最新のパワードスーツを試してきた! 「Hypershell X」があればどこまでも行ける&どこまでも登れる!
2025年米国CESのロボティクスカテゴリーで「Best of Innovation」を受賞し大きな話題となったパワードスーツ「Hypershell X(ハイパーシェル・エックス)」が、6月27〜29日に千葉・幕張メッセで開催された『東京アウトドアショー2025』にて日本初公開された。
CES発表後に販売をスタートした米国では、ハイカーを中心にすでに1万台を超える売り上げを見せている。外骨格技術による歩行をサポートする「Hypershell X」とはどんなものか、登山の趣味を持つライターが実際に試してきた。
AIが脚の動きを感知して最適にアシスト
「Hypershell X」は世界初のコンシューマー向けアウトドア用外骨格。介護や流通現場向けに腰の動きをアシストして、持ち上げる力をサポートする製品はこれまでにも存在していたが、脚を上げる力を機械的にアシストして歩く動作をサポートする製品は「Hypershell X」が初めてとなる。
「Hypershell X」シリーズはエントリーモデルの『GO(コ゚ー)』(13万9800円)、ミドルモデルの『PRO(プロ)』(16万9800円)、ハイエンドモデルの『CARBON(カーボン)』(25万9800円)の3モデルからなる。3種類とも7月中旬から国内販売をスタートする。
『PRO』は『GO』の2倍の出力となり、トルクも大きいのでよりアシストする力が強い。アシストに対応する速度は『GO』の12km/hに対して、『PRO』は20km/hとサイクリングにも利用できる。身体への負担軽減は『GO』が20%減に対して『PRO』は30%減となり、『PRO』はより長時間の歩行に適した性能となっている。
『PRO』と『CARBON』はアシスト性能がほぼ同等だが、『CARBON』はアームとベルト部分に軽く耐久性の高い素材を使用しており、本体重量が200gほど軽減しているのが特徴だ。
アシストに関しては、各種センサーが脚の動きを検知し、左右のモーターが動きに合わせてアームで脚を引き上げる仕組み。AIモーションエンジンが10種類(エントリーモデルの『GO』は6種類)の運動を認識し、姿勢に合わせて自動的にアシストのパワーやアームの動きを調整する。上り下りを自動判別するだけではなく、階段か登山かも判別するほか、砂利道歩行、サイクリング、ランニングも判別して、それぞれに適したアシストをする。
動作モードは3種類、アシストをかけない透過モード、バッテリーをセーブして長時間使用できるエコモード、強いアシストをかけるハイパーモード。右側のモーター部のスイッチでモード切り替えができるほか、専用スマホアプリからも切り替えが可能だ。
アウトドアショーに参加していた開発担当のプロダクトマネージャーSean Zhang(ショーン・チャン)氏に開発で苦労した点を聞いたところ、「介護用のパワーアシストスーツは大きくて重い。それではアウトドア用としては利用できない。誰でも気軽に使えるよう、小さく軽くすることが最も大変だった」と語る。
実際、ゴツい外見から重そうに見えるが、本体重量はハイエンドモデルで1.8kg(バッテリー除く)、ミドル/エントリーモデルでも2.0kg(同)と軽い。登山口に行くまで、または下山後に取り外してザックに収納するなど、持ち運びにも負担にならない重量だ。さらにIP54の防塵・防水性能を持ち、登山などで急な雨に降られても安心。
一回の充電で使用できる最大稼働距離は17.5km(エントリーモデルは15km)。一般的な登山に十分な距離だが、別売の予備バッテリーまたはUSBType-Cのモバイルバッテリーを用意すればさらに使える距離が伸びる。予備バッテリーを備えれば、宿泊を伴うロングトレイルでも安心だろう。なお、予備バッテリーの価格は1万5800円で、重量は410g。
ハイパーモードは飛ぶように軽やか
今回のイベントで実際に試せたのはハイエンドモデルの『Hypershell X CARBON』。装着してみた感想だが、腰のバッテリー部分に若干の重みを感じるが、脚のアシスト部分には違和感は全くない。
歩き出してみると、なんとも不思議な感覚だった。アームが無理に脚を引き上げるのではなく、脚を上げる動作を自然にサポートしてくれる。腰のバッテリー部分も、アシストをかけて歩き出すと重みを感じなくなるから不思議。
歩みに負荷をかけると、よりアシストを感じるようになる。ランニングマシンのスピードを速めても脚にほぼ負荷を感じないのだ。軽い力でスタスタといつまでも歩けてしまう。ランニングマシンに傾斜を付けても苦しさがほとんどなかった。一歩踏み出すと、自然に次の歩み、次の歩みと、脚が勝手に動いていく感じ。これならいつまでも歩いていられる。
ハイパーモードにするとアシストがかなり強くなり、ちょっと脚を上げると飛び出すような感覚になる。少ない力で大きくストライドできるのだ。試しに階段で使ってみると、その効果が如実に感じられる。
階段を上る時は膝を大きく上げる動作をするが、その際に腿の筋肉を大きく使うことなく軽い力で上ることができる。これは楽だ。意外だったのが下り。脚を下ろす動作もアシストするので膝に負担がかからず、楽に降りることができる。登山する場合、登りが疲れるのはもちろんだが、実は下りのほうが膝への負担が大きく、日常で使わない筋肉を多く使うため、より疲労度が高くなる。筆者は上りは好きだが、下りは大嫌い。しかし、「Hypershell X」がアシストしてくれることで下りの負担が大きく減れば、登山の楽しさが倍増するだろうと実体験から感じた。
アシストを切って階段を上り下りしてみたら、「え、こんなに自分の脚って重かったの!?」と驚くほどにダルい。それほど脚の上げ下げに筋肉を使っているのだが、「Hypershell X」を装着することで、この負担を感じないのは凄いことだ。
筆者は年に数回の登山を楽しんでいるが、寄る年波には勝てず、最近は距離と高度が稼げなくなっている。休む回数が増えることで事前に計画したペースで進むことができず、このままでは下山が遅くなって危険と判断して引き返すこともある。そんな時、「Hypershell X」があれば距離と高度を稼ぐことができ、計画通りに登頂できそうだ。
配達員などビジネス利用の可能性
また、妻と二人で登山することもあるのだが、筆者と妻には体力差があり、運動能力も大きな差があるので、筆者がすいすい進んでいる時に、妻がもたついて大きく遅れをとることが頻繁にある。特に、下山時に多い。「Hypershell X」はこうしたペア登山の時の能力差を埋め、同じペースで楽しく登山できる助けにもなるだろう。
コンテンツマネージャーのToby Knisely(トビー・ニーズリー)氏は、「登山が好きだけど体力が落ちてきた人だけではなく、もっと長い距離を歩きたい、もっと高い山に登りたいというアグレッシブな人にも使ってほしい。また、レクリエーション利用以外にもビジネスでも利用できるのではないかと考えている。1日中自転車に乗っていたり、階段の上り下りが多い配達員などにとっては 「Hypershell X」が身体への負担軽減になり、ビジネスをサポートするパートナーになるだろう」と語る。脚への負担を大きく軽減する「Hypershell X」は、遊びに仕事に大活躍しそうだ。
今後、家電量販店やアウトドアショップなど、実際に装着して試せるタッチポイントを増やしていく予定とのことで、見かけたらぜひ試してほしい。自分に対する新たな可能性を発見できるはずだ。筆者も「Hypershell X」を試したことで、あきらめかけていた富士山登頂に挑戦しようという気持ちが湧いてきた。
◯参考情報
【Hypershell SPEC】
◯発売情報
2025年7月15日(火)より
Hypershell日本公式サイトにて正式販売・出荷開始