新時代の“メディアのかたち”とは? 『技研公開』で発表された気になる技術をピックアップ

『技研公開』の気になる技術をピックアップ

フィルターバブルも解決か? “シンカ”を続けるディスプレイ

 次に紹介するのは、ARグラス型のニュース掲示システムだ。スマートフォンやタブレット、PCなど現在のデバイスでは掲示範囲(表示領域)がディスプレイサイズに限られているため、ユーザーが自身でカテゴリーなどを切り替えなければならない。ARグラスであれば、ユーザー周辺の広い空間に多くのニュースを掲示できる。今回紹介された掲示システムでは、事前に自然言語処理でニュース記事の特徴を抽出し、関連性の高いニュースが近くに配置されるマップを自動生成する。

 ARが多くのニュースを掲示してくれるため、ユーザーが意図していないニュースにも出会う機会が生まれ、興味のある情報しか掲示されないフィルターバブルの解決にも期待ができる。また複数のユーザーが同じニュース記事を同時に見られる機能も実装しており、ユーザー同士でコミュニケーションを取ることができるのもユニークな点だ。

 NHKはこうした「ディスプレイの制約から逃れる技術」を研究する一方で、裸眼で立体視できるディスプレイなど、既存技術の開発も進めている。公開されたディスプレイの仕組みはこうだ。

 透過型の液晶パネル2枚を用いて、1枚めは縦縞模様のものを高輝度のバックライトの前に置く。その前に置いた2枚めには特別なパターンに変換した要素画像を表示する。この組み合わせで立体視映像が表示されることになる。なお1枚めを白、2枚めに普通の画像にすると通常の映像になり、1枚めの一部を白にすると、立体視と同時に表示できる。

 さらに「ディフォーマブルディスプレイ」の開発も進んでいる。これは素材がゴムできたディスプレイで、折りたたんだり膨らませたりすることが可能である。配線の素材には液体金属を使用しており、伸縮にも対応できる。

 この技術は将来、視聴デバイスが生活空間の様々な場所に組み込まれることを想定して研究されているもので、自動車や乗り物の座席・天井を覆うもの、体にフィットするウェアラブルなものといった具合に、さまざまなアイデアが披露された。

 こちらの技術は、屋内というより屋外での活用でより楽しめそうだ。立体視を含め、街頭ビジョンの映像とそれらに対応したデバイスの映像とでコラボするなど、応用に関しても様々な用途が期待できる。

 前述したイマーシブメディアについても、フィルターバブルの問題だけでなく位置情報にもとづいて街中のイベントや事件の詳細などをタグクラウドのような感じで瞬時に知ることができるのであれば、ユーザーにとっては悪くない話である。

 これ以外にも、さまざまな技術が公開された『技研公開2024』。公式WEBサイトでは本稿で挙げた技術のアーカイブ映像を視聴することもできるので、“未来のメディア”がどうなるか気になる方はぜひチェックしてみてほしい。

■関連リンク
技研公開2024「技術で拓くメディアのシンカ」

〈画像クレジット:NHK サムネイル:Pixabay〉

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