arrows最上位モデル『arrows Alpha』に感じた“既視感と堅実さ”のバランス

arrows、最上位機『arrows Alpha』が登場

 FCNT合同会社は2025年夏に、arrowsシリーズの最上位機種となるSIMフリースマートフォン『arrows Alpha(アローズ アルファ)』を発売する。AIアシスタントのダブル搭載や、ハイエンドな処理能力、美しいカメラ性能、圧倒的なバッテリー持ち、そして高い耐久性を兼ね備えた一台だ。

高性能チップとAIで、スマホがより賢く

 『arrows Alpha』は、MediaTek製の「Dimensity 8350 Extreme」を採用し、シリーズ史上最高レベルの処理性能を実現。重視したのは一瞬の速さではなく、“安定して高いパフォーマンスを出し続けること”だという。

 アプリの起動や切り替えのスムーズさはもちろん、サーマルスロットリング(発熱による性能低下)の抑制や、フレームレートの最適化にも力を入れており、使い勝手の良さに直結するチューニングが施されている印象だ。

 最大3つまで設定できるアクションキーで、任意のAI機能を素早く呼び出すことができる。Googleの生成AI「Google Gemini」に加え、独自の「arrows AI」も搭載されており、スマホの設定から旅行先での通信方法、カメラの使い方まで、自然な言葉でのサポートを受けることができる。

 ただ、実際に使ってみた印象としては、PCの設定画面で検索窓に「フォント」と入力して関連項目が表示されるような、あくまで“ガイド的”な感覚に近い。アクションキーで呼び出せる点は便利ではあるが、「AIならではの驚き」があるかというと、今のところそこまでの感動はなかった。とはいえ、「分からないことを調べるのが面倒」という層には、地味に役立つ存在になるかもしれない。

 2025年秋冬には、通知の要約やオリジナル画像・壁紙生成といったAI機能も追加予定で、日常のあらゆるシーンにおいてユーザーの行動をサポートする。

144Hzのなめらか表示とMIL規格対応の頑丈さ

 約6.4インチの有機ELディスプレイ『pOLED Super HD(2670×1200)』は、1-144Hzのリフレッシュレートで滑らかな表示を実現。ピーク輝度3,000nit。460ppi。ブルーライトを抑える「Eyecare」機能も搭載し、長時間の利用でも目に優しい。

 また、米国MIL規格の23項目に準拠し、1.5mの高さからの落下にも耐える堅牢さを持つ。IP6Xの防塵、IPX6/8/9の防水性能も備え、日常使いからアウトドアまで安心して使える設計となっている。

長時間駆動&超急速充電で「充電の不安」がさらに少なく

 バッテリーは5000mAhの大容量で、動画視聴やSNSを10時間使っても2日間持続。90W対応の同梱充電器で、1%から100%までをわずか約35分で充電できるのも特筆すべきポイントだ。独自の充電制御技術により、5年後でもバッテリー容量の80%を維持。電池に負荷をかけない「ダイレクト給電」機能も備える。

 展示スペースでは、『arrows N』などの他モデルと横並びでバッテリー残量の比較も行われていた。同じ稼働時間でも『arrows Alpha』のほうが20%ほど多く残量があり、体感ではわずかな違いに思えても、数字ではっきりと省電力性の進化が示されていた。

高画素×AIで、想像以上の一枚を

 カメラは、約5030万画素のソニー製メインセンサー(LYTIA LYT-700C)を採用し、光学式手ブレ補正にも対応。暗所や動きのある被写体にも強く、AIがシャッタースピードや色味を最適化してくれる。約4990万画素の超広角カメラやインカメラも備え、グループショットでは目を閉じた人物を自動合成して全員の目が開いた1枚に仕上げる機能も搭載。

 AIによる処理とはいえ、背景の玉ボケやノイズ感にも大きな違和感はなく、かなり自然に仕上がっている印象だ。ぱっと見では“AIっぽさ”を感じさせず、普段使いのスナップ撮影でも十分に実用的だと感じた。

幅72mmの考えられたサイズ感。環境とも意識した高級感のある設計

 本体幅は72mmとスリムで、人間工学に基づいた“もっとも握りやすいサイズ”を追求したという。実際に手に取ってみると、ディスプレイサイズをしっかり確保しながらも、片手でも無理なくホールドできる絶妙なバランス感が印象的だった。見た目のスタイリッシュさと実用的な持ちやすさを両立しており、日常的に使うスマートフォンとしての完成度は高いと感じた。

 また本機は、エコマークの認定を受けたスマートフォンでもある。背面パネルに再生プラスチック、内部フレームに再生アルミニウムを用いるなど、部品総重量の約60%がリサイクル素材だ。MIL規格の耐久性、最高水準の防水・防塵性能により、長期使用を実現。端末の丸洗いやアルコール除菌も可能で、衛生面にも配慮されている。

 全体としては堅実な仕上がりではあるものの、どの機能もどこか“他メーカーの後追い感”が拭えず、正直なところ印象に残りにくい一台だった。

 市場想定価格が税込8万円台というのは、唯一惹かれるポイントではあるが、それもNothingやXiaomiなどの他国メーカーであれば、さらに安価で“必要十分”なスペックのモデルが揃っており、比較してしまうと価格面でも性能面でも中途半端な印象が強まってしまう。 

 堅実さを重ねたぶん、大きな破綻はないものの、“arrowsらしさ”と呼べる決定打が見えてこないのも事実。良くも悪くも無難にまとまっており、このままでは埋もれてしまう可能性も否めない。個人的には、「これぞarrows」と言えるような独自の体験や尖った要素が欲しかった。とはいえ、土台の完成度は高く、今後のアップデートや次世代機での進化にも期待したいところだ。

◼︎発売予定:2025年夏
◼︎カラー:ホワイト/ブラック
◼︎製品ページ:https://www.fcnt.com/product/arrows/m08-sim-free/

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