“AIでサボる”ために始めた「#100日チャレンジ」 話題の著者に聞く、令和に「やりたくないことをやらない」ための思考法
“博打”ではなく、リスクを減らしながら「最適な一手」を選び続ける
ーー書籍を書かれてから、AIに対する考え方やスタンスは変化しましたか?
大塚:私のAIに対する考え方はいまも変わっていません。1年前よりもAIが賢くなったことで仕事の効率は上がり、単純作業は減りました。ですが、プロンプトをうまく使うために学ばなければならないことは増えましたし、そもそもの概念を理解したり出力された文章を読み解いたりすることは依然として重要なことです。
ChatGPTが優秀すぎるあまり、これまで息抜きとなっていた「単純作業」がなくなり、仕事の密度と労働負荷が格段に増しました。最近では、この負荷に私自身の体力が追いつかず、自分がボトルネックになっているのではないかと感じるほどです。そのため、身体を鍛えるためにパーソナルジムに通い始めました。
ーー今後の目標や目指しているイメージはありますか?
大塚:最近は「#100日チャレンジ」のように毎日noteを更新しており、その活動は今後も継続していきたいですね。何がウケるかわからないし、自分が何を書けるかも掴めていないので、まずは100本投稿してみるしかないと考えています。トライアンドエラーを繰り返しながら、私が書きやすくて、かつ読者が面白いものを見つけていきたいですね。
他方で、長期的な目標はまだ明確なビジョンが定まっていません。正直に言って、1週間後の自分の未来すらわからない状況なんですよ。2か月前の自分は、いまのようにうまく軌道に乗るとは思ってもいませんでした。ちなみに、もし本が売れなければ、ヨーロッパに行くことを考えていました。「研究員として大学に来ないか」と誘われたので、その選択肢も頭に浮かんでいたんです。
でも蓋を開けてみたらすごく本が売れて、さまざまな仕事の依頼が来るようになるとは……。まったく想像がつきませんでした。
ーーいろんな選択肢があると、逆にどれを選んでいいかわからなくなりますよね。
大塚:そうなんですよ。今後、会社を立ち上げるようなことを考えたとしても、かなりのリスクが伴います。そのような状況があるなかで、いかにリスクを減らしていくかが重要であり、すべてを捨てて博打のように挑戦するのは避けたいと思っています。とはいえ、これから 会社を作るような挑戦は何度も経験していくでしょう。実際にアイデアが浮かんだり、世のなかに必要とされるものを見つけたりすることはありますし、いずれチャンスが訪れたときに全力を尽くせるように、いまは生活の基盤を整えたり、スキルを高めたりすることに注力していきたいですね。
チェスのAIがあると思うんですけど、あれはゴールを見つけ、それに向かって進んでいるわけではなく、現在の局面を少しでも良くするために最適な手を打つアルゴリズムなんです。つまり、「どの手を打てばその局面が一番良いものになるか」を選んでいるんです。これからは私も、そんな風にゴールまで進んでいきたいと思っています。
できるだけ選択肢を失わないように、どんな選択肢を選んでもうまくやれるように、機会があればすぐに挑戦できるように準備を怠らないようにしていくつもりです。
ーーそういう意味では今回の本も未来への“準備”でもある、ということですね。
大塚:はい。実際に本を出したことで、エンジニアとしても周りからの評価が上がり、以前とは異なる仕事を頂けるようになりました。一度目の経験は重要なので、まずはこの経験を糧に、スキルをしっかりと習得したいと思います。
一方で、いつまでも受注開発だけで生きていくとは思えないので、”次の一手”を打つ機会は必ず来るでしょうから、準備を怠らないようにしたいですね。