英雄による壮大な復讐劇がアラド大陸を揺るがす 高難度3Dアクション『The First Berserker: Khazan』レビュー

 Neopleが開発し、ネクソンから3月28日より発売された『The First Berserker: Khazan』(以下、Khazan)。本作はサービス開始から20年目を迎えたMORPG『アラド戦記』と同じ世界感で描かれる“ハードコアアクションRPG”だ。

The First Berserker: Khazan | Early Access Trailer

 しかしゲーム性は『アラド戦記』と大きく異なり、『Khazan』は最序盤から歯ごたえ抜群の3Dアクションゲームとしてプレイヤーの前に立ちはだかる。本稿では『Khazan』の基本システムやゲームフローを踏まえつつ、評価点について言及していく。

800年前のアラド大陸で巻き起こったカザンの復讐劇

 ゲームシステムについて触れる前に、まずは導入部から記しておきたい。なお、本作は上述の『アラド戦記』をベースとした物語が紡がれながらも、シナリオ自体はIF展開(もしもの話)なので原作を知らなくても問題ない。

 もう少し具体的に説明すると、『アラド戦記』における「カザン」は、ゲーム内に実装されている職業「鬼剣士」の祖とされている。『Khazan』ではこれまで詳細に語られていなかったカザンに焦点を当て、「800年前のアラド大陸で何が起こったのか」が明らかになる。

 本作の主人公を務めるカザンは、アラド大陸に根付くペル・ロス帝国に仕える大将軍だ。高貴な身分ではないながらも、己の実力と手腕のみで立身出世を成し遂げた実力者である。彼は無二の親友「オズマ」と協力し、帝国に仇なす凶龍ヒスマを討伐。救国の英雄として称賛されたカザンだったが、その強大な力を危惧した時の皇帝により、反逆の罪を着せられて流刑に処される。本作は、そんなカザンが謎の霊体に取り憑かれ、追手を撒きながら険しい雪山を彷徨うシーンから始まる。

 前触れもなくカザンに憑依した鬼神は、現世から離れた冥界を拠点とする幽霊だ。冥界に生じた危機を取り除くべく、鬼神は自らの器となり得るカザンに取り付き、その身体や精神を乗っ取ろうと画策。ところが支配を断ち切ろうと奮戦したカザンに敗北し、以降は互いの利害が一致したため協力関係を結ぶ。「人間ならざる力を手にしたカザンが、自身を貶めた陰謀の謎を力によって解き明かす」……というのが、『Khazan』の大まかなストーリーとなる。決定的なネタバレを避けるために詳細への言及は避けるが、プレイヤーの行動に応じて結末が分岐するマルチエンディング方式を採用している点も特徴的だ。

 本作はグラフィックの大部分にセルルックと呼ばれる手法を採用。主人公のカザンをはじめ、味方から敵にいたるまでさまざまなキャラクターがアニメ調の見た目に仕立てられている。決して写実的なグラフィックではないものの、イベントシーン等の迫力は十分。武人として功名を轟かせたカザンの大立ち回りは、何度見ても飽きのこないクオリティだと言えるだろう。

ソウルライクを踏襲しながらも緊張感と爽快感を両立

 本作は開発元が謳っているとおり、油断すると最序盤の雑魚敵にさえ倒されてしまうほどの難易度を誇る3Dアクションゲームだ。早い話、「ダークソウル」シリーズ等のトライ&エラーで攻略法を見出す“ソウルライク”を踏襲した作品ということになる。フィールドに降り立った後は敵を撃破しながら道中を探索。敵を倒した際に貰えるラクリーマ(経験値)を使ってカザンを強化しつつ、フィールド最奥で待ち構えるボスを打ち倒す……。多少の差異はあれど、ゲーム開始からこの流れは変わらず、これまでにソウルライク作品に触れたことがあるプレイヤーであれば、『Khazan』の遊び方に大きな疑問を抱くことはないだろう。

 本作のゲーム性を形作る戦闘システムについても言及したい。基本的な攻撃手段として、カザンは「クイックアタック」「強攻撃」「ダッシュ攻撃」「回避攻撃」の4種類を繰り出すことができる。発生の早いクイックアタックで様子を見て、隙が生じたら強攻撃を叩き込むといった具合だ。また、回避に合わせた攻撃やダッシュ攻撃による奇襲に加え、敵の攻撃から身を守る防御、その場から素早く距離を取るステップ回避なども実装されている。
つまり、状況に合わせたアクションで戦闘のアドバンテージを握ることが求められるわけだ。

 しかし、闇雲に攻撃したり様子見だからと言って防御や回避に専念しているだけでは到底勝つことはできない。なぜなら『Khazan』には体力のほかに気力が設定されており、あらゆる行動に応じて気力を消費してしまうからだ。考えなしに行動していると、あっという間に気力が底をついてしまう。そして気力が尽きると脱力状態となり、カザンはその場で息を切らしながら完全に立ち止まってしまう。そうならないためにも、ワンアクションごとに気力という名のリソースを管理し、逆に敵の気力を削るように戦うことで初めて優位に立つことができる。

 気力を効果的に削るテクニックとして、敵の攻撃タイミングに合わせてガードする「ジャスト防御」がある。ここに回避や攻撃アクションを組み合わせて気力を削りきり、脱力状態に陥った敵にトドメの「ブルータルアタック」をお見舞いする……というのが、『Khazan』の醍醐味だと言える。ここまでの流れを見てもらえれば、戦闘システムだけでも「数あるソウルライク作品を踏襲した」という点が伺えることだろう。

 ただし、アレンジがされていないわけではない。歯ごたえある高難度アクションを標榜しつつ、『Khazan』ならではの試みも要所でしっかりと見受けられる。たとえば「刀斧」「大剣」「槍」の武器種はそれぞれ攻撃モーションが異なり、プレイヤーの好みに応じていつでも使い分け可能だ。いずれも長所がはっきりしており、上述の戦闘システムをベースとしながらも、専用アクションや順次解放されるスキルツリーのおかげで幅広い戦い方が楽しめる。そしてゲーム中盤以降は、専用ゲージを消費してカザンを大幅にパワーアップさせる「闘鬼化」も行える。序盤こそヒット&アウェイの戦闘が多くなりがちな『Khazan』だが、以降はプレイヤーのテクニックも洗練され、「ゲームオーバーの緊張感と軽快なアクションが織りなす爽快感が両立されたゲーム」として昇華されていくだろう。

アクションゲーム初心者を見捨てない救済措置

 主人公カザンの育成システムについては、前述のラクリーマによるステータス強化に加え、「武器ならびに防具」「スキルツリー」「ファントム」「鬼石」……等々、ふんだんに用意されている。装備品に関してはレアリティが存在するため、レア装備を求めてフィールド探索や強敵の撃破に奔走するといったハック&スラッシュ的な楽しみ方もできる。ソウルライク未経験者だと重量制限などの一部パラメーターを含め、「どのステータスを重点的に強化すればいいのか分からない」という問題も生じるかもしれないが、上述したスキルツリー解放によるアクションの充実化をはじめ、装備品をより良いものに変えて各種要素をアンロックしていけば、おおむねゲームの進行に困ることはないはずだ。

 それでも攻略が難しいと感じたプレイヤーに対し、本作には「イージーモード」という救済措置が用意されている。難易度をイージーに変えると、「ダメージ量が減少」「攻撃力の増加」など、いくつかの恩恵が受けられる。ゆえに「初めてこの手のゲームを遊んだけれど、手強くて先に進めない」というプレイヤーでも、イージーモードに切り替えればハードコアアクションの魅力を気軽に味わうことが可能である。

 難易度の変更に関して、開発元は「多くのユーザーが楽しむことができる基盤を用意した」と謳っており、このあたりは手に汗握る高難度アクションをソウルライク経験者のみならず、幅広いプレイヤーに遊んでもらいたいというメーカーの気概が表れていると言ってよいのではないだろうか。筆者もいくつかソウルライク作品を遊んできたが、『Khazan』はそうした作品群のなかでもシステムが分かりやすく、リトライ時のテンポ感や救済措置も相まって、「ソウルライクを始めるならこれ!」と言いたくなる出来栄えだった。アラド戦記の世界観が好きな方、そしてアニメ調の高難度アクションに興味がある方はぜひ手にとってもらいたい。

 シングルプレイ専用『The First Berserker: Khazan』は、PlayStation 5/Xbox Series X|S/PC(Steam)向けに発売中だ。

『The First Berserker: Khazan』公式サイト:https://khazan.nexon.com/

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