にじさんじ・叶は変化を恐れない バーチャルタレント黎明期から“開拓者”として道を開いてきたスターの現在地

アーティストとしても大きく躍進した叶の“現在地”

 叶の活動は配信活動にとどまらず、シンガーとしての音楽活動や他メンバーと絡んだユニット活動へと現在広がっている。

 2022年7月27日にLantisよりミニアルバム『flores』を発売して歌手としてメジャーデビューし、同日にKuzuha & Kanae & ROF-MAO Three-Man LIVE『Aim Higher』に出演すると、デビューから約3年が経過した現在までにミニアルバム2枚とシングル2曲をCDリリース、他にも配信シングルを発表してきた。

 2023年3月には自身初のソロライブイベント『午前0時の向こう側』を開催し、先輩・樋口楓とともに2025年1月期アニメ『日本へようこそエルフさん。』ED主題歌「Yummy Yummy」を担当するなど、アニソンシンガーというポジションでも多くの活躍をみせてきた。

 一方、葛葉とのコラボユニットであるChroNoiRや、樋口、緑仙、三枝明那、周央サンゴ、レオス・ヴィンセントと結成したユニット・七次元生徒会!といったユニット活動でにじさんじファンを中心につよい関心を集めている。

 ChroNoiRはゲーム配信や歌ってみた動画、YouTubeチャンネルでの3Dライブなどをデビューしてすぐの頃から行なっていたが、2022年3月からChroNoiRチャンネル内で公式番組「くろのわーるがなんかやる」がスタートすると、“張り切らない・無理しない・頑張らない”という温度感のもと、普段の配信で見せている自然体な2人が見られるということで人気を博すことになった。

 2024年10月にはChroNoiRチャンネルの登録者数が100万人を突破し、2025年5月には公式イベント『くろのわーるが武道館でなんかやる』を日本武道館で開催した。にじさんじのタレントとして初となる日本武道館でのステージということもあり、ChroNoiRファンを中心に多くの観客が詰めかけた。

 「歌なし」「大食いなし」と事前に告知されたこのステージは、“エンタメに振り切った”内容となっており、にじさんじの面々に加えて2人と親交の深いSHAKA・k4senというストリーマーもゲスト参加するなど、叶&葛葉のコミカルさを際立たせる内容となった。

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 叶本人のコミカルな一面を引き出すという点では、七次元生徒会!も同様である。

 2023年4月3日にYouTubeなどを含めたSNSアカウントが一斉に始動してスタートした七次元生徒会!は、マンガ動画・歌動画・スタジオ収録された企画動画を中心に活動してきた。

 叶が得意とするようなゲームをつかったライブ配信はほとんどすることはなく、収録された企画動画のなかでは他5人のメンバーがワイワイと話すのを外からみつつ、ポンと一声かけるように言葉をかわし、会話の流れをふいに変えていくようなポジションとして存在感を発揮してきた。

 じつはこのユニット、叶が緑仙に対して「一緒になにかやろう」と持ちかけたところから出発している。そのため七次元生徒会!はスタッフや公式主導の活動ではなく、所属タレントが主導していく形となっており、動画内の企画も基本的には参加している6人が提案した企画が主となっている。

 しかもメンバーが提案してきたさまざまな企画ネタに対して、「やる/やらない」の最終判断は叶本人が行なっているようであり、叶本人の判断・嗜好性が大いに関係しているユニットといえるのだ。

 2025年4月5日から4月6日には、七次元生徒会による24時間企画「二十四時限生徒会」が行なわれ、6人のタレントがそれぞれに発案したさまざまな企画がファンにお披露目された。

 食わず嫌い・科学授業・外ロケ・打ち合わせなしのアドリブコント・リスナーからの意見と回答、そして福島県いわき市へ男3人で初日の出を見に行くなど、その内容は実にバリエーション豊か。このユニットの面白さはこうした多彩さにあると伝わってくる企画であった。

【#二十四時限生徒会】コント「デスゲーム」
【#二十四時限生徒会】男3人、初日の出を見に行く

 七次元生徒会!やシンガー活動で叶と多く絡むようになった樋口楓は、叶についてこのような評価を口にしている。

「意外と熱い人なんだっていうのは、生徒会をやるようになってから気づいた」
「自分がこう!と決めたら、そこを突き進みつつ、平行線で周りのことを見つつ、その人たちのことも大事にしているんだなと」

 一方の叶はというと、対人関係について以下のようなコメントもしている。

「僕、自分のこと嫌いな人としゃべるのが好きなんです。あの気まずそうにしているところとか……。そういう意味では恐れるものがないのかもしれない」

【#二十四時限生徒会】ランダム対談で仲を深めよう

 以前の記事を執筆・投稿したのが2022年1月だったわけだが、その数か月後から彼はストリーマーとしてではなく、エンタメをこなすタレントという役割にも徐々に力を注ぎ、現在までの約2年ほどの間で徐々に活動の幅を広げていったのが分かるだろう。

 それは単に、にじさんじ内外での人気や認知度を高めてきたというだけでなく、フィールドを飛び越えた別種のエンタメにもトライし、自分のことを全く知らない人たちや、ときに自身と相性の悪い人であろう人にすらも自身のセンスや才覚をうまく伝えてきた足跡だといえる。

 かつてのVTuberシーンにおいてゲーム配信をいちはやく始め、広めてきたイノベーターとして存在感を発揮してきた叶だが、にじさんじの中ではマルチに活動するバーチャルタレントとして変化してきた。その存在感は、今後ますます色濃くなっていくに違いない。

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