制作をアニメのOP/ED、MVなどを多数手掛けるアニメスタジオのQzil.la(クジラ)が担当するとのこと。また、原作に引き続き、狼役を声優の浪川大輔が、九郎役を同・佐藤みゆ希が、葦名弦一郎役を同・津田健次郎が演じることも明かされた。
放送/配信されるプラットフォーム、時期は現時点で未定。詳細については、発表にあわせて開設された公式サイト、公式Xを参照してほしい。
『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』が“フロムゲー”の中でもっとも映像化に向く理由

和の世界を舞台にしたアクションアドベンチャーとして、全世界で1,000万本を超えるヒットを記録した『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』。ファンの多い作品だけに、発表直後のSNSには驚きと期待の声が相次いだ。同作をソウルシリーズに含めるか否かはファンのあいだでも意見がわかれるところであり、事実そのゲーム性には『Demon's Souls』や『DARK SOULS』『ELDEN RING』といった代表作とは異なる点が多くある。その最たる例が主人公である狼のキャラクター性だ。
ソウルシリーズに分類される作品は多くの場合、主人公が特別なアイデンティティを持たず、プレイヤーが思い思いにロールプレイできる仕様となっているが、『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』では固定的な主人公として、そのビジュアルやバックグラウンドがしっかりと描かれている。言うなれば、海外製のRPGを意識している前者、日本製のRPGを意識している後者とも表現できるだろう。このことは同作の舞台が日本である点とも整合している。日本を描くアクションアドベンチャーだからこそ、日本らしいアプローチで制作されたとも考えられるのが『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』であるのだ。
こうした同作の作品性は、映像化とも相性が良い。なぜなら、アニメやドラマ、映画といったメディアでは、明確な主人公の存在が不可欠であるからだ。たとえば、ノベル/アドベンチャーのジャンルでは、原作ゲームにビジュアルやキャラクターボイスなどのような主人公のキャラクター性がなかった場合でも、アニメ化にともない、そうした設定を新たに用意するケースがままある。ここには「主人公のパーソナリティがはっきりしていた方が、視聴者を物語へと没入させやすい」という、メディアミックスをめぐる作り手側の事情が影響していると考えられる。つまるところ、近年のフロム・ソフトウェア作品のなかでもっとも映像化に向いた作品が『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』と言えるのだ。

また、同作には、ソウルシリーズ作品と比較し、わかりやすいストーリーテリングを持つという特徴もある。この点もまた、日本らしいアプローチで制作された部分であり、かつ映像化と相性の良い要素であると言える。実際にアニメ化発表後のSNSには、「原作ストーリーのどの箇所がアニメシナリオの本筋となるのか」に思いを馳せるファンの姿もあった。おそらくもっとも描きやすいのは、その中心となっている葦名弦一郎を打倒するまでの物語であろう。しかし、結末へと向かう過程では、ファンの想像するような他の敵キャラクターとのエピソードも盛り込まれていくに違いない。
『SEKIRO: No DEFEAT』はファンの大きな期待に応えることができるだろうか。今後の続報に注目したい。






















