『ドラえもん』の世界にまた一歩? 『Apple Vision Pro』のアプリで“2112年”の足音を聞く

「身代わりテレビ」っぽいアプリ『Vision Brew Journey』で部屋からキャンプを楽しむ

 つづいて紹介するのは、アサヒビールが開発したアプリ『Vision Brew Journey』。これは簡単にいえば部屋にいながらキャンプ場にいるかのような体験をできるアプリ。アプリを起動すると目の前には緑の生い茂るキャンプ場が広がり、焚き火の音を聴きながらリラックスすることができます。

 そして、キャンプといえば美味しいのがお酒。体験時はノンアルを頂きましたが、不思議なものでやはり普段よりも美味しく感じます。人間の味覚って結構曖昧なもので、かなり気分に作用されると思っているのですが(どこどこで飲むビールは美味しいとか、緊張して味がわからなくなるとか)、『Vision Brew Journey』はそれを上手に活かしたアプリになっています。

「Vision Brew Journey」イメージ

 ドラえもんのひみつ道具にも「行った気分を味わえる道具」があり、その名も「身代わりテレビ」。『ドラえもんプラス』第2巻に登場するひみつ道具で、片方のテレビが置いてある場所の景色を見たり、温度を感じたりすることができるというもの。

 「部屋にいながら違う空間の雰囲気や空気感を味わう」という意味で、近いものを感じますよね。「温度を感じられる」という点はXR文脈で語られる「VR感覚」に近しいものを感じて、藤子・F・不二雄先生の末恐ろしさを感じています。

 『Vision Brew Journey』のように、立体的な視覚情報を通すことで味覚、つまり人間の認知が変化するというのはやはり何度体験しても面白く、これもまた可能性を感じるアプリのひとつでした。特にアサヒビールさんは味覚の追究に日々取り組む企業ですから、今後このプロジェクトがどういった広がりを見せるのかも含めて、楽しみです。

『NEWVIEW FEST』にも出展していた

 個人的には、先日STYLYが開催していたXR芸術の祭典『NEWVIEW FEST』にも出展していたり、バーチャル空間のイベント『バーチャルマーケット』でもさまざまなコンテンツ開発に取り組んでいるので、「五感に訴えかけるコンテンツ」のリード企業として、今後も活躍してもらいたいなーなんて思っています。

幼い頃に夢見た『ドラえもん』の世界は、着実に近付いている

 ここ数年のテクノロジーの進化は、“激変”と評しても差し支えないほどの変化を迎えています。こう書くとなんだかありきたりな表現に思えてしまいますが、実際のところ「自然言語を高度に駆使したAI」「ゴーグル型のMRデバイス」「ロボティクス技術の発達」といった、昨今注目を集めるテクノロジーの数々は、かつてSFの世界で描かれる、まさに夢物語のような存在でした。

 しかし、テクノロジーの進化はそんな夢物語にどんどん追い付いています。スタンリー・キューブリックが世に送り出したSF映画の金字塔『2001年宇宙の旅』(1968年)にはタブレット型の端末が登場し、2010年代のApple対Samsungの訴訟で“反論材料”として使われたこともあります。

 筆者が大好きな『ドラえもん』の世界にも、『Craftrium』『Vision Brew Journey』のようなアプリを通じて、(ある一面においては)追い付いたと言えるでしょう。もちろん、まだ私たちは架空の水を感じることも、実際に温度を感じることもできませんから、いまだ遠い未来のお話に過ぎません。ですが、その片鱗はすでに見え始めているのです。

 さて、私たちは2112年までに『ドラえもん』と出会うことができるでしょうか? 前述した「AI」「MR技術」「ロボティクス」の、ここ数年における加速度的な進化を考えれば、それはそう遠くない未来のことかもしれません。

非公開: リアル・タケコプター登場まであとわずか? 近い将来実現しそうな、ドラえもんのひみつ道具5点とは

バナナマンをMCに、世の中の気になる事柄の「その先」を調べるバラエティ番組『ソノサキ~知りたい見たいを大追跡!~』(テレビ朝日系…

関連記事