今年も熱戦が繰り広げられた『にじさんじ甲子園2024』 数万人が見守ったドラマを振り返る

 バーチャルタレント事務所・にじさんじによる人気企画『にじさんじ甲子園2024』が、2024年8月10日から12日にかけて開催された。

 本企画は、2024年7月に発売された『eBASEBALLパワフルプロ野球2024(以下、パワプロ)』内のゲームモード「栄冠ナイン」を3年間プレイし、にじさんじに所属するタレントを基にしたオリジナル選手を作成してチームづくりにはげみ、その後オリジナルチームとして戦わせようという大会である。

 個人VTuberとして活動している天開司が2019年8月に開催した企画『Vtuber甲子園』を前身とした大会は、2020年に開始して今年で5回目を迎え、毎年大きな盛り上がりをみせてきた。今回は記録に残すという意味も込め、今大会についてまとめてみようと思う。

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 まずは前段から振り返っていこう。2024年7月10日に『にじさんじ甲子園2024』がにじさんじ公式SNSから告知されると大きな反響を呼ぶことになった。理由としては、開催決定という事実だけではなく、発表された監督役になるタレントらの顔ぶれにあった。

 同企画に毎年参加していた椎名唯華を筆頭に、過去に出場していた小野町春香、五十嵐梨花の3人が揃って出場することがアナウンスされた。だがその他の5人の出場メンバーは、叶、花畑チャイカ、エクス・アルビオ、不破湊、フレン・E・ルスタリオと、過去大会に出場した経験のない初参加の面々が並んだのだ。

 彼ら5人が人気タレントではあることはもちろん、ファンからすれば「まさか出場するとは」という意外すぎる選出に、まさに“サプライズ出場”といった格好となったのだ。

個性の出るドラフト会議で大盛り上がり

 7月17日には、主催を務める舞元啓介と天開司の2人とともにドラフト会議ならびにルール説明をおこなう配信がされた。約20万人もの視聴者が見守るなか、やはり注目されたのは150人以上の面々がどのチームへと割り振られるかが決まるドラフト会議であった。

 1~3巡目は入札制度(フリップを使って獲得希望選手を出し合い、かぶった場合はくじ引き)、4~7巡目はウェーバー制(順々に獲得希望選手をあげて獲得)、8巡目以降はルーレットにて決定する形で進んだ。

 事前に「うちの高校はこうしたい」と選手選びに一定の方針をもたせる高校もあった。昨年でいえば、ニュイ・ソシエールの勇者育成高校がわかりやすい例だろう。ニュイはファンタジー要素・RPG要素が強めのメンバーを選んだと話しており、英雄、魔王、悪魔、エルフ、女神など高校名に似合うメンバーをドラフト指名していた。

 そして今大会も各監督がさまざまな狙いを持ってドラフトを進めていったわけだが、ドラフト前の情報戦では社築の指名がささやかれる中、8チーム各々がそれぞれ1位を指名。その後2位、3位と順々に指名していくと、すこしずつ狙いがハッキリとしていくことになった。

にじさんじ甲子園2024 ドラフト会議【 #にじ甲2024 】

 1位指名には、これまでの過去4回大会とおなじように人気のあるメンバーに集中した。誤解がないように補足しておくが、ここでいう「人気」というのは、見ているリスナー側の体感やチャンネル登録者数に依った人気というよりも、出場する監督陣たちからみての評価・期待の部分が大きい。端的に言えば、親しい仲でイジりやすいメンバーが選ばれやすいということだ。

 「仲が良くてイジりやすい」面々を選んでいったのは、椎名唯華と花畑チャイカの2人。椎名が社、魔界ノりりむ、卯月コウと指名すると、花畑はリゼ・ヘルエスタ、加賀美ハヤト、石神のぞみと獲得していく。その後花畑は加賀美と同期である夜見れなと葉加瀬冬雪を指名し、加賀美・夜見・葉加瀬の同期トリオ・SMC組をチームに組み込むことに成功。ファンの期待に応えた。

 また叶も仲が良い面々を選んでおり、葛葉、剣持刀也、レオス・ヴィンセントと、これまでの活動で関係の深い3人をドラフトで指名した。さらにウェーバー指名では伏見ガクを指名したことで、叶&葛葉のChroNoiR、剣持&伏見の咎人、4人揃った「咎ノワール」がチームに集まることになったのだ。

 ChroNoiR、咎人、SMC組はファンにとっても非常に人気を集めるグループであり、これまでの数年にわたって「いつか1つのチームに集まるだろうか」と注目されていたわけだが、まさかこの1年で一気に集まるとは。これには女性ファンを中心にSNSで大きな反響があった。

 この流れで狙い通りと行かなくなったのがフレン。同期であるイブラヒムを指名するもくじ引きの末に外してしまい、自身の推し戌亥とこを1位で指名した。

 彼女の同期であるさんばか、4位指名した鷹宮リオンと自身が関わる▽▲TRiNITY▲▽の集結を狙うも、それぞれ別チームに取られたことで阻まれてしまった。

 だがその後に町田ちまを指名し、戌亥・町田によるボーカルユニット・Nornisをチームに集めることができた。

 レインボール高校の小野町は月ノ美兎・樋口楓のかえみとコンビを筆頭に、2人との関わりが深くなりつつある壱百満天原サロメ、『にじさんじフェス2023』でダンスを披露した神田笑一&ヤン ナリによるかみなりコンビ、「ふみ」という言葉繋がりでコラボしてきた文野環&フミによるふみのとふみを獲得。

 さらに神田とフミはビジュアルを手掛けているイラストレーター(ママ)が一緒であり、VTuber業界でいえば“兄妹関係”にあたる。結果を見れば、小野町のドラフトは関わりや繋がりを意識したドラフトになった。

 五十嵐もこの方向性にあわせ、自身にとってあこがれの先輩である本間ひまわりを1位に指名し、本間の同期である笹木を2番目に指名。3番目に指名したのが周央サンゴだったのだが、じつは五十嵐は「デビュー前からの友達だった」と初出し情報を明かし、集まった監督・視聴者を驚かせた。

 どのチームもかなり細かく同期組・ユニット・グループを意識していたなかで、直近で催されていた『にじさんじGTA』からの縁もかなり関わっていた。

 五十嵐は自身が同企画で共にギャングとして活動していたラトナ・プティ、ミラン・ケストレル、星導ショウ、叢雲カゲツらギャング仲間を一気に指名。叶も同企画で気に入っていた魁星を“ぜってぇ助けてやるからな枠”として選び、遊び心を見せてくれた。

 今回のドラフトの中でも、特にコンセプトが前面に表われていたのが英雄高校を率いるエクスの選出だった。1位にはイブラヒム、2位にローレン・イロアス、3位にはアルス・アルマルと仲が良く関係の深い3人を選ぶと、「英雄アカデミー高校」という名前のとおり英雄(≒ヒーロー)として、「ヒーロー」をプロフィールにしている新人のOriens4人を順々に獲得していった。

 その後のルーレット選出では、佐伯イッテツ、北見遊征とVTAを中心にした2023年以降デビューの男性陣がズラリと並び、『にじさんじGTA』でエクスと繋がりが深かった警察組の多くが結集。

 それにくわえて、異世界RPG感の強いメンバーが偶然にも揃っていき、昨年のニュイに似た「ファンタジー系異世界」なメンバーも揃うことに。「長きに渡って仲が良い」「プロフィールでシナジーがある」「直近で親しくしていた」という3つの軸が揃ったのだ。

 ちなみにニュイは昨年エクスを英雄としてチームの核に据えていたが、ルーレットを通してニュイが選出され、昨年からの繋がりが偶然にも表現されることになった。

 このルーレットによる選手選出が今回は冴えに冴えており、エクスのチーム同様に叶のチームには『にじさんじGTA』で仲良くなった栞葉るりと鏑木ろこコンビが選出されつつ、鏑木と関係の深い海妹四葉、セラフ・ダズルガーデン、風楽奏斗とVTAのメンバーが大集合。

 フレンのチームには女性メンバーが大量に選ばれ、長尾景、ましろ爻、浮奇・ヴィオレタ、クロード・クローマーク以外のメンバー17人が女性という結果に。メンバーも星川、鷹宮、山神カルタ、奈羅花、天宮こころ、イ・ロハといった明るくてギャルな面々から、戌亥、町田、天ヶ瀬むゆ、物述有栖、ドーラといった物腰柔らかで落ち着きある面々と、非常に色濃くバラエティ豊かなメンバーが揃った。

 エクスと同じく監督自身の狙いに沿った選出が特徴的だったのは、不破湊のギラギラホスト高校。不破自身がホストをバックグラウンドに持っているということで、ホストらしい美麗な男性陣を選んでいった。

 1位指名には主催かつアラサーの舞元啓介を選んで和ませつつも、三枝明那、渡会雲雀、小柳ロウ、榊ネス、ルカ・カネシロ、甲斐田晴と女性人気の高い面々を次々と選出。

 ルーレットでは早瀬走、来栖夏芽、魔使マオ、ソフィア・ヴァレンタインらが選ばれたのだが、この面々は『にじさんじGTA』のキャバクラと何かと縁のあった面々でもあり、ルーレットのイタズラだったとしか言いようがない。

 こういったチームメンバー選び・色付けによって、二次創作イラストが非常に多く投稿されたことも、今大会の特徴的な出来事だった。ホストのようにギラついた男性陣、ファンタジー要素のつよい面々が一同に介した集合絵、「この人のこういう服装はピタリと合うのでは?」というモノまで、多彩なファンアートが生まれたのだった。

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