連載:作り方の作り方(第十三回)
借金7000万円ディレクターが危険地帯に潜入…『不夜城はなぜ回る』などを手掛けた大前プジョルジョ健太×白武ときおが語る“映像制作のルーツ”
「真逆のタイプ」7000万円の借金を背負うプジョルジョと安全圏にいたい白武
白武:興味本位で走り出してしまうということは、将来設計とかは考えないタイプですか?
プジョルジョ:僕は「1年後にどうなっているかわからない」自分でいることにだけ期待をしているんです。中学の卒業文集にも「なにになっているかわからない自分でいてください」と書いていたくらい。だから5年後のことも、わからないのが楽しい。それだけは変わらないでいたいことです。
白武:普段、ギャンブルとかはするんですか?
プジョルジョ:ギャンブルはまったくやらないです。でも借金があるんですよ。7000万円くらい。
白武:え、なんの借金ですか?
プジョルジョ:新卒1年目のときにいろんな勧誘がきて、あんまり確認せずにハンコ押しまくってたら、ワンルーム投資をいくつも契約していたみたいで。だから会社を辞めたときに一番困ったのはその返済計画です。働かないとお金がないので、職を探しにハローワークにも行きました。
白武:会社を辞めた時点で『国境デスロード』は決まってなかったんですか?
プジョルジョ:はい。これが始まるまでは本当に無職で、仕事の当てもありませんでした。
白武:そんな状況なのにTBSを辞めたのは、本当に「思いついちゃったから」なんですか?
プジョルジョ:そうですね。
白武:まったく意味がわからない……。だって、TBSにいたら少なくとも借金を返す当てが少しは立つわけじゃないですか。辞めちゃったら、どうなるかわからないじゃないですか。
プジョルジョ:でも白武さんもフリーランスですよね? 最初の一歩ってそうだったんじゃないですか?
白武:いや僕は7,000万円の借金がないので。マイナススタートじゃないので。
プジョルジョ:そうか。
白武:7,000万円の借金についてはどう思ってるんですか?
プジョルジョ:一歩踏みだすときの足枷になっているとは思います。あと、人に言うタイミングが難しいんですよね。でもけっこう周りに言ってきたんで、もうここで公に言っちゃいました。隠してるわけじゃなくて、聞かれないから言わなかったくらいのことなんですけど。
白武:過去に貧乏だったときはありますか?
プジョルジョ:あります。僕の父親はもともと、大手電気機器メーカーで部長をしていたんです。でも会社で大規模なリストラがあって、父は「部下を15人切れ」と言われて。
そしたら「だったら俺がひとりで辞める」と、家族に相談もなく会社を辞めちゃったんですよ。本当に貧乏になりましたし、それから父はずっと無職です。
白武:後先考えないのは、お父さん譲りなんですかね。
プジョルジョ:そうかもしれないですね。でも僕は、人から影響を受けやすいんです。それに、影響を受けることが楽しい。『不夜城はなぜ回る』に出演していたのも、自分で取材して関係性を築いたからこそ話してくれることがあると実感していたからで、そうしていろんな影響を受けて、自分がどうなっていくかも楽しみなんです。
白武:ジャンプの主人公じゃないですけど、とにかくワクワクするほうを選んでいる感じがします。僕は逆で、ある程度プランを立てて積み上げたいタイプです。
プジョルジョ:そうなんですか?
白武:もちろん良い影響は受けていきたいんですけど、振り回されたくはなくて。僕だったら『国境デスロード』で行っているような危険地帯にはなるべく行きたくないですし、なんなら夜の歌舞伎町すら歩きたくないんですよ。怖いから。
プジョルジョ:そういうところへ行っても、ワクワクしないってことですか?
白武:いや、たとえば車のなかから眺めるとかならいいんですけど、歩くのは怖いです。興味がないわけじゃないけど、安全圏にいたいです。
プジョルジョ:じゃあ僕らは真逆のタイプですね。