歌広場淳のフルコンボでGO!!!
歌広場淳×アール×ハメコ。“eスポーツキャスター”座談会 「SFL 2024」優勝決定戦の見どころ、そして仕事に懸ける思いとは
キャスター界参入の壁は高い? “続けられる環境を作る”ことの重要性
歌広場淳:eスポーツキャスター界では、おふたりは“重鎮”だと思うんです。たとえ自分たちではそう思っていなくても、そういった視線を受けているんじゃないかなと。そんなおふたりが思うに、キャスター参入のハードルって高いものですか? 若手でキャスターになりたいという子もたくさんいると思うんですけど。
ハメコ。:難しいことだと思いますね、格闘ゲームに限らず。まずゲームの知識が必要だし、技術、話術の部分も当然必要だと思うんですけど、“参入”ということを考えると難しいなと。
「なない」(※3)の事例で考えると、自分が彼にキャスターの仕事を紹介した明確な理由がひとつあって。それは、友だちが多くいて、コミュニティから応援されていたことなんです。当時の「なない」は、技術的にはまだまだ、それこそ秋葉原でコミュニティイベントの実況をちょっとやっていたくらいだったんですけど。
※3……「ストリートファイター」シリーズを中心に活躍したeスポーツキャスター。2023年8月9日に心不全のため32歳の若さで急逝し、格闘ゲーム界は深い悲しみに包まれた。
技術は続けていくうちについていくものじゃないですか。ただ、“続けられる環境を作る”ことこそが実は大事で。ゲームってサブカルチャーだから、新人に対して周囲からの風当たりが強くなりがちなんですよ。いまではもうほとんどなくなりましたけど、昔はリアルで「で、おまえセビ滅できんの?」っていう感じだったじゃないですか。
その点、「なない」の場合は強いコミュニティの後押しがあって、おそらく彼らだけは「なない」のことを絶対に裏切らないから、それなら大丈夫だろうと自分は思っていたんです。
歌広場淳:「e-sports SQUARE」のコミュニティですよね。
ハメコ。:そう。しかも当時は立川選手とか竹内ジョン選手とか、いまをときめく強豪プレイヤーたちが仲良くしていた。だから、参入障壁という観点で言うと、技術よりもその人を後押しするコミュニティがあるかどうかとか、その人がゲーム好きであることを認識して一緒に遊んでくれる人たちがどれだけ多いかが、自分は大事だと思っています。
歌広場淳:まさに僕が聞きたかったことを、先回りして答えてくださった感じです。『スト6』を通してコミュニティが盛り上がっていて、そこかしこで有望な若手が出てきていて。そんな中で野望をいだいた若者たちは何をすべきか――という疑問に対する答えが、いまのハメコ。さんのお言葉に詰まっていましたね。
アール:僕も、いまのハメコ。の言葉は本質だと思います。仮に今後、“ハメコ。の後継者”的なキャスターが出てくるかと言ったら、おそらくは出てこない。経歴から何から違うから。ただ、続けられる環境を作れる人なら、その人なりのいいキャスターになれるよねって。
歌広場淳:うんうん。間違いない。
アール:俺らも四半世紀以上ゲームばかりやって生きてきたところがあるので、人生を全振りできるかどうかみたいな部分も大事になってくると思うし、格闘ゲームコミュニティは歴史が長いから、なおさら求められる素養が結構特殊なのかもしれないとも思いますね。
歌広場淳:とくに僕ら世代の格ゲーマーは、ゲームセンターというオフラインのコミュニティで育ってきたから、僕らがというか僕が勝手に心配しているだけかもしれないと思いました。いまの若手世代も、僕らで言うゲームセンターのようなコミュニティが実はあって、僕はおじさんだからそれに気付けていないだけの可能性もあるなと。
ハメコ。:たしかに、自分は格闘ゲーム以外のネットの友だちも多くて、年齢が離れた若い子たちともよく一緒に遊ぶんですけど。いまの人たちはオンラインなんだなって思いますね。昔、自分たちがゲームセンターで友だちができて、ご飯を食べに行って、みたいな経験と同じことをオンライン上でやっているんだなと。
だから自分もゲームセンターにはすごくお世話になったし、いろいろと思い入れもあるんですけど、ゲームセンターからオンラインでの交流が主流になっていくことに関しての寂しさみたいなものは実はないんですよ。いまの時代はこうだよなとフラットに見ているというか、悪く言えばドライなのかもしれないなって。
『スト6』自動実況機能の“本人”が見せる遊び心
歌広場淳:いまの若い世代のコミュニティがオンライン主流になっているからこそ、オフラインイベントでプレイヤーを見に行きたい、アールさんやハメコ。さんを生で見たいって思いがより強くなっているんでしょうね。実際に会えること自体がひとつの喜びになっているから。
そういう意味では、おふたりがゲームというものと、そのファンたちとをつなぐハブ役のような存在になっているような気がしますね。やっぱり「生でアールさんの実況が聞けてうれしい!」って喜んでいる人、オフイベントには必ずいますから。
アール:ありがたいですよね。本当に。
歌広場淳:あと、アールさんに関してはズルいんですよね(笑)。ちゃんと置きにきているというか、「SFL」のプレイオフとかでも「ミスは許されない~!」とかゲーム内の自動実況機能とまったく同じセリフを同じトーンで言ったりするから。
アール:そこはまあ、自分でもある程度意識してますね(笑)。だって、「ちゃんと同じ人だ!」って思えたほうがいいじゃない。
歌広場淳:実際おもしろいし、会場も沸くんですよね。「青写真を描いていたのかー!」とか。
ハメコ。:あれはたしかにね、おもしろいんだよな(笑)。自分としては「ここでスクリューを叩きつける!」がツボで。何がヤバいって、「板橋ザンギエフ」が自分の配信上で一生それをセルフで言っているから、耳に残るんですよ。
歌広場淳:もはや味わいが変わっちゃってるんですよね。各々のアールさんに派生し始めているというか。いまやアールさんも、「いってみましょうー!」の人じゃなくなっているんですよ。各々がイメージする“アールさんといったらこのセリフ”があるかもしれなくて、これってすごいことだと思います。
アール:だから、言葉遊びじゃないですけど。自分が実際に遊んでいる側だったら「こういうセリフがきたらちょっとニヤッとできるな」みたいなことは覚えておくようにしています。自分の遊んでいるときに自動実況をつけて、印象に残るセリフを記憶しておいて、後で実況する際に昇華していくことをやっていますね。この状況ならこういう遊びかたができるな、と。
2025年の抱負は「挑戦を継続」(アール)・「毎日仕事したい」(ハメコ。)
歌広場淳:最後に、おふたりから2025年の抱負をお聞きしたいと思います。
アール:『スト6』のシーンが広がっていくにつれて、さまざまな人が「格闘ゲームっておもしろい」と言ってくださっていて、「これまでになかったようなイベントを開きたい」と思っている人たちも多くいますよね。
そういった人やイベントに、今後もたくさん関われたらいいなと思います。だとしたら体が資本だから、しっかり体力をつけないと、と。幸い2024年は体調管理がうまくできたなという感覚があったので。
ありがたいことに自分のことを重鎮みたいに思ってくださる方もいらっしゃって、「うちのイベントなんかにアールさんをお呼びしてもいいのかな」と気遣ってくれたりもするんですけれど、「競技シーンしか実況しません」といった意識はまったくなくて、「どんなイベントでもこいつを呼んでおけばなんとかなる」という存在になることが理想です。
『スト6』の場合は、イベントを開催するにあたってカプコンさんの許諾を得ているかどうか。そこさえクリアされていれば、どんな突飛なイベントでもチャレンジしていきたいと思っています。今後も挑戦を続けていきたいですね。
ハメコ。:2025年の抱負としては、そろそろ自分のノウハウを残していく取り組みに着手していくべきなのかなと――。
アール:遅いよ! 遅すぎるってあなた!(笑)
ハメコ。:だって俺と同じような人なんていないからさ、ムリな話だってところもあるんだよ。
アール:ムリだとは思うけどさ、それでもやるべきだよ(笑)。
ハメコ。:うん。ムリは承知で、ある程度何かを残していけるようにやっていかないといけないのかなと、ちょっと考えていますね。心持ちであったり、技術面であったり、参考になる人がいるかはともかくとして残せること自体は多いとは思っているので。
歌広場淳:いや、ホントですよ。あの「こく兄」ですら本を出すとか言っている時代なんですから。
ハメコ。:うーん、そうね……。彼の本はまだ読んでいないからなんとも言えないんだけども。
アール:なんか、“こく語”(※4)辞典だってウワサを聞いたんだけど。そんなことないの?
※4……“こく兄語録”の略称。古豪格闘ゲームプレイヤーであり、現在は「REJECT」格闘ゲーム部門プロデューサー兼ストリーマーとして活動する「こく兄」の配信等の発言のなかで、とくにインパクトを残した言い間違いを語録として扱ったもの。
歌広場淳:えっ!? なんかゲーマーとして成り上がるためのノウハウ本とかなんじゃないかなと勝手に思っていたんですけど、違うのかな。
アール:それだったら読みたい!
ハメコ。:……あとはなんですかね。もっと、毎日仕事したいですね。
歌広場淳:いやいや、「SFL」にしたって自分の当番ではない回もプライベートで試合の配信をチェックしていたりするわけですよね?
ハメコ。:いや、足りてないなって思う。もっといろいろできるはずなのになって。なんかもう、意味ないんですよ。俺に休みなんて概念はないですからね。
歌広場淳:そうですよね。常に何かしらで稼働しているんだから。
ハメコ。:ああ、そういう意味じゃないんですよ。そもそも、(キャスター業を)仕事だと思っていないですからね。俺はゲームが好きなだけですから。家にいるかスタジオにいるかの違いだけで、しゃべること自体は日常だし。実際にキャスター席に座るとなったら事前の調べ物の厚みがちょっと増えるだけであって、仕事だろうが休みだろうがやっていることは一切変わらないんです。
だから、周囲から「もっと休んだほうがいいですよ」と気遣いの言葉をかけていただくこともあるんですけど、休みたいと思うんだったら最初からこんな生きかたを選んでいないです、という。
歌広場淳:なるほど! ハメコ。さんのその気持ち、僕もよくわかります。今回こうしてお話ができて、あらためておふたりの凄みがわかった気がしますね。固い話も砕けた話も含めて、いいお話をたくさん聞かせてもらいました。本日はありがとうございました!
・アール 公式X
https://x.com/papatiwawa
・アール0423 Twitchチャンネル
https://www.twitch.tv/aru_papatiwawa
・ハメコ。 公式X
https://x.com/hameko
・hameko Twitchチャンネル
https://www.twitch.tv/hameko
・歌広場淳 公式X
https://x.com/junjunmjgirly
・ゴールデンボンバーの歌広場淳 Twitchチャンネル
https://www.twitch.tv/utahiro0830