Anker最新イヤーカフ型イヤホン『Soundcore AeroClip』を一ヶ月使ってみた 既存モデルとの比較も

Anker『Soundcore AeroClip』レビュー

 アンカー・ジャパンは、イヤーカフ型の完全ワイヤレスイヤホン『Soundcore AeroClip』(以下、AeroClip)を4月23日に発売した。

 20,000円以下の完全ワイヤレスイヤホン市場で売上/数量シェアNo.1を誇る同社オーディオブランド「Soundcore」では、これまでイヤーカフ型として『Soundcore C30i』(以下、C30i)、『Soundcore C40i』(以下、C40i)の2機種がラインナップされていた。

 そのなかで『AeroClip』は販売価格17,990円(アンカー・ジャパン公式オンラインストアにて)と、同ブランドのイヤーカフ型において最高価格にして同ブランド全体を見渡しても高価格帯に位置しており、豊かなサウンドとミニマルで洗練されたデザインを兼ね備える、まさに“決定版”とも言える製品だ。

 今回はそんな『AeroClip』『C40i』『C30i』をまとめてお借りできたので、最新機種『AeroClip』の長期試聴レポートに加えて、『AeroClip』という優秀な比較対象が登場したからこそ判った『C40i』『C30i』ならではの魅力についても紹介したい。

つけていることすら忘れる『AeroClip』

 机の上に置くとまるで小さなヘッドホンのように見える、ユニークなデザインの『AeroClip』。スピーカーである小型球体とバッテリー等を内蔵する楕円形の球体とをつなぐブリッジには、柔軟なTPU素材が使用されており、中に仕込まれた0.5mmの形状記憶チタンワイヤーが形状を安定させ、快適な装着感をもたらしてくれる。

 『C40i』と比較してスピーカー(ドライバー)側の球体面積が約37%小型化され、片耳約5.9gの軽量設計であることも相まって、「1日中つけたままでも快適」の謳い文句はまさにその通りだと感じた。

 実際、筆者は1日あたり最低でも6時間以上は本機を装着する生活をおよそ1か月間にわたり過ごしているのだが、その間に耳の違和感や痛みを感じて外してしまうようなことは一度も起きていない。

 むしろ軽快すぎるゆえに、すでに装着済みであることを忘れて空のケースを開いてしまったことが何度かある。あるいは、ふと「いまどうやってこの音を聴いているんだっけ?」と自分の耳を触って確認したことも。『AeroClip』を装着し忘れてスピーカーから音楽を垂れ流していやしないか、と不安になってしまうのだ。

 オープンイヤー型ならではの“耳もとにスピーカーを置いて音を聴いているような感覚”は、未体験の方にもぜひ一度味わってみてほしい。

 本機は12mmのダイナミックドライバーとLDAC対応により、原音に忠実なサウンドを届けられるよう設計されている。音の広がり感と解像感のバランスがよく、さらには迫力ある重低音をも、耳をふさがずに楽しめるのには驚きだ。もはや“耳もとにスピーカー”を超えて“脳内に音が直接響いている”ような感覚すら覚える。

 とくにライブ映像の鑑賞やゲームプレイにおいてこの臨場感はやみつきであったし、密かに期待していた環境音系BGMやASMRサウンドとの相性もバツグンだった。

 筆者はふだんカナル型イヤホンを愛用していたのだが、たとえば川のせせらぎや焚き火のパチパチ音が“耳の中で鳴っている”雰囲気になってしまうのはどうも違和感があった。かといってスピーカーでは解像感が物足りなく思っていたため、本機はベストパートナーと言えそうだ。

 対して遮音性についてはやはり密閉型イヤホンに軍配が上がるところ。とはいえ、騒がしい都心の駅構内や地下鉄の車内において音楽が聴こえづらく感じることはあったにしても、ラジオ等の会話音声は問題なく聴き取ることができた。

 もとより周囲の音を遮断しないことこそがオープンイヤー型の長所であるし、本機をもってして音楽が聴こえづらい状況≒音楽に気を取られていないで周囲の環境に気を配るべき状況とも言えるだろう。

 ちなみに音漏れに関しては、少なくとも静かなオフィス内で隣席の編集部員から苦言を呈されるようなことはなかった。ただ本機は音漏れ防止として指向性音響技術を採用しているので、さすがに至近距離まで近付かれると一定の音漏れは感じられるようである。満員電車などでは周囲に多少配慮する必要があるだろう。

 まとめとして、本機の気になったポイントについても3点ほど挙げておこう。まずは、近年のイヤーカフ型製品としては珍しく、本機はイヤホン本体の左右の区別が“ある”タイプなことだ。

 本体を一旦外して机の上に置いてから再度装着するときなどには、本体側面のLR表示を確認する必要がある。ただ、ケースに戻して充電する際には、ブリッジ部を持って耳から外し、開いたケースに順手のまま入れれば収まる仕様になっているので、充電する際にストレスを感じることはほぼなかった。

 次に、本体単体で音量や再生/停止などをコントロールしようとしたときの“あやふや”な操作感。本機はブリッジ部をタップすることで各種コントロールが可能だが、ブリッジが柔軟な素材だからか、意図した操作ができなかったり、そもそも反応しなかったり、装着位置を調節するために触った拍子に反応してしまったりするケースがあった。操作のためにいちいちスマホを取り出したくない派の人は、わずらわしく感じるかもしれない。

 最後に、充電ケースのバッテリー残量を示すLEDインジケーターが直感的とは言い難いこと。基本的に1個のLEDの点灯状況と色味で判断せねばならず、残量が20%以上あるか否かの判断しかできないので、詳細に知りたい場合はsoundcoreアプリより確認する必要がある。

 なお本機の再生可能時間は、イヤホン単体で最大8時間、充電ケース使用も含めると最大32時間。さらに約10分の充電で最大3時間の音楽再生が可能な短時間充電にも対応しているので、たとえばシャワーを浴びているあいだだけ充電しておき、それ以外は起床から就寝時までほぼつけっぱなしといった使いかたも可能だ。

 いくつか気になる点を挙げたものの、これらの懸念点は本機が2万円を切る価格に収まっていることとトレードオフの関係性にあると思えば筆者としては納得できた。イヤーカフ型として高品質かつ、完全ワイヤレスイヤホンとして見れば十分現実的な価格の本機は、イヤーカフ型の特性に魅力を感じる、あるいは興味を持っている方にぜひともおすすめしたいと思った次第である。

 一方で、「イヤーカフ型にしては少々お高いのではないか」「もっと手頃な価格で試せるイヤーカフ型はないのか」と思った方は、続いて紹介する『C40i』『C30i』をチェックしてみてほしい。

スキマの価格帯を埋める『C40i』&クリアカラーが魅力の『C30i』

 多くの方がイヤーカフ型と聞いてイメージする形状に合致するであろうデザインとなっている『C40i』および『C30i』。価格は『C40i』が12,990円、『C30i』が7,990円と、『AeroClip』も含めて5,000円刻みの価格差が存在し、当然ながらその差は音質と装着感にも表れている。

 『AeroClip』と『C40i』を聴き比べてみると、オーディオマニアではない筆者であっても『AeroClip』のほうが音の広がりや解像感において優れていることは明らかに感じられたし、複数の編集部員からも同様の感想が得られた。音質にこだわりたい方には、迷わず『AeroClip』をおすすめしたい。

 率直に言って『C40i』および『C30i』は、『AeroClip』に比べやや音がこもっている印象を受けたのだが、音響関係に詳しい編集部員によれば、soundcoreアプリでイコライザーを調整し、高音域を強調することで解像感をある程度改善できるとのことだった。

 また音質の印象は、スピーカー部と耳孔との位置調整によっても大きく変化するようだ。筆者の場合『AeroClip』がただ装着しただけでベストポジションに収まるのに対し、『C40i』および『C30i』は細かく位置調整していくなかで劇的に音質が高まると感じる瞬間があった。いわゆるスイートスポットが狭いと受け取るか、調整の幅が広いと捉えるかは、耳の形状の個人差にもよるところかもしれない。

 装着感に関しては、『C40i』『C30i』は『AeroClip』に比べてブリッジ部が硬めな印象だが、それによって生まれるホールド感は頼り甲斐があるともいえ、前述の位置調整のしやすさにもつながっている。

 個人的に『C30i』が耳に合わなかったのは残念だったところ。イヤーカフキャップを装着していない状態でも耳の締めつけが強く、3時間程度の連続使用で耳の痛みを感じるようになってしまった。デフォルトでホールド感が足りないと感じる方に関しては、付属のイヤーカフキャップで調整が可能だが、心配な方は実店舗で試着しておくのが無難だ。

 そうしたなかで『C40i』『C30i』ならではの魅力と言えるのは、やはり低価格なことと、イヤーカフ型のイメージから逸脱しない“らしい”本体デザイン、そしてカラーバリエーションであると言える。

 特に『C30i』には同ブランドのイヤーカフ型として唯一のクリアブラックがラインナップされており、内部が透けて見えるスケルトンデザインは、人によっては性能以上の価値を感じるポイントかもしれない。

『AeroClip』にも『C30i』にもない『C40i』固有の長所は、本体コントロールボタン(装着時に耳の裏側にくる部分)がタッチ式ではなく物理ボタン式なところ。操作感は随一だと感じた

 そしてもちろん『C40i』『C30i』であってもオープンイヤー型本来の魅力が損なわれることはない。

 たとえば、在宅時に洗濯や食器洗いなどの家事をしながら音楽を聴くといったシチュエーション。スピーカーであれば物理的な距離や水音にかき消されてしまうところだが、イヤーカフ型ならば問題ないうえに、耳をふさがないことから“自分自身がどれだけの騒音を発しているか”にも気を配りながら作業にあたることが可能だ。集合住宅にお住まいの方や、同居人にも配慮したい方にとってはうれしいメリットだろう。

 またカナル型イヤホンやヘッドホンだと蒸れが気になるお風呂上がりなどでも、イヤーカフ型なら気にせず装着して音楽を楽しめる。長時間使用による耳孔のかゆみとも無縁だ。

 以上のことから『C40i』『C30i』ともにイヤーカフ型の入門機としてうってつけであり、なにより各人の予算にあわせた選択肢が用意されているのはありがたいところ。

 『C30i』を試聴して「音質が物足りない」と感じた方については、ぜひ『AeroClip』も試聴してからイヤーカフ型に見切りをつけるか否かを判断してほしいことも付け加えて、本稿の結びとしたい。

■『Soundcore AeroClip』
サイズ:約2.8×2.5×2.1cm(イヤホン本体片耳)
重さ:約5.9g(イヤホン本体 片耳)/約51.6g(充電ケース含む)
通信方式:Bluetooth 5.4
充電方式:USB Type-C
対応コーデック:SBC/AAC/LDAC™
防水規格:IPX4
充電時間:約1時間(イヤホン本体/約2時間(イヤホン本体+充電ケース)
再生可能時間:最大8時間(イヤホン本体)/最大32時間(充電ケース使用時)
カラー:ミッドナイトブラック、ホワイト & ゴールド、ピンク & ブラウン

■『Soundcore C40i』
サイズ:約29×24×18mm(イヤホン本体 片耳)
重さ:約5.8g(イヤホン本体 片耳)/約51.6g(充電ケース含む)
防塵・防水規格:IPX4
通信規格:Bluetooth 5.4
Bluetoothプロファイル:A2DP, AVRCP, GAVDP, HFP
対応コーデック:SBC/AAC
再生可能時間:最大7時間(イヤホン本体のみ)/最大21時間(充電ケース使用時)
充電時間:約1時間(イヤホン)/約2.5時間(イヤホン本体+充電ケース)
充電端子:USB Type-C
接続方式:無線
カラー:メタリックグレー、ローズゴールド、クリアブラック

■『Soundcore C30i』
サイズ:約2.7×2.4×2.6cm(イヤホン本体 片耳)
重さ:約5.7g(イヤホン本体 片耳)/約60g(充電ケース含む)
防塵・防水規格:IPX4
Bluetooth規格:Bluetooth 5.3
対応コーデック:SBC/AAC
連続再生可能時間:最大10時間(イヤホン本体のみ)/最大30時間(充電ケース使用時)
充電時間:約1時間(イヤホン本体のみ)/約2時間(イヤホン+充電ケース)
充電端子:USB Type-C
接続方式:無線
カラー:クリアブラック、ホワイト

Ankerイヤーカフ型イヤホン比較表
製品名 『Soundcore AeroClip』 『Soundcore C40i』 『Soundcore C30i』
サイズ 約2.8×2.5×2.1cm 約2.9×2.4×1.8cm 約2.7×2.4×2.6cm
重さ
(イヤホン本体 片耳)
約5.9g 約5.8g 約5.7g
重さ
(充電ケース含む)
約51.6g 約51.6g 約60g
通信規格 Bluetooth 5.4 Bluetooth 5.4 Bluetooth 5.3
充電端子 USB Type-C
接続方式 有線 無線 無線
対応コーデック SBC/AAC/LDAC™ SBC/AAC SBC/AAC
防水規格 IPX4
充電時間
(イヤホン本体)
約1時間
充電時間
(イヤホン本体+充電ケース)
約2時間 約2.5時間 約2時間
再生可能時間
(イヤホン本体)
最大8時間 最大7時間 最大10時間
再生可能時間
(充電ケース使用時)
最大32時間 最大21時間 最大30時間
カラー ミッドナイトブラック
ホワイト & ゴールド
ピンク & ブラウン
メタリックグレー
ローズゴールド
クリアブラック
クリアブラック
ホワイト

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