E-Inkじゃない“目に優しいタブレット”ってアリかも。TCL『NXTPAPER 11 Plus』は3万円台のちょうどいい一台

 タブレットに求めることは人それぞれだが、「読書や動画再生ができればいい」「子ども用に1台持たせたい」「原稿チェック用にサブ機が欲しい」といった、“そこまでのスペックは求めない”という層にとって、ちょうどいいバランスの製品は意外と少ない。

 そんな中、TCLから登場した『NXTPAPER 11 Plus』は、独特のディスプレイ体験に加え、長時間駆動のバッテリー、ペンでの書き込みにも対応する使いやすさ、そして手に取りやすい価格という三拍子が揃った、非常にバランスの取れた1台。

 すでにタブレットを持っている自分ですら、「サブ機として欲しい!」と感じるほど、ちょうどいいニーズを突いてくる、“絶妙なタブレット”だった。

クセのない外見だが、機能は超個性的なディスプレイ“3変化”

 見た目はいたってシンプル。11.5インチの2.2Kディスプレイを備え、画面の表面はまるで最初からアンチグレアフィルムを貼っているかのような、マットでサラリとした質感。反射が抑えられ、サラサラとした質感は少し特徴。とはいえ、まだまだ外見上はいわゆる“普通のタブレット”といったルックスだ。

 しかし、その実、このディスプレイにはかなり特殊な機能が。一般的なIPS液晶ではあるが、「通常モード / インクペーパーモード / カラーペーパーモード」の3種を切り替えられるという!

 「日常的に画面を見続けて目が疲れる…」という状況は現代人、よくあることだと思う。その点で、この『NXTPAPER 11 Plus』だとボタンひとつで気軽にディスプレイモードを切り替えて、そのシーンにあった“読みやすいディスプレイに切り替えられる”というのは、斬新かつ実用的な機能に感じた。

 百聞は一見にしかずというわけで、実際のディスプレイ表示を見てみる。まずは「通常モード」から。もともとのマットなディスプレイ質感のせいか、発色はほんのりとにじむような印象もあるが、とはいえ日常使いには何の問題もない、ごく自然な表示だ。

 一方で、「カラーペーパーモード」に切り替えると、彩度をグッと落としつつも、どこかE-Inkっぽさのある、目に優しい表示に変化。さらに「インクペーパーモード」にすれば、完全に白黒となり、さらにE-Inkディスプレイに近い読み心地になる。

 正直に言えば、「完全に紙みたい!」というほどのE-Ink的な“紙感”は少ない。最初はちょっとそれっぽさを感じても、使い込むうちに「うん、やっぱE-Inkとは別モノだな……」という気持ちのほうが強くなってくる。

 けれど、それにかなり近い“目に優しい感覚”が味わえるのは、なかなかおもしろい体験。そして何より、表示に使われているのはあくまで普通の液晶ディスプレイ。なので、E-Ink特有のあのモッサリとした切り替えの遅さや、激しい動きに対する残像感とは無縁というのは不思議な感覚だ。

 この特徴を活かして、白黒表示のままYouTubeを観る……なんていう、まるで昔の白黒テレビ的な遊び方もできたりする(やるかは別として)。そんな、紙っぽいけど紙じゃない、液晶っぽいけど液晶とも違う、ちょうどE-Inkと液晶の中間を狙ったような読みやすさを持つ、不思議な立ち位置の遊び心のあるタブレットだと感じた。

2週間充電いらず。とにかく減らないビックリバッテリー

 そして、地味に驚かされたのがバッテリー持ち。8000mAhの大容量バッテリーを搭載し、なんと最大60日間も連続待機するというスペック。最初は「さすがに盛ってるでしょ?」と思ったが、使ってみると、もはや違和感を覚えるレベルで電池が減らない。

 これがインクペーパーモードの恩恵なのかは不明だが、1日20〜30分くらいニュースを読んだりマンガをパラパラめくったりする程度のライトユースなら、1〜2週間は余裕でもつ(50%近くのバッテリー残量を残して)。もちろん、使い方次第でバッテリーの消費は大きく変わるとは思うが、少なくとも自分の場合、2週間のレビュー期間中に適当に一度くらいしか充電をした記憶はない。

 正直、「もうこのバッテリー持ちだけで買う理由になるのでは?」と感じるくらい、印象に残るポイントだった。

スタイラスペンの独自の使い心地もおもしろい

 スタイラスペン『T-Pen』は、4096段階の筆圧検知に対応しており、サラサラとした描き心地がなかなかクセになる。

 Apple Pencilのような高精度・高反応を求めると少し物足りなさはあるし、遅延もゼロではないが、ペン先がヌルヌル滑りすぎず、程よい抵抗感があって、思いのほかお気に入りに。このあたりは、『NXTPAPER 11 Plus』の独特なディスプレイ表面が効いているのかもしれない。

 ラフなメモ取りや軽いお絵描きにはぴったりで、子どもに落書き帳として渡すのもアリだなと思えた。

 ただし注意点もあって、純正カバーをつけることでタブレット側面にマグネットで収納できるようになる仕様は便利な反面(※本体のみではマグネット装着に非対応)、「ペン探し機能」的なものは用意されていないので、うっかりどこかに置き忘れてしまいそうな予感はある。

 合わせて気になったのが、純正のフリップカバーの仕上がり。画面のオンオフにはちゃんと対応しているものの、カバーがマグネットでくっつくなどはなく、持ち運ぶときにパタパタと開いてしまいがち。質感もやや安っぽく、せっかく本体がよくできているだけに、ちょっと惜しいな……というのが正直な感想だ。

 とはいえ、この価格帯でここまで求めるのは酷かもしれない。トータルの完成度を考えれば、間違いなく許容範囲ではある。

ライティングアシストなど、AI機能も盛りだくさん

 クアッドスピーカーを搭載しており、YouTubeやNetflixといった動画視聴では「普通に聞ける」レベル。特別感動するような音質ではないが、決して悪くもない。この点も、この価格帯なら「むしろよく頑張ってる」と言いたくなる出来栄え。

 カメラは前後ともに8MPと、一応のスペック。とはいえ、期待はほどほどに。Web会議やQRコードの読み取りくらいに使えれば十分だろう。

 そのほか、AIによるライティングアシスト機能など、細かな機能も盛り込まれている。正直、活用するかどうかはユーザー次第だが、「あれこれ機能が詰まっている」という満足感は得られる。

 いちばん驚いたのはスペックかもしれない。Geekbench6で測定したベンチマークのスコアを見ると、CPUシングルコア717・マルチコア1959、GPU1293と体感としては2018〜2019年のミドルレンジスマホくらいのレベルだ。

 この性能ゆえか、たまに「ん?」と動作が引っかかる瞬間はあるが、致命的かというと意外とそうでもなく、ふだん使いで大きなストレスになることは少なめだった。

 もちろん、重めのゲームは最初からお呼びではないが、ネット、動画、読書、ちょっとしたイラストくらいなら全然OK。自分がよく使う、2分割してYouTubeとGoogle検索くらいのライトな使い方でもまったく問題なかった。

 むしろ「タブレットのスペックなんて、このくらいでよくない?」と思える、ちょうどよさがある。そのぶん価格が抑えられているなら、これはこれでアリ。

 必要なところにちゃんと力を注いで、余計なところにはコストをかけない。このバランス感覚こそ、実は今のタブレットにいちばん求められているのかもしれない、と思ったりした。

改めて、「読む」「見る」「書く」タブレットが3万円台は破格

 正直なところ、iPadのような“なんでもできる万能機”とは少し立ち位置が異なる。それでも、この『NXTPAPER 11 Plus』は、「読む・見る・ちょっと書く」をストレスなくこなしてくれるタブレットが3万円台という価格を考えると破格の完成度。

 もちろん、Google Play ストアにも対応しているので、SmartNewsや電子書籍アプリなんかもサクッと使える。サブ機としてはもちろん、家族共用や、子どものお絵描き&動画視聴用としてもぴったり。

 すでにクラウドファンディング分は完売してしまったが、一般販売が始まったら真っ先にチェックしたくなる、そんな“ちょうどいい”タブレットだった。

◼︎製品仕様:
・価格:3万9800円(税込)※7月末より一般販売予定
・サイズ:260.48mm × 176.82mm × 6.5mm
・重さ:490g
・サイドボタン:電源、音量、NXTPAPERキー
・色:グレー
・防水防塵レベル:IP54
・OS:Android 15
・CPU:MTK Helio G100 オクタコアCPU搭載(8コア)
・GPU:ARM Mali-G52 MC2
・サイズ:11.5インチ
・解像度:2220 × 1440 ピクセル
・アスペクト比:16:10
・輝度:450ニット, 直射日光下で最大550ニット
・画面表示技術:NXTPAPER 4.0
・画面比率:3:2
・画面占有率:87%*(画面占有率はVA/TP方式で算出されています。)
・タッチペン対応:あり (純正のタッチペンは別売りです。)
・リフレッシュレート:最大120Hz
・容量:8000mAh

◼︎商品ページURL:
https://www.tcl.com/jp/ja/tablets/tcl-nxtpaper-11-plus

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