サービス終了が「本気で悔しい」と思った――アクションRPG『TRIBE NINE』の破天荒で緻密な魅力とは
2025年2月20日にリリースされたゲーム『TRIBE NINE』のサービス終了が、同年5月15日に突如発表された。4月17日に3章ネオチヨダシティ篇が追加され、3ヶ月ごとにシナリオ更新をすると発表があってから、わずか1ヶ月ほどの出来事だった。
サービス終了の理由は「3章 ネオチヨダシティ公開後の新規プレイヤーの参入数やプレイヤーの数、商品の売上のいずれもが、当初想定していた数値を大きく下回る結果となってしまった」から、だそうだ。
筆者は仕事がきっかけで、3月から毎日プレイするようになった。「XB(エクストリームベースボール)」という、野球をしながら討論をしていく他にはないシステムに驚いた。またキャラクターのモデリング、2D背景の作り込みも素晴らしく、さらに惹きこまれていった。
プレイ当初、2022年に放送されたアニメ版がYouTubeで無料配信されるタイミングだった。ゲーム版のキャラ出演にひどく興奮し、ゲームへののめり込み具合が半端ではなかった。アニメもおよそ50周はしたかと思う。
そんななか、突如発表されたサービス終了。これまでにプレイしてきたゲームは、サービス終了の報があっても「仕方がない」と諦められていた。だが、『TRIBE NINE』だけは「悔しい」という感情に支配されたのだ。こんなにも高クオリティで、唯一無二な遊びが詰まったゲームが、たった9ヶ月で幕を閉じてしまうことが本気で悔しかった。
短い期間ながらも筆者を虜にしてくれた『TRIBE NINE』。1人でも多くのゲームプレイヤーの心に残るよう本作の「唯一無二」な魅力をお伝えしたい。
少年漫画のような“熱さ”を感じる唯一無二な遊び「XB」
本作には、討論をしながら野球をする「XB」というシステムがある。ただの野球ではなく、キャラがスキルを発動しスーパープレイをしながら試合が進展する。XBには少年漫画のような熱さがあり、筆者は惹かれた。
キャラクターたちが町中を真剣に走り戦う姿は、まるで少年漫画のシーンのような格好良さがある。筆者がお気に入りのツキはいつもかわいい表情や仕草をするのだが、XBではとんでもない格好良さを見せてくれる。体を思いっきり張って悪に立ち向かうトラッシュトライブ(※主人公の曜らが所属する集団)は、少年漫画のヒーローそのものだった。そんな破天荒な遊びXBは、本作の唯一無二の魅力だ。
見る角度を問わない緻密に作られたキャラモデリング、馴染みある風景に心躍るドット絵背景
ゲームキャラクターもアニメ作画と同様、いわゆる「作画崩壊」を起こすことがある。だが、本作のキャラ達はどの角度から見ても作画崩壊しないのだ。その理由は、緻密に計算されたモデルの作り込みに他ならない。特に、XBの最中・マキュウ選択画面でモデリングの良さが際立っていると感じる。
XBバトルでは、キャラクターたちがとても激しい動きをする。体をぐるりと回転させたり、全力で走ったりする瞬間が多々あるが、いつもキャラクターの顔が整っている。XBプレイ中は、ぜひスクリーンショットを連写してみてほしい。きっと推しのご尊顔が拝めることだろう。キャラクターのビジュアルの良さも本作の唯一無二な魅力だ。
もう1点、グラフィックに於いて心動かされたものがある。それは「ドット絵の背景」と、その再現度だ。
本作は東京に実在する場所をモデルにしているのだが、現実感と非現実感の混ぜ具合が見事だと感じた。特にお気に入りなのが「秋葉原」をモデルにした「ネオチヨダシティ」。筆者は秋葉原に何十年間と通っており、いまでも週3日のペースで行くほどお気に入りの場所だ。
特に気に入っているのは「ラジオ会館」を模した「テレビ会館」だ。恐らくだが、昔の様子と現在のラジ館がミックスされている。初めて目にした際はあまりの再現度に驚愕した。
再現度もさることながら、ドット絵としてのクオリティも非常に素晴らしい。看板、店舗、床、地面までも非常に細かく作られており、探索にまったく飽きない。 現実の景色を大事にしつつもそのまま落とし込むのではなく、あくまでもゲームの世界であることを感じさせる非日常感がある背景に仕上がっている。2Dドット絵のタイトルは星の数ほどあるが、見るだけでワクワクさせてくれるものは類を見ない。
サービス終了がなければ、東京のさまざまな場所がこの緻密なドット絵で再現されたのかと思うと残念でならない。ただ、この緻密なドット絵に感嘆したものの、制作は大変ではないか、と感じていたのも事実だ。品川を模した「シナガワシティ」、六本木・麻布・お台場あたりを再現した「ミナトシティ」も見事な再現度なので、ぜひプレイし確認していただきたい。
先日まで唯一稼働していた「フラクタルヴァイス」(※)もついに更新停止を迎えた(プレイは可能)。刻々と別れの時が近づいていることを痛感する。だが、まだ約5ヶ月は『トライブナイン』をゲームとして楽しめるのだ。解放されたエリアは3つと少ないが、フィールド上の宝箱は時間が経てば復活しアイテムが再入手できる。そのため何度でも探索が可能なのだ。ここで本作の魅力が生かされるとは、なんとも皮肉である。
※ダンジョンを進みながら宝箱を集めるバトルコンテンツ
執筆中に朗報が届いた。なんと、制作中の5章までのシナリオを公式サイトで公開するそうだ。「最後まで書いてほしい」という気持ちもあったが、少しでもプレイヤーへ届けたいという姿勢に、愛の深さを感じた。サービス終了で最も悔しかったのは、紛れもなく開発スタッフ陣だろう。
いちプレイヤーとして現状できることは、思う存分ネオトーキョー国を満喫し、4章と5章を見届けることではないだろうか。もちろん、彼らの行く先を最後まで見届けたいというのが本音だ。来たる11月27日までプレイし尽くし、悔いなき終わりを迎えたいと思う。違った形で彼らに会える日が来ることを願いながら。