舞台は風光明媚な“ダンジョン街” 社会生活に疲れた冒険者の物語『Dungeons of Hinterberg』プレイレポート

 7月19日、Curve Gamesより『Dungeons of Hinterberg』が発売される。

 本作は社会人生活に倦んだルイーザが、突如としてダンジョン街に変貌したHinterbergという観光地に足を運び、冒険者や地元の人間と交流しながらダンジョンを踏破していくという3DアクションRPGだ。

 発売に先駆けて、ダウンロードキーをいただいたので、一足先にゲームを遊ばせていただく機会を得た。果たして、ルイーザの冒険はいかなるものか? ぜひともチェックしていただきたい。

Dungeons of Hinterberg - Announce Trailer

昼はダンジョン攻略、夜は仲間とお喋り

 『Dungeons of Hinterberg』は、司法修習生としてのキャリアをスタートさせたものの、早速社会人生活に疲れを感じているルイーザという女性が、Hinterbergに足を運ぶところから始まる。

 オーストリアのアルプスにあるHinterbergは、かつては斜陽に差し掛かりつつあった観光地だったが、ある日突然ダンジョンが発生したことにより、一躍脚光を浴びた。魔法やモンスターも同時に発見され、地元民は大慌てで安全性を確認し、観光資源として利用することを画策したのだ。このあたりのドタバタ・ロー・ファンタジー劇は、作中のキャラクターの会話から拾っていけるので、特に問題なく頭に入ってくる。

 先輩冒険者やガイドに言われるがままにダンジョン探索を経験し、文字通りの非日常を浴びて少々情緒不安定になる彼女だが、街の人々と交流することで、徐々に自分らしさを取り戻していく……といった内容だ。

 ゲームのサイクルはわかりやすく、昼はダンジョン攻略、夜は買い物や仲間とのコミュニケーションという2パートに分かれている。

 昼のうちは、雪山や登山道など大まかに四つに分かれているHinterbergの各エリアを巡り、ワープポータルを探して、25個もあるダンジョンを次々に踏破してくのが目的だ(ダンジョンの最後にスタンプを押すブースが置かれているのがグッド!)。

 各エリアでは専用の魔法を覚えられ、その魔法を駆使してワープポータルを見つけるパズルが用意されている。また、ダンジョン内にも頭を捻る仕掛けがいくつもあり、もちろん、剣を主体とする近接戦闘も存在している。いわゆる「3Dゼルダ」的な遊びがあると考えてもらえれば大体わかるだろう。

 夜になると、街で武器・防具やプレゼントを購入したり、街の人間たちと会話したりできるパートになる。『ペルソナ3』以降のコミュニケーションを想像してもらえばわかりやすい。

 誰と話すか、何をするかによって、主人公を構成するパラメータ「名声」「娯楽」「馴染み」「くつろぎ」が増加する。これらのパラメータが一定以上ないとイベントが進行しない場合があるので、なるべく満遍なく上げていきたいところだ。

 ほかにも「たまねぎ祭」といった奇祭が開かれるなど、スケジュールによって大型のイベントが発生することもある。目まぐるしく変わるHinterbergの街を見落とさずに過ごしていこう。とはいえ、せっかく世間を忘れて別天地に来たというのに、社交に勤しんで逆に疲れてしまうようだったら、スパや映画館でゆっくり過ごすのも乙なものだ。

風光明媚な土地と、ユル~い戦闘……そしてほのかに展開されるストーリー

 本作の目玉は何と言ってもその街並みだ。

 スタイライズドされたビジュアルで描かれるHinterbergとその周辺の景色は、ビデオゲームに登場するあらゆる観光地を凌駕すると言っていいほど、説得力のある美しさを見せる。

 べったりと塗られた緑、突き抜けるような青空、可愛らしい建物や車……スクリーンショットを撮る手が止まらないこと間違いなしだ。ロイ・リキテンスタインが多用したドット表現のようなトーンの貼り方にも注目したい。

 ただし、戦闘システムはそこまで奥深いものではない。モンスターと遭遇すると、一帯が枠でくくられて戦闘エリアとなり、そこで単対多のバトルが始まる。

 基本的にはロックオンして一匹ずつ落としていき、敵の攻撃が来たらローリングで回避するという昨今の3DアクションRPGの王道を往くスタイルだ。魔法を使うためにMPを消費し、特技にはクールタイムがあり、またチャームという装備品を付け替えることで主人公の性能も変化するといった趣向はあるが、戦闘自体に目覚ましく面白いギミックがあるわけではない。

 筆者は通常の難易度で遊んでいるが、敵に敗北することはなかった。しかしながら、ここが観光地であるというフレーバーを考えると、命を賭けた鍔迫り合いが起きるのは物語や世界観とズレてしまうので、これくらいのユルさがちょうどいいとも言えるだろう。

 ストーリーについては、かなり面白い作りであると言える。

 寂れた観光地であったHinterbergに降って沸いたチャンスを掴もうとする町長やホテルの支配人、観光客のマナーを気にする現地のガイド、とにかくうるさいからみんな出て行ってほしいと思っている地元の子ども、そしてここで何かを成し遂げてやろうと色めき立つ冒険者たち……。

 彼らは十人十色の考えを持ち、主人公とキャンプファイヤーでお喋りを交わす。そのセリフは丁寧に翻訳されており、文意が理解できない箇所はなかった。おとぎ話を楽しんでいた子どものころに戻ったような楽しい感覚と、とはいえ目の前の仕事を誰かがこなさなければならない大人のツラさを、両方味わえるという奇特でユニークなゲームだ。

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