二コンのフルサイズミラーレス機『Z5Ⅱ』はコスパにも優れた規格外の新鋭機

ニコン『Z5Ⅱ』コスパも優れた規格外の新鋭機

 初代から4年半を経て「遂に登場!」と巷のカメラファンもわき立つニコンZシリーズの新鋭機『Z5Ⅱ』。「見た目があまり変わらないからマイチェンかな」なんて大誤解! フラッグシップ『Z9』の懐刀『Z5Ⅱ』の撮影のフトコロはジツに奥深いのだ。

 ニコンのミラーレスカメラブランド「Z」シリーズのスタンダード機『Z5』が登場したのは2020年8月の事。「ニコンの手頃・手軽なフルサイズ機が登場!」としてヒットを記録し、実は今後も販売継続……つまりベテランであり現役選手でもある。

『Z5II 24-50 レンズキット』/ニコンダイレクト販売価格29万9200円

 現在のZシリーズを強化するかのごとく、デキの良い弟機(!?)として全面的に刷新の手が入った『Z5Ⅱ』が登場した。発表は4月3日、発売は4月25日。あらかじめ書いておくと、価格はオープンながら、ニコンダイレクト販売価格でボディーは25万8,500円。24-50レンズキットは29万9,200円。24-200レンズキットは35万8,600円(すべて税込)となる。既述の通り初代『Z5』は継続販売となり、機能と価格の両面で住み分けが図られる。あえて「Z5で満足!」という人がいてもぜんぜんおかしくない。それくらい初代『Z5』はよくできているし、長く愛用できる“小さな傑作品”と言っていい一台だ。

えっ、この機能・内容は上位機種「Z6Ⅲ」では?

 『Z5Ⅱ』のスペックシートを眺めるにつけ感じるのは、「この内容はフルサイズ上位機種『Z6Ⅲ』クラスなのでは?」という驚きだ。むろん新しい方が高機能なのは世の常だが、たとえば連写スピード約14コマ毎秒、AFの被写体検出能力、イメージングレシピ、ホワイトバランスなどは『Z6Ⅲ』(ちなみにニコンダイレクト販売価格ボディーが43万5,600円!)同等だし、明るい環境でも素早く仕上がりを確認できるEVF性能はフラッグシップの『Z9』(同77万2,200円!!)と同じだというのだから驚異的だ。

フラッグシップ『Z9』や『Z8』同等の明るさ、見やすさを誇る高輝度EVFを装備

 ニコンをして「『Z9』以降のいいところを注ぎ込んだカメラ」「スタンダードの枠を超えたカメラ」「今出せるニコンの全部」と自信を見せるだけある、さすがの内容だ。いま、『Z5Ⅱ』を手に入れれば長期にわたって満足して使えるはずで、デキが良すぎて買い替え頻度が落ちるのではないかと余計な心配してしまう程。さらにカメラの背後には、膨大なニッコールZレンズ群が控えているのだ。

“最良の道具をデザインする”『Z5Ⅱ』での注力ポイント

 性能については申し分がない出来だが、キープコンセプトのスタイリングについてはどうだろうか。機能同様に重視されるその造形について、ニコンZシリーズのプロダクトデザインを手掛ける今水 誠氏を直撃した。

高剛性マグネシウム合金製ボディーフレーム。スタンダード機ながらタフネスを手にしている

ーー初代『Z5』が今後も併売となるなかで、『Z5Ⅱ』のデザインでもっとも配慮して造形した部分とその理由についてお聞かせください。

今水氏:「Z」シリーズは、2021年に発売したフラッグシップの『Z9』からデザインを刷新しました。それ以降のモデルはZシリーズのデザインイメージを強固にすることを目的に、共通のデザインコンセプトでシリーズを展開しています。造形に関しては『Z9』からの単純な比例縮小ではなく、ボディーサイズに合わせてヘッド(EVF部分)のサイズ感や稜線のキャラクターライン等、丁寧にバランスを調整しました」。

左から『Z5Ⅱ』、『Z5』。ヘッド部のデザイン及びマウントに繋がるキャラクターラインの処理に違いがみられる

ーー 一見してもっとも違いが判るのがヘッド部分だ。初代ではヘッド下部がマウント形状に沿ってラウンドしているが、『Z5Ⅱ』は直線で切り取られ、両脇の稜線をマウントにつなぐことでボディーとの一体感を演出している。比較すると初代は、登場間もないZマウントの“大口径”という特長を強調するデザインであるように見える。構えた時のホールディングや快適な操作性のために、初代から変更・改良した箇所はありますか?

今水氏:「初代から定評のあるホールディングについては『Z5Ⅱ』ではボディーの厚みが増えた分、背面の右手腹が当たる部分の絞り込みを強化することでより快適なホールディング性を実現しています。また、操作性については背面モニターをバリアングル化することで、より様々な撮影スタイルに柔軟に対応できるよう改良しました」。

背面液晶の使い勝手の違い。左が上下チルトの「Z5」。右がバリアングル化された「Z5Ⅱ」

ーー現在のZシリーズカメラ全体のデザインコンセプトをまとめると、どのような言葉で表現できますか?

今水氏:「Zシリーズ初代からボディー/レンズ共に一貫して“光学性能を体現するデザイン”を掲げています。Zシリーズ最大の特徴である大口径マウント、ショートフランジバックだからこそ実現できる“新次元の光学性能”をデザインで最大化し、カメラが持つ高いパフォーマンスを心地良く、快適に扱える“最良の道具をデザインする”ことを目指しています」。

ボディー内に施された防塵防滴のシーリングを示す。道具としての使い勝手を高める

『Z5Ⅱ』を買うべきペルソナとは

 ニコンによれば『Z5Ⅱ』の想定ユーザーは3つに分類される。1/フルサイズカメラユーザー=少し前のミラーレスやデジタル一眼レフからの乗り換え層。 2/ステップアップユーザー=APS-Cなど小型センサーカメラからの乗り換え。フルサイズカメラへの憧れ層。3/競合フルサイズユーザー=競合他社からの乗り換え層。

有効2450万画素。フルサイズ/ニコンFXフォーマット (35.9×23.9㎜サイズ)CMOSセンサー搭載

 このうち『Z5Ⅱ』が主に担うのは、「2」の役割だろう。つまりフルサイズミラーレスユーザーのすそ野拡大だ。しかもこの層は単純にAPS-Cなど小型センサーカメラからの乗り換え(既存カメラ趣味層)にとどまらず、SNS発信を前提に「やっぱりカメラだといいんだって!」「映画みたいに録れるらしいよ」「カメラだと画がキレイだからPV稼げそう!」といった動機をもって、スマホから直接フルサイズミラーレスにジャンプアップするSNSユーザーが存在する。ゆえに可能性はより大きい。

 だから『Z5Ⅱ』は優しくなければならない。『優しい』というのは、操作のやさしさでもあるし、小型軽量で思い通りに撮れる(録れる)からいつでも持ち歩く、といった「近しい存在」としての意味もある。どちらかというと後者がより重要かも知れない。車に例えるなら『Z5Ⅱ』は限られたシーンで乗って楽しいスポーツカーと言うよりは、使い勝手がよく洒脱なSUVなのだ。

一般に普及しており価格もこなれているSDメモリーカードをWで使用できることは、ユーザーにとっても「優しい」仕様と言える

 極論すれば、買ったらずっと緑文字の「AUTO」で撮って間違いないくらいの完成度の高い新鋭機。単純に「いいカメラが欲しい」と思ったら選択肢に入れてほしい。そう、キミにはもう、『Z5』の足音が聞こえているはずだ。

◯参考情報

●SPEC
有効2450万画素フルサイズCMOSセンサー/ボディー内手ブレ補正機能5軸中央7.5段/約369万ドットEVF/視野率約100%/倍率約0.8倍/シャッタースピード1/8000~30秒/ISO100~64000/バリアングル式3.2型タッチ式液晶モニター搭載/本体サイズ(約)幅134×高さ100.5×奥行72㎜/質量約620g(本体のみ)

●スペシャルコンテンツ
https://nij.nikon.com/sp/z5_2/

●Z5II 製品情報
https://nij.nikon.com/products/mirrorless/lineup/z5_2/

●Z5II ニコンダイレクト
https://nij.nikon.com/shop/g/g4960759917157/

写真好きなら即決 「いまのニコン全部入り」なニコン『Z5Ⅱ』のスナップを撮って出しでレビュー!

「いまのニコン全部入り!」とでも言うべき、フルサイズZシリーズの新鋭機『Z5Ⅱ』が4月3日に発表された。「フルサイズスタンダード…

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