35年ぶり新作『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』に高まる期待 求められるシナリオの質と“現代のゲーム体験”

 「ファミコン探偵倶楽部」シリーズの久々の最新作『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』の発売が約1か月後に迫ってきている。

 同タイトルは、失われたシリーズの空白期間で増幅されたファンの期待に応えられるだろうか。求められる要素について考える。

人気テキストアドベンチャー「ファミコン探偵倶楽部」シリーズが久々の新作が登場

プロデューサー坂本 賀勇が語る『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』

 「ファミコン探偵倶楽部」シリーズは、1988年発売の『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』を初作とするテキストアドベンチャーシリーズだ。これまでにナンバリング作品として3作が展開されており、上述の第1作と第2作『ファミコン探偵倶楽部PartII うしろに立つ少女』はさまざまなハードに移植もされている。2021年には両作のリメイク版がNintendo Switch向けに発売され、こちらも話題を呼んだ。

 「ファミコン探偵倶楽部」シリーズにおいて、プレイヤーは空木探偵事務所で探偵助手として働く少年主人公の視点から、その周囲で巻き起こる殺人事件の真相へと迫っていく。特徴となっているのは、コマンド選択によって物語を進めていくシステムと、事件に怪談話を結びつけた独創的でオカルトチックなシナリオ。第1作では「死人の蘇り伝説」が、第2作では「血染めの少女の霊」が、第3作では「落ち武者の亡霊伝説」が主題に据えられており、それらを元に展開される各作品のシナリオの完成度の高さは、同シリーズ最大の魅力ともされている。

 2024年8月29日に発売予定の『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』は、1997年にリリースとなった第3作『BS探偵倶楽部 雪に消えた過去』以来、27年ぶりとなるシリーズ最新作。同作が衛星データ放送と連動した「サウンドリンクゲーム」として展開されたこともあり、純粋なゲーム作品としては第2作以来、35年ぶりの新作とされる場合もある。長い空白期間を経て発売を迎えるナンバリング第4作がシリーズの個性をきちんと受け継いでいるのかという点に注目が集まっている現状だ。

 対応プラットフォームはNintendo Switchで、価格はパッケージ通常版が6,578円、ダウンロード通常版が6,500円(ともに税込)となっている。また、パッケージ版ではコレクターズエディションとして、「調査ファイル」と題された設定資料集やスペシャルサウンドトラック、1/2スケールの証拠品レプリカを同梱した特別版(税込9,878円)も展開される。

『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』にファンが期待する要素は?

笑み男

 『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』の存在が明らかとなったのは、2024年7月10日のこと。任天堂の公式YouTubeチャンネルに突如「笑み男」と題された19秒のティザー映像が投稿されたことが同タイトルの最初の告知となった。動画の内容は、『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』の物語においてカギを握るキャラクター「笑み男」が登場するだけというシンプルでミステリアスなもの。その雰囲気からホラージャンルに分類されるタイトルであろうことはわかったが、それ以外の大半の情報が謎に包まれていたことから、この告知はフリークたちの関心を集めた。

 1週間後の7月17日には、任天堂の公式Xアカウントから正式に「ファミコン探偵倶楽部」シリーズの続編であることが発表となり、2024年8月29日発売予定であることが明かされた。そのタイミングで公式サイトもオープン。その後、時間が経過するにつれ、続々と情報が明らかになってきているという経緯がある。

 正式発表後はニンテンドーeショップやマイニンテンドーストア、全国のゲーム取扱店、各オンラインショップで予約の受付もスタートしている。7月14日~7月20日の週には、Amazonの予約数ランキングで『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』を抑え首位に輝くなど、シリーズの人気に恥じない注目を集めている現状だ。おそらく今後もリリース日が迫るなかでフリークたちの食指を刺激する情報が明らかとなってくるのだろう。そのたびに「ファミコン探偵倶楽部」シリーズの久々の新作は話題性を強めていくことになるはずだ。

 このようにして少しずつ熱狂の渦を大きくしている『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』。新作の発売を心待ちにしていたファンが同タイトルに期待するのは、どのような要素だろうか。

 最初に挙げるべきはやはり、シリーズの伝統にのっとった秀逸なストーリー展開だろう。現実の事件と都市伝説をうまく絡めたそのシナリオは、「ファミコン探偵倶楽部」の代名詞であり、最大の個性でもある。新作を手に取るフリークの多くは、直近Nintendo Switchで発売されたリメイク作品をプレイしている可能性が高いため、否が応でもその出来が過去のシリーズ作品と比較されていくことになる。万が一、見劣りするようなクオリティであれば、タイトルはもとより、シリーズ全体の評判を貶めることにもなりかねない。一定以上、欲を言うなら「シリーズ最高の出来」と言われるほどのシナリオのクオリティが求められていくはずだ。

 また、グラフィックや音楽、システム面の進化も望まれるのではないか。これらはゲームの歴史が長く続くなかで最も大きく変貌してきた要素だ。シリーズにとって27年ぶり(あるいは35年ぶり)の新作であるからこそ、こうした箇所における変化が過去作品との比較点になっていくのだろう。特にUIは、現代の作品が昔のそれに比べて優れている部分のひとつであると考えられる。コマンド選択式というオーソドックスなシステムを持つ「ファミコン探偵倶楽部」シリーズだけに、ストーリーへの没入を邪魔しない、ストレスのないゲーム設計に期待したいところだ。

 もし今回発売となる新作が一定の評価を獲得することがあれば、長い間を空けることなく、続編が制作される可能性もあるのではないか。ファンが本当の意味で期待するのは、『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』の成功の先にある、シリーズの存続や台頭なのかもしれない。

 『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』の発売までは、あと1か月ほど。期待に胸を膨らませつつ、その日の訪れを待ちたい。

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