個人勢も含む、すべてのVTuberが“大舞台”へ──『ぶいきゃすコレクション in 有楽町マルイ』が示したVTuberとリアルの交差点

『ぶいきゃすコレクション』取材レポート

 2025年6月6日〜6月15日までの間、有楽町マルイにて開催されたVTuber33名のポップアップイベント『ぶいきゃすコレクション』。イベント限定でグッズ販売や、タペストリーやパネルが特別展示とともに、トークショーやVTuberと一緒にあそぶ体験型ミニゲームが楽しめるイベントだ。

 筆者は実際に現地取材をおこなったのだが、日頃はインターネット上の配信という形で活動するVTuberと、そのファンが集まる様子は「ネット発カルチャーのリアルな交差点」のように映った。本稿ではこの『ぶいきゃすコレクション』の様子を振り返ると共に、取材を通して見えた、『ぶいきゃすコレクション』が実現しているVTuberたちの活動の熱量の可視化や、“場所”づくりの現在地を探る。

 『ぶいきゃすコレクション』は、有楽町マルイ8階のイベント用フロアで開催され、入場無料で誰でも入れるイベント。

 ポップアップスペースでは、アクリルスタンドやクリアファイルなどのグッズ販売のほか、『ぶいきゃすコレクション』アンバサダーの10名の色紙や、タペストリー、パネルが展示されていた。

 個性豊かな展示スペースも用意されており、たとえばアンバサダーのひとりである月城セシルは『ガンプラ』の展示をおこなうなど、ユニークな内容になっていた。ファンにとっては、推しが作った造形物を間近で眺められるのは、またとない機会だと感じた。

 興味深かったのは8階の販売スペースの奥で実施されていた『特設ストラックアウト』。9つの的にボールをどれだけ当てられるかを競うお馴染みのゲームを、VTuberがリアルタイムで応援しながら遊べるというもので、“推しに応援されながらゲームをする”という、貴重な体験ができる。普段は応援する側の推しに、逆に応援されるというのはなかなか無いことで、オフラインイベントならではの交流の形だと感心した。

 そして、やはりイベント全体のメインは「トークショー」。アンバサダーのVTuberたち10名が『ぶいきゃすコレクション』開催中の土日4日間でそれぞれ45分間のトークショーを実施した。

 筆者は7日に餅々さくら、小鳥遊こばとのトークショーにお邪魔したが、詰めかけたファンの熱気に圧倒された。

 餅々さくらはファンと自分に関する4択クイズゲームを実施。序盤こそファンネームや弾幕(※視聴者が同じ言葉や絵文字を一斉に連投し、配信者を応援したり盛り上げたりする文化のこと)の記号といったわかりやすいクイズが続いたが、「YouTubeチャンネル登録10万人記念で実施したい企画は?」というクイズではかなり振り落とされ、最後の「ここまで出題した問題の解答の順番で正しい順番は次の内どれ?」という問題では大きなざわめきが……。

 しかし、この難題にもかかわらずなんと2名のファンが全問正解し、大きな拍手が起きた。

 さらに、全員でじゃんけんをして勝ち残った1名を合わせて、計3人の「餅々さくら王」が決定。

 ここからは、特別なQ&Aセッション「太客と話そう」コーナーへ。タイトルがタイトルなだけに、会場が大いに湧いた。

 「基本NGないんで、なんでも聞いてください」と宣言する餅々さくらに、ファンからは「餅々さんにとって太客とは?」「お金とファンどっちが大事?」など、突っ込んだ質問が飛び交う。後者の質問に対して餅々さくらが「ファンのみなさんのことが大事です」と答えれば「模範解答ありがとうございます」と返されるシーンもあり、オフラインイベントならではの砕けた雰囲気に、会場は笑顔に包まれた。

 小鳥遊こばとはチケットが完売し、立ち見客も出るという盛況ぶり。開始前から熱気が漂う中、本人が登場すると入浴中の小鳥遊こばとさんが映り込んでしまうアクシデントが。すぐに仕切り直して開幕の挨拶を一通り終えると「何のぞき見してんだ?」とドスの効いたトーンで序盤からジャブを放つ。ファンもこれに応えるように、一斉に「えっ」「うそだろ」とブーイングを飛ばす。

 無論これはいわゆる“プロレス”の一環で、スタートから一体感あふれるレスポンスが見られ、まるで「いつもの配信」がそのまま現場に来たような空気だ。

 トークショーのテーマは「恋愛スタイル診断コーナー」。「デートの待ち合わせ」「初デートのプランを決めるとき」など、恋愛にまつわるシチュエーションのお題を、ファンと小鳥遊こばとみんなで選ぶというもの。

 最初のお題「デートの待ち合わせ」で小鳥遊こばとが「あたしは……A(10分前にはきっちり到着)かな」と言うと、ファンたちは「まあまあ」と一斉にたしなめはじめる。小鳥遊こばとが「なにが“まあまあ”なんだ。どう思ってんだあたしのことを」と問いただすと、「いいんだよ」「本当は?」とリスナーからツッコミが入るなど、小鳥遊こばととリスナーによる手慣れた組み手のようなコミュニケーションからは、互いの信頼関係が見えてこちらも楽しかった。

 診断の結果、小鳥遊こばとさんはB「ノリでなんとかなる型」に。本人は「当てはまってる?」と疑問形だったが、ファンたちは一斉に「当てはまってる!」と断言。これには小鳥遊こばとも「なんとかする精神でやってきたから、そうかもしれないです」と、素直な感想で答えた。

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