『Shadowverse: Worlds Beyond』前作からの持ち味が“超進化” 交流拠点「シャドバパーク」も期待以上に楽しめた
CygamesによるDCG『Shadowverse: Worlds Beyond』(以下、シャドバWB)は、6月17日にリリースされて以降、なにかと話題のタイトルだ。
今回は前作『Shadowverse(シャドバ)』からのプレイヤーである筆者が、「シャドバWB」のプレイフィールや、現在の環境、今後の展望などについて紹介する。
『シャドバ』を踏襲しながらも新要素でより派手かつ戦略的に
本作のバトルシステムは前作『シャドバ』を踏襲したものとなっている。各リーダーのカードとどのデッキでも使用できるニュートラルカードを組み合わせたデッキを使用したり、ターン数に応じて値が10まで増える「PP」を使用してカードをプレイしたりといった点は変わらない。もちろん、『シャドバ』の特徴である「進化」システムも健在。進化を用いてフォロワーを強化したり、進化時に発動する能力を持ったフォロワーが存在するといったことも変わらずだ。
『シャドバWB』から追加された新システムの中でも大きなものは「超進化」と「エクストラPP」の2つ。「超進化」は名前の通り進化のパワーアップ版で、「SEP」を消費することで使用できる。超進化したフォロワーは攻撃力と体力が3ずつ増加(通常の進化は2ずつ増加)し、自ターン中に破壊されず、ダメージも受けなくなる。さらに超進化したフォロワーで相手のフォロワーを倒すと、相手リーダーに1ダメージを与えることが可能だ。
「超進化」は予想以上にさまざまな動きができる強力なシステムだ。たとえば、場に出てすぐにリーダーを攻撃できる「疾走」持ちのフォロワーで一気に大ダメージを与えたり、処理しづらい高スタッツや「必殺」持ちのフォロワーを簡単に処理できたりといった使い方が可能だ。「超進化」はやや大味に感じることもあるが、回数制限があるため使用するタイミングはしっかり考えないといけないため、ゲーム性はしっかりとキープされている。
一方の「エクストラPP」は、後攻プレイヤーが任意のタイミングで残り「PP」を1増やせるというもの。5ターン目までに1回、6ターン目にもう1回使用することができる。
カードゲームは相手より先にカードを使用できる関係上「先攻有利」になりがちで、前作でも先攻の方が有利だと感じるプレーヤーが多かった印象だ。だが、「エクストラPP」は後攻のプレイヤーが序盤からゲームの主導権を握りやすくし、また中盤・終盤戦で強力なフォロワーを先に使用できるようにすることで、先行と後攻の差を埋める役割を果たしている。
現時点では先行・後攻のどちらが有利なのかは不明だが、「エクストラPP」を用いて盤面を取り返したり、一気に相手のライフを削り切ったりといった後攻の戦い方に楽しさを感じる場面が増えたことは間違いない。これまで筆者がプレイしてきたカードゲームでは「後攻は先攻がベストな動きをしないように祈るしかない」といったものもあったため、後攻がうれしく感じるのは非常に新鮮だ。
全体的なプレイフィールとしては、低コストのフォロワーの種類が少なく、範囲除去(いわゆる「AOE」)を持つカードが多いため、リリース直後のカードゲームで強くなりがちな速攻タイプの「アグロ」デッキのパワーは抑えられている印象だ。
また、高コストかつ高レアリティのカードの効果は強力かつ派手なものになっているため、「序中盤にゲームのテンポを握り、『超進化』したエースカードで勝負を決める」という、初心者でも分かりやすい展開が多く、それでいて考えさせられる場面も少なくない。特に新要素まわりでのプレイングは最適解を見つけることが難しく、「1ターン目からエクストラPPを使用したのは間違いだった」「超進化を温存すべきだった」といった風に、筆者は前作よりも試合後の反省点は多くなった。
『シャドバ』といえばカジュアルさも人気の要因の1つだったが、『シャドバWB』でもそうした要素は健在だ。美麗なカードイラストや派手な演出も相まって、気軽に戦略的なDCGが楽しめる。
ネメシス・ウィッチ・エルフが環境の中心だが、どのリーダーでも戦える
カードゲームでは、システム面だけでなく、デッキのパワーバランスも気になるところ。以下では、現時点でランクマッチでよく見かけるデッキを簡単に紹介していこう。
本稿執筆時点では、比較的安価に組めるためリリース時から強力だったネメシスが「アーティファクト」と「人形」、そしてその混合型の3タイプのデッキで活躍している。どのデッキでも対応力と《プロシードハート・オーキス》のカードパワーの高さが魅力となっている。
また、スペルカードを使用し「スペルブースト」を持つカードのコストを下げたり、強化したりといった動きからゲームを一気に畳める「スペルウィッチ」や、お馴染みのフィニッシャー《殺戮のリノセウス》を用いた「リノセウスエルフ」も強力で、環境の中心となっている。
上記3リーダーに追従する活躍を見せているのが「ミッドレンジロイヤル」。このデッキは継戦能力の高さと《レヴィオンの迅雷・アルベール》のゲームを決める能力が強みとなっている。
また、アミュレットによって召喚されるフォロワーや、《邪教の器》と超進化ギミックとのコンボが目を引く「アミュレットビショップ」や、《龍人演義・ガリュウ》を筆頭とした高コストフォロワーで畳みかける「ランプドラゴン」といったデッキも、環境デッキと渡り合えるパワーを充分にもっている。
本作から登場した新リーダー「ナイトメア」は見かけることこそ少ないものの、《猛毒姫・メドゥーサ》や《奔放なる獄炎・ケルベロス》など、強力な能力を持つフォロワーが存在するため、まだまだ開拓の余地はあるだろう。
リリース直後でまだまだ環境が変化する可能性はあるが、現時点ではすべてのリーダーが充分に戦えるポテンシャルを持っていると感じている。筆者は「ネメシス」「ウィッチ」「エルフ」「ロイヤル」の4リーダーとマッチすることが多いが、「ドラゴン」「ビショップ」「ナイトメア」はデッキに使用するレジェンドカードの多さからやや出遅れ、使用している人が少ないリーダーという印象だ。
また、相手がエース級のカードを使用する前に速攻を仕掛ける「アグロ」タイプのデッキも見かけることが増えてきた。本作は前述のとおり「アグロ」のパワーが控え目だが「スペルウィッチ」など立ち上がりが遅いデッキにとっては天敵となりうるので、試しているプレーヤーが一定数いるのだろう。こうした環境に応じた試行錯誤や、それを通じた環境の変化もDCGの楽しさの1つ。本作のバランスは、そうした醍醐味を味わえるものとなっている。
カードの入手手段が今後のカギに
本作はリリース当初、Steamで「圧倒的不評」の評価を受けていた。前作に比べて1パックに必要なルピが上昇したことや、4枚以上保有しているカードしか分解できなくなったことなどにより、デッキが組みづらくなり、課金に誘導されていると感じるユーザーが少なくなかったようだ。
たしかに無課金で多くのデッキを組むのは難しくなったと筆者も感じているが、毎日1パックの配布や、キャンペーン・イベント報酬、後述するシャドウパークでの「トレジャーハント」など、カードを手に入れやすくする施策は少なくない。また、ランクシステムも勝率に応じてマッチングするプレーヤーが変わる「グループシステム」を導入しており、カード資産の差による勝ちづらさを緩和するような意図が感じられる。
こうした試みによってカードの入手に関する不満を緩和できるかが、本作の長期的な運営のカギとなるのではないだろうか。
シャドバパークは想像以上に楽しい
最後に、本作の新要素「シャドバパーク」について紹介する。「シャドバパーク」は、他のプレイヤーと交流できる仮想空間で、作成したアバターを操作し、対戦台を使って自由に対戦ができるほか、チャットを使用してコミュニケーションを楽しむことができる。
シャドバパークでは、オンライン大会やイベントが開催されるほか、自分だけのスペースに仲間を呼ぶことができたり、友だちとミニゲームが遊べる「ギルドラウンジ」なども存在する。特にギルドラウンジではサッカーやバレーで遊ぶことができ、ボイスチャットを繋げながらプレイしてみると予想外に盛り上がる。
こうしたカードゲーム以外でも楽しめる要素が用意されているため、ユーザーがゲーム内で自然と交流しやすくなり、結果的にカードゲーム以外の目的でもログインするきっかけになるのではないか。麻雀などの実装は見送りとなったが、今後のアップデートにも期待したい。
総評として、『Shadowverse: Worlds Beyond』は、カジュアルながら戦略的な対戦が楽しめるタイトルとなっており、コア層からライト層まで幅広いプレイヤーが楽しめる内容となっている。今後は新パックの追加や大会開催など、さらなる広がりが予想できるだけに、ひとりのプレイヤーとして、長く愛されるタイトルへと成長していくことを期待したい。