デルがAI搭載PCシリーズ「Copilot+ AI PC」3製品を発表 AI PCは生成AIの普及を進めるのか?

デルが「Copilot+ AI PC」3製品を発表

  デル・テクノロジーズはAIを搭載したPCシリーズである「Copilot+ AI PC」を発表、そのメディア向け新製品説明会をおこなった。その概要をレポートしたい。

 この日は、デル・テクノロジーズのコンシューマー&ビジネスプロダクトマーケティング統括本部の松原大氏と、クライアント・ソリューションズ統括本部の白木智幸氏が登壇。さらに日本マイクロソフトから、デバイスパートナーセールス事業本部の佐藤久氏が登壇し、製品説明などがおこなわれた。

 「Copilot+ AI PC」シリーズの特徴は、なんと言ってもディープラーニングなどの処理に特化した計算ユニットであるNPU(ニューラル・プロセッシング ユニット)を搭載したことだ。

 これまで本格的なAIモデルの動作は、オンライン上のサービスを使うか、大型かつ大量に電力を消費するGPUを搭載したマシンが必要だった。計算能力だけで言えば全体的にGPUのほうが優れているが、NPUは小型かつ消費電力が少ないため、日常的にカバンに入れて持ち運べるマシンのローカル上でAI処理を行えるようになった。

 この日紹介されたモデルは全3種類。デルのAI PCとして最上位モデルにあたる『New XPS 13』、エントリーモデルとなる『New Inspiron 14 Plus』、そしてビジネスユースを想定した『New Latitude 7455』だ。

 今回は一般ユーザーに向けた『New XPS 13』と『New Inspiron 14 Plus』を紹介する。

NPU搭載でオフラインでもAI機能が使い放題

 『New XPS 13』は「AI PC」シリーズの最上位モデルにあたるマシンだ。

ポート類はUSB Type-Cが左右に1口ずつ


 キーボードやトラックパッド、ファンクションボタンの凹凸を排し『XPS13』の特徴的なボディを使用。大きな変更点はメインの処理ユニットにQualcomm Snapdragon X Elite 12コアのARMプロセッサを搭載していることだ。モニターはタッチ操作に対応したFHD+もしくは、3K OLED「Tandem OLED」を選択可能。最大メモリーは64GB、ストレージは2TBまでカスタマイズ可能なハイスペックモデルとなっている。

 AI搭載モデルということで、気になるのはバッテリーの持ちだが、バッテリーテスト(1080pの画質でNetflixを連続再生)では、FHD+モデルで27時間、3K OLEDモデルで16時間という記録を出した。巨大なACアダプターを必要とするGPU搭載のゲーミングノートにはできない芸当だろう。価格は24万9980円〜37万8240円となっている。

『New Inspiron 14 Plus』はコストパフォーマンスに優れたエントリーモデル。

 プロセッサは当初Snapdragon® X Plus 10コアのみを販売予定だったが、ユーザーからの要望に応えるかたちで「Elite 12コア」も選択可能となった。モニターはQHD+を搭載。メモリーは16GB固定。ストレージは512GB、1TBのSSDから選択できる。バッテリーは最大15時間連続稼働。価格は18万9800円〜26万4760円と『NEW XPS 13』より一回り安い。

 『New XPS 13』、『New Inspiron 14 Plus』いずれも、MicrosoftがCopilot+ PCの要件として定める、40TOPS以上のNPU、16GB以上のメモリー、256GB以上のストレージ、をクリアしている。

「Copilot+ AI PC」でなにができる?

 そもそもCopilot+ AI PCではなにができるのだろうか。

 まずCopilotキー自体は、Copilotを呼び出すためのショートカットキーと考えていただきたい。例えばテキストの要約や翻訳をしたい、アイデア出しをしてほしい、簡単な調べ物をしたい、といったときにCopilotキーを押すことから全てが始まる。マイクロソフトの佐藤氏は「自然言語でシステムと会話できる新しいUI」だと考えてほしい、と説明している。

 「リコール」は楽しみな機能の一つだ。画面のスクリーンショットを数秒ごとに撮影し、残しておく機能だ。モニター上部にスライドバーが表示され、指でなぞって遡ることができる。記録に残しておきたくない画面は個別にURLを設定することもできるとのことだが、セキュリティの問題から実装は延期されている。

説明会資料より

 「ライブキャプション」は同時通訳機能だ。もともとは聴覚障害のある人に向けて研究されてきた技術だが、NPUが搭載されることで、高精度での同時翻訳が可能となった。

説明会資料より

 他にも、ユーザーの手書きイラストを清書してくれる「コクリエイター」、テキストから画像生成を行う「イメージクリエイター」といった機能も実装される。

 マイクロソフトは今後すべてのサービス、製品にAIを搭載させ、最短、最速で常にAIにリーチする環境構築を目指しているという。今後出荷されるすべてのPCにはCopilotキーが搭載されるのもそのためだ。こうした機能をNPUの搭載によって、オフライン状態で即座に呼び出せるようになったのが大きな強みであり、今後のAI普及の一つの鍵となるのではないだろうか。

実際、「AI PC」は求められているのか?

 総務省が今年7月に発表した調査(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/index.html )によると、個人で生成AIを利用している人は、国内で9.1%にとどまる結果となった。一方で、「今後利用したい」と答えた人は65%に上り、普及が進んでいるとは言えないが、必要なものと認識はされている、といった結果だ。

 AI PCが、人々にとって最もハードルの低いAIの入口となるならば、AI PCの認知拡大と普及によっては、日本国内における生成AIの利用率の上昇に寄与することも考えられる。

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