渋谷のおトクな「クーポン」に隠された驚きのテクノロジー 『Pontaパス Station』で体験した“さりげないけど重要な最新技術”

 KDDIが10月2日より約1,500万人が利用している有料会員サービス『auスマートパスプレミアム』を『Pontaパス』にリニューアル。2日に行われた会見の模様は先日お伝えしたが、その場でも案内されていた『Pontaパス Station』なる期間限定のポップアップストアもZeroBase渋谷で3日より開催中。渋谷駅前にあり、編集部からもほど近いということで同ストアに足を運んできたのだが、そこにはおトクな体験&良質なエンタメがあり、さらに裏側にはとんでもないテクノロジーが採用されていた。

 リアルサウンドテック編集部では、その“テクノロジー”の部分にフォーカスを当て、同ポップアップストアのすごさを伝えていきたい。

 場所はSHIBUYA 109を眼前にした交差点、と書けば伝わるだろうか。伝わらなくても行けばPontaの大きなイラストがあるので、一目でここが『Pontaパス Station』だとわかるだろう。

 『Pontaパス Station』の目玉の一つは、1Fの「Ponta パスラウンジ」にある『Pontaパス』の抽選機。コンビニのように棚に陳列されているPontaパッケージの限定アイテムやアーティストとのコラボグッズをゲットできるほか、渋谷近隣の店舗で使えるクーポンや、その場で揚げたての『からあげクン』がもらえるという大盤振る舞いだ。

 しかもこの抽選。『Pontaパス』に加入する必要も、メールアドレスやパスワードを登録する必要もなく参加でき、取得したクーポンもデジタルベースでしっかりと管理できるのだとか。『Pontaパス』自体もKDDIだけでなく、他キャリアユーザーでも加入でき、お得なクーポンなどを利用できるのは知っているが、それでもサービスの利用には登録が必要だ。とすると、今回のシステムは、一体どのような仕組みで成立しているのか。現場にいたKDDI株式会社 事業創造本部 Web3推進部・川本大功氏に聞いたところ、今回のシステムはブロックチェーンを活用したNFT技術が使われているのだという。

 NFT、と聞くと一部の読者の方は「投資・投機目的のもの」というイメージをいまだに持っているかもしれないが、そこは訂正させてほしい。NFTの本来のあり方は「非代替性トークン」として「二つとないデジタルデータ」を発行できることにあるため、価値がどうこうというよりも「この発行したデータを誰が持っていて、どのように使われたか」を把握することに適している。つまり、今回のようにクーポンを発行し、それが使われたかどうか(1度クーポンとして利用済みと記録されれば、次から使うことはできない)を判定するためには、非常に相性の良い技術なのだ。

 ここまではWeb3の技術が普及してきた段階で、さまざまな有識者に議論されてきた点だが、今回の『Pontaパス Station』はさらに先を行っていた。それが「ブラウザウォレットの自動生成」と「Webベースでの運用」だ。

 まず「ウォレットの自動生成」について。NFTを活用するためには、データを格納するための場所=ウォレットが必要となってくる。このウォレットは『MetaMask』や『Coinbase Wallet』など様々な種類があり、KDDIは自社サービスである『αU』のひとつとして『αU wallet』なるウォレットサービスも所有しているのだが、今回の『Pontaパス Station』では、特定のウォレットサービスに依存させず、このクーポン施策のためだけの独自ウォレットを裏側で自動発行し、そこにクーポンを格納しているのだ。

 さらに「Webベースでの運用」についても、本来なら『Pontaパス』の宣伝なのだから、アプリをダウンロードさせてそこにクーポンを付与することが一般的だろう。しかし今回はWebブラウザでクーポンを保有する形にしている。クーポンには、同じURLを叩く&連携している店頭のQRコードを読むことで、何度でもアクセスが可能。さらにそのページはウォレットそのもののため、先述したようにクーポンのデータも自動で保存されており、一度使えばいくら他の端末でバックアップコードから復元しても使用後のステータスが維持されている。

 筆者は抽選機を体験し、川本氏から話を聞いたうえで「今回きりの施策にしては手が混みすぎている……」と思い、様々な仮説を立てることにした。ピックアップした2つの注目ポイントに共通しているのは、特定のサービスに依存しないこと。つまりKDDIは今回の成功例をもとに、別のプロジェクトに発展させることも考えているのではないか。さらにNFT技術を活用した施策については、来たるCookieレス時代へ向けての取り組みの一環なのではないか……。

 そんな内容を川本氏に当ててみたところ「いずれも正解です」とのこと。ただし、前者については試験段階のため決まったクライアントがいるわけではないこと、後者についてはCookieレスを見越したものでもあるが、それ以上に「生成したウォレットやそれを使用した履歴はブロックチェーンのサーバーとユーザー側にしか残らない=サービス側に残らず、個人情報も取得しない」ため、セキュリティ面でも企業側が負うリスクが少ないことを教えてくれた。たしかに期間限定の施策や実験的な取り組みで個人情報を取得し、結果的にその扱いに困ってしまう、という事例は少なくないので、このような形でユーザーは個人情報をわたさず、企業側はリスクを負わずに施策が打てるのはWin-Winだ。

 また、Webベースであること&特定のウォレットに依存しないことは、ウォレットを指定したり外部サービスの受け入れを拒んだりする企業も導入しやすくなるし、アプリ内のWebビューでも見れるため、他のアプリ内に仕込むことも可能だという。

 さらに、今回のシステムは、KDDI Open Innovation Fund 3号の出資先でもある株式会社 Pocket RDの「Digital Double」を活用しているとのこと。そうなってくるとこれは『Pontaパス』どうこうの話ではなく、KDDIのWeb3とオープンイノベーションのショーケースとして『Pontaパス ステーション』を楽しむ、というのも面白い。

 もちろん、クーポンや商品プレゼント以外にも、2Fの「Pontaパス ラウンジ」ではPontaパス会員なら猿田彦珈琲の美味しい一杯&お菓子がもらえたり、3Fの「Pontaパス ステージ」 ではアーティスト&クリエイターのトークやパフォーマンスが楽しめたり、B1Fの「KAWAII LAB.@Pontaパス Station」ではアンバサダー&1日店長を務めるKAWAII LAB.所属グループのサイン入りTシャツやパネルを含むポップアップを見ることができたりと、要素は盛りだくさん。そちらは「リアルサウンド」の記事を参考にしてみてほしい。

■サービス詳細
『Ponta パス』
URL:https://prcp.pass.auone.jp/ppas-start/index.html
月額料金:548円

■「Ponta パス Station」ポップアップストア概要
開催場所:ZeroBase 渋谷
開催期間:2024年10月3日~10月13日
営業時間:一般オープン 12:00~18:00
限定イベント 18:00~21:00
特設サイト:https://prcp.pass.auone.jp/popup-store/index.html

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