“おばあちゃんと猫”動画が500万回再生超 現代人が求める癒しコンテンツになった理由とは

 TikTokで、96歳のおばあちゃんと猫の様子を投稿しているアカウントがある。庭いじりをしているおばあちゃんに、猫がじゃれて遊んでいる。ただそれだけだ。その動画が512万回再生されている。

 ほかには、おばあちゃんが猫に「な、クロ、お利口だな」と、縁側で“クロ”と呼ばれる猫に、ひたすらお利口だと声をかけている。この動画は122万回再生されている。

 そして、おばあちゃんのお尻にクロがアタックしている動画は303万回再生となっている。おばあちゃんは「ひょこひょこやってるから、猫がバカにしてらぁ。な!」と楽しそうに笑っている。(数字は2024年10月時点)

 
 
 

 この“おばあちゃんと猫”シリーズを投稿しているのは、「hinamomocat ちぃ」というTikTokユーザーである。YouTubeにも「絵描きとおばあちゃんと猫のちぃ」というチャンネル名で動画が投稿されており、概要欄やInstagramから、投稿者はこのおばあちゃんの孫である、イラストレーターのあらいくみこ氏だということがわかる。

おばあちゃんと猫

 なぜ“おばあちゃんと猫”は、SNSでここまで人気を集めているのだろうか。要因はいくつかあるだろうが、大きな理由は“懐かしさ”だろう。とはいえ、動画に登場するおばあちゃんは96歳。住んでいる家も「築130年以上の古民家」と記載がある。かわいらしいおばあちゃんと猫。大自然のなかにある、趣たっぷりの古民家。これらの条件が揃った環境を、実際に体験している人はそう多くはないだろう。体験したことのない景色のはずなのに、なぜ多くの視聴者が懐かしさを感じるのだろうか。

 体験したわけじゃないのに、なぜか懐かしさを感じてしまう作品は多い。たとえばゲーム作品の『ぼくのなつやすみ』。子どものころ、汗まみれ泥だらけになりながら遊んだ“あの夏”をリアルに体験できる。“夏休み”という終わりが見えている切なさも、小学校のときに感じていた気持ちを追体験できる。

 映画でいうと『サマーウォーズ』。長野の田舎に親戚一同が集まる、というところから物語は始まる。“夏休みに親戚が集まる”というイベントは夏のお盆を彷彿とさせ、青空×畳×自然という組み合わせも、多くの人が夏の原風景に感じているのではないだろうか。

 コンテンツ以外にも、昭和レトロや平成レトロという社会現象もそうだ。実際に昭和を体験しているわけではない平成生まれ、平成のときに青春時代を過ごしたわけではないが、懐かしさを感じている若者世代。レトロな喫茶店のクリームソーダやプリンを見て、「そうそう、懐かしいってこういうことだよね」と、体験していなくても共通の認識として懐かしさを楽しんでいる。

 “おばあちゃんと猫”には、そんな本能に訴えかけてくる懐かしさ、安心感が詰まっている。たとえ動画をみている人が都会生まれ都会育ちだったとしても、自分のなかの温かくて懐かしい原風景が“おばあちゃんと猫”の動画とマッチすると、癒され、感動するのではないだろうか。

 くわえて、TikTokというハイテンポで大量の情報が流れてくるプラットフォームだからこそ、“おばあちゃんと猫”の動画は、いい意味で異質さが際立っている。なんの展開があるわけでもない、自然の音だけが聞こえるなかでおばあちゃんと猫が変わらない毎日を過ごしている。コメントには「永遠に続いて欲しい時間」「涙が出そうなのは何故だろう」と心を打たれた声があるなか、自身の祖父母のことを思い出している視聴者もかなり多いようだ。この動画をきっかけに、祖父母に会いに行った人がいる可能性も大いにある。

 そんな素敵なきっかけになったり、大事なことを思い出させてくれる“おばあちゃんと猫”。ぜひ一度覗いてみてほしい。そしておばあちゃん。どうか元気に長生きをしてほしい。

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