にじさんじ・叶は変化を恐れない バーチャルタレント黎明期から“開拓者”として道を開いてきたスターの現在地

開拓者、にじさんじ・叶の現在地

 2018年2月8日に1期生がデビューしたことではじまったにじさんじは、2025年5月時点で日本・韓国・インドネシア・英語圏・中国などさまざまな国々を跨いで200名以上のメンバーが活動しており、日本のみならず世界の中でも随一なVTuberプロダクションとして知られている。

 YouTubeでの配信に端を発した彼らの動きは、徐々にさまざまなシーンを飛び越えた活動へと変化し、いつしか"YouTube"という枠を飛び越え、インスタグラムやTikTokなどの他のインターネットサービスどころか、テレビ・雑誌・ラジオといったメディアでの活動、さらに音楽・ゲームを中心にしたエンタメ領域、さらに食品・コスメ・ファッションを中心にしたPR役を担うインフルエンサーらしい役回りを担うようになった。

 その姿や活動内容は、YouTuberという枠組みを超え、一介のタレントとして見なすことができよう。先週から数回に渡り、以前に取り上げたにじさんじのメンバーが、その後どのような存在へと変わっていったのかを書いている。今回は、活動の幅を広げ続けているにじさんじの要人、叶について。

VTuberの“ストリーマー的活動”を切り開いてきた第一人者

 2022年1月に叶について書いた際には、すでにVTuberのゲーム配信としてトップランカーであることに触れつつ、その後の彼の活躍を願っていたが、約3年の活動を振り返ってみると、変化というよりも“深化”といった言葉がピッタリだ。

にじさんじ・叶が大切にするのは「リスナーとの出会いの場所」 途切れることのないゲーム配信への熱意

100人以上のメンバーが在籍するバーチャルタレント事務所・にじさんじ。所属するメンバーは多面的かつ多彩な活動を通し、様々なエンタ…

 まずは彼の活動の中心である配信活動について。YouTubeでの配信活動はもちろんだが、この約3年ほどでぐっと増えたのがTwitchでの配信である。デビューした当初の2018~19年の時点ですでにTwitchアカウントを作って配信をする機会はあったが、主に利用していたのはYouTubeであり、叶がTwitchでの配信をしているというイメージはかなり薄かったはずだ。

 2022年頃から『VALORANT』をプレイし始めるとTwitchでの配信が増えていき、2023年に『ストリートファイター6』『League of Legends』を集中してプレイするようになるとその頻度はさらに高まっていった。くわえて同年8月上旬ごろから参加した『ストグラ』配信をする際にTwitchを使っていたこともあり、「にじさんじ・叶はTwitchで配信している」というイメージが徐々に固まっていくこととなった。

 リスナーから「YouTubeとTwitchの違いはなんですか?」と聞かれた叶は、このように答えている。

「(Twitchは)YouTubeほどリスナーが僕にやさしくない。僕のことを愛でるために来てるんじゃなく、そのゲームを知っている人が見に来てるみたいなのが多いかな」
「分かりやすくいうと、YouTubeの方がアイドルしてるかも」

 2つの配信サイトのメイン視聴者層や属性の違いを肌感覚で掴んでいることが伺い知れた。

 また2022年2月の配信において「Twitchはコメントが面白い!」とハッキリと口にしており、「Twitch配信は、僕の面白さだけじゃなくてコメントの面白さも加味しておもしろい。僕の面白さを確実にブーストしている」とまで話しており、彼がTwitchへと傾倒していく兆候がこの頃から見受けられる。

飲酒雑談 | いろいろお疲れさまでした~!バレンタインなのでバランタインのみます【にじさんじ/叶】

 現在、叶はYouTubeとTwitchの両サイトで配信しているが、月によってはTwitchでの配信が断然多い月もある。使い分けの方針について「毎日のように継続してつづけていくゲームはTwitchで、いちど楽しめれば十分そうなゲームはYouTubeで配信する」と、おおまかに話したことがあり、現在でもおおよそその方針に従って配信するタイトルや配信サイトを分けていそうである。

 こうした継続的なTwitch活用の結果、叶のTwitchチャンネル登録者数は現在約75万人ほどとなっており、YouTubeチャンネル/Twitchチャンネルの両方で登録者数100万人を突破する可能性がうまれている。

 YouTubeチャンネル/Twitchチャンネル両方でのチャンネル登録者数100万人到達は、にじさんじやホロライブのメンバーを見渡しても、少なくとも日本語圏で活動するVTuberではだれも達成しておらず、今後さまざまなVTuberがシーンに登場していくなかでも無二の到達点になる可能性が非常に高い。

 すこし視点を変えると、より幅広い視聴者数から関心を寄せてもらえるように活動の幅を広げていったなかで、チャンネル登録者数や同時視聴者数といった部分ではなく、「配信チャンネルをもう1つ作り上げる」という難しいミッションにトライし、結果別々の視聴者層から一定数以上の反応……それどころか強い支持を受けるようになった。これは特筆すべき状況なのではないだろうか。

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