【ネタバレあり】『崩壊:スターレイル』Ver.3.0ストーリー考察 暗黒の潮やテクノロジー普及の謎…“行方不明”の星神がカギに?

 『崩壊:スターレイル』は1月15日にVer.3.0「再創紀の凱歌」を配信、新たな舞台「オンパロス」での開拓が幕をあけた。

 過去、雪に覆われた惑星「ヤリーロ-Ⅵ」、巨大な宇宙船に築かれたシルクパンク都市仙舟「羅浮」、宴の星と呼ばれる銀河の歓楽街「ピノコニー」で冒険を繰り広げてきた主人公たち星穹列車一同。今回訪れることになる永遠の地「オンパロス」は、現在のファンタジー作品にも大きく影響を与えている古代ギリシアや古代ローマの文化、そしてギリシア神話を下地としており、ある種オーソドックスなファンタジーなストーリーテリングである。そのためRPGに親しんでいるプレイヤーにとっては、「聞いたことがある」単語も多く、以前の羅浮やピノコニーよりもなじみのある舞台といえるのではないだろうか。

 オンパロスでの開拓クエストはVer.3.0~Ver.3.7までと、合計8バージョンに渡っての展開が予定されており、Ver.3.0で描かれるシナリオはあくまで起承転結の「起」にあたる。しかし、実際に遊んだプレイヤーとしては、その“なじみ深さ”を手放しそうになるほど、序盤から息もつかせぬジェットコースター的な感覚を覚えた。そこで本記事では基本的な追加要素や紹介は先行レビュー記事に任せつつ、オンパロスでのストーリーを振り返り、今後どのような物語が描かれるのか、そしてオンパロスという舞台と謎について考えていきたい。なお本記事にはVer.3.0のストーリーネタバレが含まれること、およびオンパロス編に大きく関わりがあると言われる『崩壊3rd』を未プレイのため、同作を下地とした考察ではないことを最初に留意してほしい。

『崩壊:スターレイル』Ver.3.0先行レビュー 便利アイテム実装に“可能性の獣”な新遺物…開拓者のQoLは上がり続ける

スペースファンタジーRPG『崩壊:スターレイル』のVer.3.0が1月15日より配信開始となった。リアルサウンドテックはメディア…

 オンパロスは星穹列車のアーカイブにも記憶されておらず、外界から観測できないとされており、開拓の星神“アキヴィリ”すら立ち寄ったことのない謎の天体である。列車の燃料不足に陥った星穹列車は跳躍のためのエネルギーを必要としており、未開の地を開拓することによって生まれる“開拓の力”によって賄おうとしていた。そんなさなか、ブラックスワンによって行き先として提案されたのがオンパロスだ。そういった事情から、主人公たちはオンパロスの地に降り立つことになるというのが、Ver.3.0までの内容だった。

 Ver.3.0冒頭、星穹列車のムードメーカーである三月なのかが謎の体調不良を起こし、主人公と丹恒のふたりで列車の一部を切り離して現地に向かうが、途中で撃墜されてしまう。命からがら「ヤヌサポリス」へと辿りついた彼らは、黄金裔(えい)であるファイノン、トリビーと出会い、ともに聖都「オクヘイマ」へと向かうことに。だが平和だと聞いていたはずのオクヘイマは「紛争」のタイタン「ニカドリー」の攻撃を受けていた。そこで開拓者たちは協力してニカドリーの分身体を退けると同時に天外からの客人として、黄金裔たちの神殺しに力を貸すことになる。

 オンパロスの住民は外の世界を知らず独自の文化を築いており、これまで物語に大きく関与してきた「星神」ではなく、タイタンと呼ばれる神が信仰の対象になっている。12柱のタイタンは世界や運命・生命を創造したと言われているが、天外から降り注いだ「暗黒の潮」と呼ばれる謎の現象によって狂気に陥り、現在は人間と敵対関係になっている。ファイノンたち黄金裔は「世を背負う」タイタン「ケファレ」が残した預言に登場した存在で、タイタンを倒し火種を手に入れることで神の座へつき、オンパロスを再創造することを目的としている集団だ。オンパロスには現在の「永夜」と、過去にあたる「黎明」という2つのマップが存在しており、「記憶」の運命を司る星神「浮黎」の一瞥を受けた開拓者の力で両者を行き来できるのが特徴。Ver.3.0でもオクヘイマを狙うニカドリーを倒すために、過去に赴きある人物と交流を結んだ結果、見事タイタン討伐をなしとげた。

 今後のVer.3.1以降のストーリーでは、おそらく今回同様に過去と現在を行き来しながらオンパロスの文化や謎に迫り、残りの「エーグル」「サーシス」「タナトス」との戦い、そして主人公や新キャラクター・ミュリオンと関わりをもつ「オロニクス」との交流が描かれるだろう。現状オンパロスという舞台に残されている謎は、「なぜメモキーパーの力を借りないと認識することができないのか」「記憶と知恵のほかに関わっている星神は何者なのか」「タイタンや暗黒の潮とはなんなのか」「なぜ自動翻訳ツール“共感覚ビーコン”を使用しなくても、オンパロス住民の言葉が認識可能なのか」という点だ。このようにタイタン退治という英雄譚と同時に、舞台そのものにも大きな謎が散りばめられているのが特徴であり、魅力である。本記事を書くにあたってゲーム内情報を整理するうちに、オンパロスに対するある推論に辿り着いたため、いちライターの妄言と思ってもらって結構だが、ここでひとつ紹介しておきたい。

 それは「オンパロスは仮想空間」というストーリーだ。実装済みのエンドコンテンツ「模擬宇宙」で獲得できる開発日誌にはそれぞれ星神の説明文が記載されているが、浮黎の開発日誌3には「其(「貪慾」のウロボロス)を育んだ暗黒の潮」と記載があり、オンパロスで発生している暗黒の潮とウロボロスには関係があることが示唆されている。また宇宙から見たオンパロスは無限の繰り返しを意味する「メビウスの輪」に酷似しており、星神ではなく神話としての自らの尾を噛む龍「ウロボロス」は、無限や死と再生のモチーフとして類似点が存在。そのため「記憶」の浮黎、「知恵」のヌースに続いて、オンパロスに干渉している星神は「貪慾」のウロボロスではないかと考察する。

 そしてウロボロスの開発日誌から、其は現在行方不明だとされている。ここからはやや飛躍した想像となるが、オンパロスはウロボロスが古獣として闊歩し、まだ星神が生まれていない黄昏戦争時代に滅んだ世界を、“消える運命にある「記憶」を保存する”浮黎がウロボロスごと記憶のアーカイブ世界「浄土」に保存。そしてヌースがウロボロス完全打倒のため、仮想空間(規模が大きな模擬宇宙)として演算・維持。終末「エスカトン」はウロボロスの封印が解かれる災厄で、星神ではなくタイタンが信仰されているのは、そもそも“まだ星神が存在していないから”ではないだろうか。

 さらに細かい要素としては、新たなギミックである時間の巻き戻し、ファンタジー世界にはそぐわない暗黒の潮のグリッチ表現、かつて人間だったエンドモ(虫)を発見した際に表示される顔文字、スターピースカンパニーも訪れていないのになぜか普及しているスマートフォンやカメラ。共感覚ビーコンがなくても言葉が通じるのはオンパロスに訪れた時点で仮想空間に組み込まれるからで、タイタンというのは言うなれば管理AIのようなシステムか。このように“そう考えようとすればそう思えるだけの情報”は、すでに提示済みと考えている。

 もしそれを前提とすると、これからはどのような構造で物語が展開するのだろうか。筆者としては『崩壊:スターレイル』公式YouTubeにヒントがあると見ている。Ver.3.0の楽曲を収録したEP動画「洞窟の寓話」には“洞窟を出た人々は二度と牢には戻らない。なぜなら、彼らはすでに「真実」を目にしてしまったからだ”と添えられている。この「洞窟」は古代ギリシアの哲学者プラトンが、自身のイデア論を説明するために用いた寓話「洞窟の比喩」のことで、簡単に説明すると洞窟に閉じ込められた囚人は背後にある火によって照らされた影こそが世界の真実だと思っている。だがある日ひとりの囚人が拘束を解かれて外界に連れ出され、初めて太陽に触れて本当の世界を認識し、これまで洞窟内で見ていた影は模倣だったと気づくというもの。

【崩壊:スターレイル】EP「洞窟の寓話」

 これを筆者の説に則りつつ対応させると「オンパロスの住民は自身が認識している世界を仮想空間だと認識していなかったが、開拓者がやってきたことによってオンパロスの真実に気づく」だろうか。そう考えるとアグライアたち黄金裔が「天外の存在を明かさないでほしい」と頼み込んできたのにも一定の理解が示せる。そうなるとオンパロス編の最後は、Ver.3.0においてゴーナウスにより「征途が偉大であるのも、叙事詩が雄大であるのも、この世のすべてのものに終わりがあるからだ」と示されたように、すでに滅び去ったオンパロスという世界と住民を受け入れるというものになりそうだ。いや、黄金裔たちはプレイアブルキャラクターの予定だが……という声もありそうだが、前例としてミーシャやギャラガーのように消滅等で列車を去った、あるいは列車を訪れていないキャラクターも実装済み。実際にアグライアが実装されてみないとわからないが、基本的に黄金裔はオンパロス限りのキャラクターになると予想している(もしアグライアが訪問客として、列車のソファーでくつろいでいたらそれはそれで面白い)。

 このようにつらつらと考察を並べてみたが、そもそも先述したようにオンパロス編はVer.3.0~Ver.3.7まで1年ほどかけて展開予定で、現在明かされている情報も極めて限られたものだろう。しかしこうして次のバージョン実装まであれこれと考察しながら待てるのは、『崩壊:スターレイル』の脚本が持つパワー、そして設定の芳醇さと懐の広さゆえである。Ver.3.0最後に姿を見せたミス・ヘルタの活躍にも期待しながら、さらなる更新を待ちたい。

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