筋トレ嫌いなパーソナルトレーナーが人気YouTuberになるまで 片倉岳人の異色な経歴に迫る
「僕もできるから君もできるでしょ?」自分とお客様の“当たり前”は違う
ーーパーソナルトレーナー兼YouTuberとしての活動を始めたきっかけを教えていただけないでしょうか?
片倉:六本木の方にジムを構えていたので、その集客を兼ねてというのが大きいですね。最初は、よこしまな気持ちでした(笑)。
ーー片倉さんがYouTubeチャンネルを開設された2019年は、現在と比較すると、ビジネス層がそこまでYouTubeに参入していなかった印象です。動画投稿に目をつけた理由を教えてください。
片倉:もともとはブログをやっていたんです。だから、ブログにあげる記事の台本を作って、それを動画に転用しちゃおうくらいの感じでしたね。1つの努力で2つの成果が欲しいみたいな。だから、初期の動画はブログっぽいものが多かった気がします。
ーー動画投稿を続けるなかで、ターニングポイントのようなものはあったのでしょうか?
片倉:ターニングポイントをあげるなら、動画投稿のなかでというよりは、トレーナーとしての体験が大きいです。お客様に対して、「僕もできるから君もできるでしょ?」といった感じで押し付けてしまうことが多くありました。常に運動してきた僕のなかの“当たり前”と、これから頑張ろうとしている人の“当たり前”の基準の違いに気づけませんでした。だから、そんな考え方は良くないと気づいてから、YouTubeに対する捉え方も変わり、登録者数も伸びていきました。
ーー片倉さんが発明された動画フォーマット「三流、二流、一流」の“三流”の考えに近いですね。
片倉:実際、過去の自分を三流と認識していますね。根底にあった思考だからこそ作れるコンテンツではあります。
ーーそうなんですね。コンテンツを作る上で、具体的に参考にされたYouTuberさんや動画はいらっしゃいますか?
片倉:Fラン大学就職チャンネルさんは、すごい勉強になりました。いちばん影響を受けている感じがします。『銅の剣をなんで売らないんですか?』(※)という長編動画があるんです。利害関係とか一番刺さったのはそれですかね。かなり影響を受けた感じがします。
(※)『銅の剣をなんで売らないんですか?』とは、「Fラン大学就職チャンネル」の動画であり、同氏による小説。中世風ファンタジー世界を舞台として、勇者たちが最初に立ち寄る村で、最良の武器などではなく銅の剣までしか販売しないシステムに対して疑問を抱いてしまった商人見習いが、このシステムを是正しようとする物語。
ーーえぇ、驚きました!(笑) 片倉さんのYouTubeとは、チャンネルのタイプがかけ離れているので……。
片倉:情報源は同じ分野でないことが多いんです。異文化の方が学ぶものがあったりするので。だから、YouTubeもダイエット系や筋トレ系はあまり観ないです。コミュニケーションに悩んで、学びたいと思ったときも、子育ての本を読んでみたりとか、ちょっとズレたところで学びを得ようとする節があります。
ーーなぜ、子育ての方なのでしょうか?
片倉:コミュニュケーションを学びたいと思って手に取った本は、僕にとって都合のいいものになりがちです。思い込みも乗っかると思うし。異文化の情報源の方が、思わぬところから自分の課題を解決できる情報が得られる場合もありますね。
ーーなるほど……。面白いインプット方法ですね。
片倉:研究してやろうというよりは、楽しんで観ている感じで、義務感がないんですよね。たとえば、映画鑑賞も僕にとってはインプットになっていて。これ、なんで面白いんだろう? とか考えて、頭のなかでごちゃごちゃかき混ぜるのが楽しいです。ドラマのなかでは、『古畑任三郎』がすごく好きで、表情が面白いなとか、行間でどう伝えるかとか。そういった部分が、動画上での演技にも生かされている気がします。