歌広場淳のフルコンボでGO!!!
歌広場淳×千葉如水×望月うかる“格ゲーコスプレ”座談会 知られざるコスプレイヤーの世界に迫る
“原作再現”のための飽くなき研究心
歌広場淳:格闘ゲームって、キャラクターを動かす楽しみを感じやすいジャンルだと思いますし、思いどおりに動かせるようになることが強さにつながっていくのがおもしろいところだなと思っているんですけれども。
おふたりも格ゲーキャラのコスプレをするにあたって、あるいはお客様から写真のリクエストを受けるときに備えて、きっとゲーム内のキャラクターの動きを研究されているのだと思います。コスプレイヤーとして、コスプレするキャラの原作内での動きやポーズはどのように研究していくものなのでしょうか。
千葉:私は、とにかくトレーニングモードでたくさん動きを観察しますね。ただ、どれだけ研究を重ねてもブランカの“ローリングアタック”だけはどうしても再現できませんでした。
歌広場淳:そろそろ僕もツッコみませんよ(笑)。さすがの千葉さんでも、“ローリングアタック”(※1)の再現は難しかったかぁ~。
※1……ブランカの必殺技。体を丸めて回転しながら空中を水平に突進する。
千葉:あれは無理ですね。ウィッグが飛んでっちゃいます。
歌広場淳:無理な理由、そこなんだ!? ……ダメだ、完全にペースを握られている。千葉さんはブランカコスプレで写真をお願いしますと言われたときの、定番のポーズはあるんですか?
千葉:『スト6』のブランカのキービジュアルとしてよく見かける、口元に人差し指を当てながらブランカちゃん人形を持っているポーズはよくやらせていただいていますね。
歌広場淳:やはりそこは公式のポーズを忠実に再現するほうが、お客様からの反応もいいですよね。
実は僕も少し前に、ニコニコ生放送の『月刊ゴールデンボンバー』という番組で、ハロウィンの企画としてブランカの仮装をさせてもらったんです。そこで写真を撮ってもらうときに、とっさに“指ハート”をしたら別の意味でめっちゃウケてしまって。「ブランカは絶対にそんなポーズしない!(笑)」って。
僕の場合はハロウィンの仮装だから大目に見てもらえましたけど、公式の場だったりするとなおさら気を遣いますよね。
望月:私もリリーのランクをMASTERまで上げる過程で、プレイ中の動きは半年間ずっと見続けてきたので、動きかたの雰囲気やポーズのバリエーションなどは、かなり掴むことができました。
撮影のときは、ポカモガン(※2)を両肩に乗っけているポーズが一番リリーらしい雰囲気が出るのかなと思うので、それをやることが多いですね。両手を広げるようなポーズや、“クワガタ”(※3)とかは幅をとるので、リクエストをいただいたときだけ周りにぶつからないように気をつけながらやるようにしています。
※2……リリーが両手に持って戦う、棒の先に球がついた形状の武器。
※3……リリーの立ち中パンチの俗称。両手でポカモガンを前方に突き出す動作から。
歌広場淳:おお! まさに“クワガタ”のように、格ゲー用語で「これやってください」とか、「この技のモーションをお願いします」なんて言われたときにもすぐに対応できるところは、MASTERまでやり込んだ望月さんや、長年にわたって格ゲーコスプレを続けてきた千葉さんの強みになっているわけですね。
格ゲーマーの中には「あの技やってよ」なんて、悪気なく無茶振りしちゃう人とかいそうだもん。誰にでも格ゲー用語が通じると思ったら大間違いなんですけど、それを受け止めるだけの懐の深さがおふたりにはあるわけですから、それはお客様も喜びますよ。
ちなみに、この質問は個人的に僕が参考にしたいからお聞きしたいんですけど、コスプレイヤーさんと接する――たとえば写真をお願いするなどにあたって、「こういう風にしてくれたらうれしい・ありがたい」と思うようなことってありますか? よく聞くところだと、写真を加工したうえでSNSにアップするとかだと思うんですけど。
千葉:私はもう、SNSに載せてもらえるだけですごくありがたいなと思うんですけれども。若い子たちのあいだからは、「できればSNSに載せるときは加工していただけたらうれしいです……!」といった声を耳にすることもありますね。
歌広場淳:なるほど。あとはなんでしょう。「差し入れもらえたらうれしいです!」とかは、思っても言わないか(笑)。
千葉:たとえば一緒にツーショットを撮ってもらった後に、「最高のブランカです!」といったお言葉をもらえたりしたときは、飛び上がるほどうれしいです(笑)。
歌広場淳:たしかに、感想を言葉にしてきちんと伝えるのは大切なことですね……! 絶対に忘れないようにしたいです。望月さんからは何かありますか?
望月:私はYouTubeで、バトルハブを使った対戦会の配信もやらせていただいています。イベントで写真を撮ってくださった方が後日、「一緒にゲームもやりに来ました!」と来てくださったりするとめっちゃうれしいなって思います!
歌広場淳:それは素敵ですね! イベントで写真を撮らせてもらった後に、望月さん本人とオンラインで手合わせしてもらえるだなんて、ファンの方にとっても忘れられない思い出になると思います。
もしも歌広場淳が『スト6』コスプレをするなら?
歌広場淳:僕はもっとおふたりと仲良くなりたいと思っているんですが、コスプレイヤーさんとマブダチレベルで仲良くなりたいと思ったら、やっぱり僕もコスプレをするのが近道だったりしますかね?
千葉:いいですね! 何か同じ作品のキャラクターどうしで、“あわせ”ができたりしたら。
歌広場淳:やはりそうですよね。参考までにお聞きしたいのですが、たとえば『スト6』だったら、僕は誰のコスプレをやったらいいと思います?
望月:ケンですね!
歌広場淳:やっぱり、僕自身が使っているキャラクターが一番しっくりくるわけですね。
望月:使い手としてのイメージももちろんありますし、たぶんポーズとかもとりやすいと思いますよ。
歌広場淳:ああ、たしかにそうですね! 勝利ポーズとかパッと頭に思い浮かびます。というかアイツ、勝利ポーズ簡単だわ(笑)。……でも、安心しました。もしも「ブランカ」とか言われたらどうしようかと。先日の生放送では、ハロウィンの仮装ということもあって、スタッフさんがあえてイメージから外れたキャラをインパクト重視で選んでくださっていた部分があったと思うんですけど。
こういうキャラ選びとその人自身のギャップの悩みって、コスプレイヤーさんにもあるんじゃないかなと思いました。たとえば格ゲーマーだと、『ストリートファイターV』のころにウメハラさんが使用キャラをリュウからガイルに変更したことで、ファンから「リュウを使い続けてほしかった!」って声が上がったことがあったんですよ。
おふたりも、「本当はこのキャラのコスプレをやりたいんだけど、周囲から求められているのはこのキャラなんだよな……」といった形で悩んだようなことはありますか?
千葉:正直ありますね(苦笑)。“あわせ”のお誘いをいただいた際に、お願いされたのが“巨漢の高校生キャラ”だったんですよ。
巨漢キャラは大好物なんですけど、この歳で“高校生キャラ”は大丈夫かなって。最終的にはテーピングでめちゃくちゃ顔をつってなんとかしたんですけれども。
歌広場淳:なるほど。“あわせ”となると、主催者の方から「このキャラクターをお願いします」と依頼される形になるんですね。そうなると、全体のバランスとかも考えなければならないでしょうし、なかなか大変そうですね。
千葉:そうですね。友だちの友だちくらいの方から、「はじめまして。〇〇の“あわせ”をやりたいと思っているんですが、△△できますか?」といった形でオファーをいただくこともあります。
歌広場淳:それでも、千葉さんとしては「ありがたいお誘いだし、やりたいな」って思ったわけですよね。
千葉:もちろんです。そういったオファーには、可能な限りお応えするようにしていますね。
歌広場淳:千葉さんのコスプレに対する真摯な姿勢が伝わってきます! 望月さんも似たような経験はありますか?
望月:私も、主催で集めたい子から「うかるはこのキャラが似合いそうだから、これをお願いできないかな」というお話をもらうことはよくあります。
自分が「やってみたい!」と思うキャラと、他人から見て「このキャラはうかるに似合いそう」と思うキャラのイメージって、どうしても違ってくるものだと思っているので。千葉さんと同じで、そこで嫌な気持ちになるようなことはないです。
主催してくれた子も、私がその作品を好きだと知ってくれていたから誘ってくれたわけですし、「似合いそう」とまで言ってもらえたのも素直にうれしかったので、「ぜひ用意したいな!」と思いましたね。
「あの人に〇〇のコスをやってほしい!」談義で大盛りあがり
歌広場淳:以前、プロゲーマーの板ザン(板橋ザンギエフ)さんと、『スト6』にコラボ参戦したテリーが「似てる!」と話題になりましたよね。
あの後、板ザンさんの所属チームであるDetonatioN FocusMeの生放送番組内で、実際にテリーのコスプレを披露してくれていましたが……。
おふたりのなかで、「プロゲーマーの〇〇さんにあのキャラのコスプレをやってみてほしい!」とパッと思い浮かぶような人はいますか?
千葉:それで言うと、どぐらさんにベガをやってもらいですね! 外見もちょっと似てる感じがするので。
歌広場淳:えぇっ、似てるかな……? どこがそう思います?
千葉:顔の輪郭がある程度似ているというか、十分寄せられる範囲だと思います。僕も過去にベガをやったことがあるんですけど、ベガの顔の輪郭が、どうしても僕では出せなかったんですよ。
ちなみに、まだそのときのベガの衣装は保管してあるので、機会があったらどぐらさんにお譲りしたいです(笑)。
歌広場淳:うわ、そう聞くとたしかにやってもらいたいなと思っちゃいますね。白のカラーコンタクトとか入れたら、マジでオーラ出そうな気がするもん。
望月:私はべてぃちゃんこと桃井ルナさんに、ジュリをやってもらいたいです。絶対に似合うと思います!
歌広場淳:同じく使用キャラつながりですけど、望月さんに挙げてもらってハッとしちゃいました。なんでその組み合わせが一番に思い浮かばなかったんだろうって。めちゃめちゃ似合いそうですよね。
ちなみに僕は、ネモさんによるベガのコスプレを見てみたいです。ベガというキャラクターとネモさんのラスボス感が合っていると思うんですよね。
千葉:ああー! ネモさんのベガコスもいいですね!!
望月:うんうん、わかるかも!
歌広場淳:あと性別が違っちゃうんですけど、ひかるくんにアキのコスプレをやってもらいたいです。ひかるくんのアキに対するキャラ愛はものすごく深いんだろうなと常々感じていますし、性別の壁なんて軽く飛び越えて似合っちゃうんじゃないかなと。
望月:若手の方々だったら、個人的には立川さんにエドをやってもらいたいです!
歌広場淳:たしかに、タチ(立川)の髪型だったらエドもすぐに再現できそうですね。むしろ、意識して寄せてるまであるのか……?
望月:以前、立川さんがまだ長髪だったころの配信中に、ご自身で「俺、エドと同じ髪型やし」みたいなことを言っていた記憶があるので。ぜひやってほしいですね。
今後コスプレしてみたいキャラクターは?
歌広場淳:今後、おふたりがコスプレをしてみたいキャラクターがいたら、この機会にぜひお聞きしたいです!
千葉:「餓狼伝説」シリーズのマルコ・ロドリゲスをやってみたいです。最新作の『餓狼伝説 City of the Wolves』にも登場が確定している、極限流空手使いの熱血漢なんですけど。
あと、それとは別に『鉄拳8』の三島平八はやるつもりで、絶賛製作中です。
歌広場淳:平八もようやく『鉄拳8』に参戦しましたからね。以前のときに苦労した思い出もあるけれど、そのときのノウハウもあるし、「やりたいんだからしょうがないよね!」といったところでしょうか。
望月:私にとっては格ゲーキャラも新たな挑戦でしたし、今後もいろいろなゲームのコスプレをやってみたいと思っています。格ゲーキャラで挙げるとしたら、エレナはやってみたいですね。
歌広場淳:そうか、エレナも今後『スト6』にプレイアブルキャラとして参戦予定ですもんね。
望月:そうなんですよ。あと、ちょうどいまリリーのOutfit3の衣装を作っているので、完成次第やりたいです。
歌広場淳:おお、リリーのOutfit3といえば、めちゃめちゃお腹があらわになっている衣装ですよね。
望月:そうですね(笑)。お腹を出す衣装も全然やりますよ! 前にジュリちゃんのOutfit3をやったのですが、あれもかなりお腹が出るやつだったので。
ただ、リリーの場合は肌面積が増える=ファンデーションを塗る範囲が広くなるぞってことなので、そこが大変ですね。衣装自体は白いので、衣装にファンデがつかないように工夫しないといけないです。
歌広場淳:難しい問題ですよね。衣装にファンデをつけない方法があったら僕も知りたいです……。どうしてもついちゃうんですよね。僕もヴィジュアル系をやっているから、肌の色を変えるときの苦労がなんとなくわかります。
「小物から再現」がコスプレの第一歩
歌広場淳:もしも、「最初からコスプレはハードルが高いと思っちゃうけれど、そんな自分でもどうにかしてキャラ愛を表現したい!」という悩みを抱えている方がいたとしたら、どんなことをオススメしますか?
たとえば、僕のファンにリリー使いの女性がいるんですが、その方が頭だけリリーになった状態で対戦会に来てくれたことがあったんですよ。「ウィッグだけでも作ってみました!」的な感じで。
こういうことだって、「コスプレの第一歩だよ!」と背中を押してもらえたら心強く感じる人がいるかもしれませんし。最初はやはり、公式グッズとして出ているものを身につけるあたりが始めるのがいいんでしょうか?
望月:たしかに公式グッズを使うのは始めやすいし、いいと思いますよ!
歌広場淳:あとは、ブランカだったら首に黄色いスカーフを巻いてみるとかでも「この人はブランカが好きなんだな」ってわかったりしますよね。
千葉:いいですね。小物から再現して、ちょっとずつ寄せていくのはアリだと思います。
歌広場淳:ですよね! そうやって一歩を踏み出してみて、「もっと本格的にやってみたいな」「衣装を用意してみたいな」となったら、おふたりに聞けば全然教えますよという話でもすもんね。
千葉&望月:なんでも聞いてください!
歌広場淳:誘導尋問のようになってしまってすみません(笑)。でも、我々格ゲーマーも「このキャラの動かしかたが知りたいです」と聞かれたら全然教えますよ、って雰囲気があるので。
きっとコスプレイヤーさんたちも格ゲーマーのように、優しい人たちの集まりなんだろうなって勝手にシンパシーを感じてしまったんです。
コスプレイヤー業界にもプロライセンス制度が必要!?
歌広場淳:最後に、ちょっとお固めの質問で申し訳ないんですけれども、これからの格闘ゲーム業界に対して、コスプレイヤーさんの観点から望むことがあれば教えてください。
千葉:本当に個人的なお話なんですけど、最近の格ゲーキャラは顔立ちがお綺麗なキャラクターが増えている気がするので、ここらでひとつ原点回帰をして、男臭いキャラクターを増やしてもらいたいなと。それで人気が再認識されれば、僕としてはコスプレのレパートリーが増えるのでありがたいですね(笑)。
歌広場淳:最近の格ゲーには美形キャラが多すぎて、コスプレイヤー泣かせであると(笑)。なるほど、たしかにそうですよね。
望月:私としては、「これまでコスプレを見る機会がなかった」という方がコスプレに触れる機会がもっと増えるといいなと思います。
ゲーム業界も同じだと思うんですけど、ライト層の方が「これはなんだろう?」と一歩を踏み出すきっかけになるような場が多くなると、いまよりもっともっと盛り上がると思うので。
たとえばRAGEさんのように、ゲームのリアルイベントなどでコスプレイヤーさんが公式に起用される機会がもっと増えたらうれしいですね。
歌広場淳:おお! それってつまり、“プロコスプレイヤー”という話になってきますよね。ゲーマーがゲームを職業にしたいと思ってプロゲーマーという職業ができていったように、コスプレイヤー業界でも似たようなことが起きているってことなんでしょうか?
望月:いえ、プロゲーマー業界のようにプロライセンス制度があったりするわけではなくて、コスプレイヤーさんの中でも趣味として活動している方と、コスプレイヤーとしてお仕事をもらいたいと考えている方とでハッキリ別れているところはあると思うんですけれど。
ただ、私自身は企業所属のコスプレイヤーとしてお仕事をいただいている部分もあるので、そういう意味でゲーム業界を一緒に盛り上げるためにコスプレイヤーさんを使ってもらえたらうれしいなと思っていますね。
歌広場淳:なるほど! となるとやはり、今後はコスプレイヤー業界でもプロライセンス的なものが整備されていくかもしれないなと個人的には思います。というのも、今回おふたりのお話を聞いていて、コスプレイヤーさんの作品に対する愛であったり、コミュニティへの理解であったり、コスプレの技術的なノウハウだったりはものすごいなとあらためて感じたので。
たとえば企業さんがゲームイベントを盛り上げたいと考えたときに、有名なタレントさんやモデルさんにコスプレを依頼するという方法もあるとは思うんですけど。そこで千葉さんや望月さんのようなガチのコスプレイヤーさんを起用すれば、「ブランカのこのモーションってカワイイですよね!」とか、「実際にリリーで対戦してもらえませんか?」といった形で盛り上がれるわけじゃないですか。それってイベントを主催した会社さんにとっても、イベントを訪れたお客様にとってもうれしいこと――価値があることですよね。
だからこそ、企業としてよりオファーをしやすくなるひとつの基準や説得材料としてもそうだし、コスプレイヤーの方々が職業として活動しやすくなる環境を整えるという意味でも、“プロコスプレイヤー”という考えかたが方向性のひとつとしてアリなんじゃないかなと、勝手ながら思ってしまったんです。
最後に長くなってしまって申し訳ないのですが、そんなわけでおふたりの活躍には今後も注目していきたいと思います!
イベントなどでお会いした際は、ぜひ一緒に写真をお願いします。あ、おふたりのコスプレが見事すぎてパッと見じゃ気付けない可能性もあるので、そのときは言っていただけたらうれしいです(笑)。
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