Apple Music、ポップカルチャーの心臓部となる東京にスタジオ開設 ゼイン・ロウ×イブロ・ダーデン×みの×落合健太郎の熱いカルチャートークも

 収録後は4名と記者の質疑応答が設けられた。まず実際に顔を合わせて臨んだ収録の感想については、全員が空気感やタイムラグのない会話に発生する自由度に手応えを感じていた様子。「最初のフリースタイルはFaceTimeではできない」という、みののコメントには全員が笑って頷いていた。

 それぞれがレコメンドした曲で印象深いものを問われると、ダーデンがNujabesとウルフルズ「大阪ストラット」と浦上想起「散歩の天才」を挙げる。dj hondaやDJ KRUSHといった日本人ヒップホップアーティストが紹介されたことも、音楽の越境性を感じたという。またロウは「日本は生活や文化に繊細さがあって、シティポップなどの音楽にも環境が反映されている。色々な音楽を紹介してもらえて圧巻です」とした。

 「日本の音楽をどう広めたいか?」という質問には、みのが「日本の音楽はユニークなエコシステムがあって『ガラパゴス』と言われます。長いこと世界2位の音楽市場なのにも関わらず、まだ世界から発見されていません。日本はこれから色々な音楽を世界に出していける」と我が国のポテンシャルを説く。

 落合は「日本の音楽はジャズやヒップホップ、ロックを1曲にまとめるユニークさを持っています。160カ国以上で聴くことができるApple Musicのラジオで、世界中の人がアクセスする絶好の機会になると思う」とコメント。海外勢のふたりも日本のグローバルな型にはまらない音楽作りに好感を示していた。

 そして「歴史的にロックなどの西洋音楽を日本の音楽として取り込むのが上手だと思います」という落合の指摘も見逃せない。これはApple側の狙いのひとつである、日本産ヒップホップの海外発信の是非にも繋がってくる。もともとアメリカから輸入された音楽を日本から逆発信することになるからだ。これに抵抗を感じる邦人ラッパーはいないだろうか。

 この疑問にダーデンが反応。「dj hondaやDJ KRUSHをはじめとした日本人ヒップホップクリエイターの多くは、80年代以降から音楽を作ってきました。もちろんファンクやソウル、ジャズも含めた、これらの音楽は北米の黒人コミュニティの文化が起源ですが、自分が表現したいと思うなら引け目を感じる必要はない。ダンスホールレゲエでジャマイカからもリスペクトを受けるMIGHTY CROWNだって日本出身じゃないか」と熱く語る。

 みのも「当然、作り出した人たちはリスペクトする必要があります。でも始めた人たちしか作ってはいけないのなら、ブロンクスの人たち以外はヒップホップを作れないということにもなる」と発言。確かにDTMになくてはならない『TR-808』やMIDIも日本発祥だ。さらにアフリカ・バンバータもYMOから影響を受けたと語っており、文化には「お互いさま」な部分があると重ねた。

 そして最後にロウが「自分が何を好きかを探り、クリエイティブにストーリーを考え、偽りのない声を表現することが大事。音楽はあなたに作られたいと願ってると思いますよ」とまとめて、この場でしか生まれ得なかった自然発生的なカルチャートークが締め括られた。

 この議論が最後にできたという事実こそが、Appleが東京スタジオを開設した意義を体現していたように思う。リモートで収録して「ありがとうバイバイ!」で終わっていたら、最後の楽屋トーク的なグルーヴは生まれ得なかった。こういったDJやゲスト、アーティストたちが実際に集って交わした言葉や音楽が文化の血流となって、日本から世界に発信されていくのかどうか。今後を見守っていきたい。

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