チャゲアス結成秘話やラジオを超えた“熱狂”まで……赤坂泰彦×Chageが語り尽くした“あの頃といま”

 『赤坂泰彦のMillion Nights』『THE夜もヒッパレ』をはじめ、数々のラジオ・テレビ番組で活躍してきたDJ・赤坂泰彦。彼はいま、発信の舞台のひとつに“音声配信プラットフォーム”を選んでいる。

 そのプラットフォームとは『Voicy』で、赤坂はこのアプリを使用して『赤坂泰彦のラジオグラフィティー』という、自身のキャリアや映画・音楽などのエンタメにまつわるトーク番組を毎週のように配信。8月7日配信回では、赤坂ともかねてから親交のあるChageが登場し、対談を行ったことで話題になっている。

 ChageはCHAGE and ASKAとして1979年8月25日にシングル「ひとり咲き」でデビューしてから、今年で45年を迎える。また、1984年に“石川優子とチャゲ”名義で発表した「ふたりの愛ランド」発売からも40周年で、後者は二人の縁を繋いだ曲でもある。というのも、先述した『赤坂泰彦のMillion Nights』で赤坂がリスナーのリクエストで「ふたりの愛ランド」をオンエアすると、同曲をあまりかけてほしくなかったというChageが、パーソナリティを務めるラジオ番組『ラジ王』にて、赤坂のかつて所属していたバンド・東京JAPの楽曲を流して対抗。そこから番組の垣根を超えたオンエア上でのメッセージのやり取りや“乱入”などがあり、ラジオ史に残るエピソードとして語り継がれているのだ。

 2人は番組内でも当時を振り返ってくれたのだが、ここで初めて聞くようなエピソードが続々。一つだけピックアップすると、2人の“やり合い”に参加するリスナーからのFAXがあまりに多いため、ラジオ局のロール紙は二人の放送がある回には新しいものに変えられていた、というエピソードは、二人の番組を超えた交流の熱量があまりに高いことを証明していることの示唆となった。

 その後も、チャゲアス時代の話や当時の裏側などが面白く語られ続ける。デビューのきっかけとなったヤマハ主催の『ポプコン』こと『ポピュラーソングコンテスト』でソロ時代の二人が出会ってユニット結成に至った話や、『夜のヒットスタジオ』に吉田拓郎の代打として登場し、スターへの階段を駆け上がることになった二人はなぜ代打として登場できたのかという裏話、独特なライブ演出のなかで起こった“事件”、Chageが8月にリリースする新アルバム『飾りのない歌』などについて、広く話が及んでいった。

 リアルサウンドテックでは、収録後の2名にインタビュー。対談の感想や赤坂がVoicyを始めた理由や、音声配信の魅力などについて話を聞いた。

ーーまずは収録後の率直な感想をお伺いできればと思います。

Chage:こうやって二人で喋るのは、やっぱり楽しいし嬉しいよね。気も遣わない関係性だし。

赤坂:ありがたいですね。一番最初は僕みたいな放し飼いの犬が血統書付きの犬に噛みついたような形で向かっていったのに、それを広い器で受け止めてくださって、こうして今があるわけですから。

Chage:そんな時代もあったねえ(笑)。ラジオなどの場所でも対談やインタビューとなったらある程度プライベートと仕事はしっかり切り分けて話すんですが、ここまでプライベートなテンションで話したのは初めてですよ。

赤坂:それこそChageさんの今回のツアーのタイトル『ChageLiveTour 2024~ちゃげっていうひと~』のように、ひとりの人間としてのChageさんという人の魅力が伝わるものになったと思います。

ーー対談のなかでは『赤坂泰彦のMillion Nights』と『ラジ王』の”やり合い”についての話がありました。あのエピソードを改めて振り返ったことは、これまであったのでしょうか?

Chage:プライベートでは話してましたけど、こうしてみなさんにお届けする形でしゃべったのは初めてかも。90年代のラジオは本当に独特な文化でしたし、生放送を含めて「言っちゃったものはしょうがねえ」という雰囲気があって、そういうエンタメはラジオ以外になかった。いまはネットを中心に当たり前になっていることですが、そうした生の文化や熱量に若者が食いついてきたんだと思います。

赤坂:当時のラジオはいわゆるノンコンプライアンスだったけど、かといって「品が悪い」わけではないんですよね。お互いにどう汲み取るか、遊ぶかが試されていたというか。

Chage:それがある種の“姿の見えない面白さ”なんだと思います。声を聞いて、この人どんな服を着てるんだろう、どんなメガネをかけてるんだろう、みたいなことを想像して、自分たちで楽しんだりメッセージを送ったりし合うことも、音声の魅力の一つですよね。

赤坂:今は本当に発信する場所を選べるという意味では自由な時代でもあるし、ネットで24時間いつでも意見が言えるけど、とはいえコンプライアンスは厳しくなっている。基本的にパーソナリティにはモラルが求められていて、いろんなメッセージが来るなかでジャッジしながら喋らなければならない。顔を見せずにラジオネームだけだから言いたいことが言えるだけの人もいるので、そこで吊し上げて個人の特定をするようなことは許されていないわけですよ。「その人だけに伝わればいい」と思ってメッセージを送ることもあるし「読まなくていいから」と温かいメッセージをくださる方もいる。音声での発信については、コンプライアンスが話し手に委ねられているといえるかもしれません。

ーー赤坂さんは2021年8月からVoicyで『赤坂泰彦のラジオグラフィティー』を放送されています。新たなプラットフォームへの挑戦を決めた理由と、約3年間トライしてみての印象を聞かせてください。

赤坂:きっかけは至ってシンプルで「その時代のもの」に自分もチャレンジしていきたいと思ったからです。あとは、地上波ラジオが窮屈になってきていたことも大きいかな。選曲もできないなら、自分の基本であるトークをする番組をネットで出来ればと思っていて、ポッドキャストをするためのプラットフォームを探していたんです。そんな時に緒方さん(緒方憲太郎/株式会社Voicy 代表取締役)のコメントを見るようになって、すごく熱意を感じて、ここで配信したいと思い、番組をスタートさせました。

ーー新しいことをやろうとまったく未知のプラットフォームに飛び込むというのは、キャリアのある方であればあるほど難しいように感じるのですが、なぜそこまで前向きに新たな挑戦ができるのでしょうか?

赤坂:まったく違うものだと思っているからこそ、面白いと思えたのでしょうね。実際に始めてみて、届けるにあたっての概念も変わりました。これまでラジオでは不特定多数、日本の端から端まで届けるイメージだったり、メッセージを読んだりするときはどこかの誰か一人に届けるつもりで話してましたけど、特定のプラットフォーム上で配信するというのは、非常にパーソナルだと思いました。ここを選んで、この番組を選んでいる人しか聞いていないという状況が前提としてあって、そこからどれだけ初めての人たちに聞いてもらえるようにするかが大事だと思います。

Chage:俺はウォーキングの時に聞いてるよ。

赤坂:実際にChageさんからその話を聞いて番組で話したら、リアルタイムのコメントに「えっ、どこを歩いてるんですか!?」ってコメントがついて……今じゃねえよ!って思わずツッコんでしまった(笑)。

Chage:そういうツレみたいな距離感もいいよね。

関連記事