『崩壊:スターレイル』で描かれた「永遠に続く日曜日」とは 「週休7日」を掲げるサンデーのモチーフと今後

週休7日を掲げたサンデーは“復活”するのか

サンデーの“復活”は今後描かれるのか

 ところで、メインストーリーにおけるサンデーは、主人公たちに立ちはだかり敗北する。その後のサンデーは行方がはっきりしておらず、彼がどうなったのかが明かされぬまま物語が帰結している。

 プレイアブル化に関しても、バージョン2.2まで実装されておらずバージョン2.3の新規実装キャラクターにも予告されていない。もちろん、これまでメインストーリーに深く関わるキャラクターで実装されなかったケースは実在する。なので、サンデーがプレイアブルキャラクターとして実装されないままの可能性は、十分にあり得る。

 しかし、筆者はサンデーが今後“復活”を描かれ、プレイアブル化する可能性に期待している。そして、十分にあり得るとも思っている。

 理由のひとつは、サンデーがキリスト教をモチーフにしたキャラクターである(だろう)ということ。そもそも、サンデーが謳う「日曜日=何もしなくていい日」という論は、キリスト教において日曜日が安息日であることからきている。

 またサンデーは敵として立ちはだかる際、「『ハルモニア聖歌隊』ディエス・ドミニ」というボスとして登場する。「聖歌隊」はキリスト教における賛美歌を歌う集団を指す。

 そして、戦闘中に獲得できるバリアは「光の中を歩んで」という名称である。さらに、追加されたアチーブメントにも「私たちが光の中を進むなら」とあり、これは『新約聖書』ヨハネの手紙第一1:7からの引用だ。

 ほかにも、ディエス・ドミニ(サンデー)が使う大技「初めに言葉ありき」と「初めに行為ありき」は、それぞれ新約聖書と、それをもじったゲーテの戯曲『ファウスト』からの引用だろう。技発動時のカットインも、ミケランジェロが旧約聖書の一場面を描いたといわれる絵画『アダムの創造』を意識した構図になっているように見える。

ミケランジェロ・ブオナローティ『Creación de Adán(アダムの創造)』(画像:パブリック・ドメイン)

 『アダムの創造』の構図に関してはこんな考察もできる。戦闘中、サンデーは「神が人を作ったのではなく、人が神を作ったのだ」と語る。『アダムの創造』では、最初の人類であるアダムに神が命を吹き込む場面を描いているとされる。しかし、この技のではアダムと神の配置が逆になっており、サンデーの思想を反映させて「神に人が命を吹き込んでいる」ようにしているのであろう。

 サンデーがキリスト教モチーフであること。そこに何らかの意味や意図があるとすればなんだろうか。

 ひとつは、キリスト教における重要な出来事である「復活」を示唆するものが考えられる。

 キリスト教の復活と合わせて、今後の展開を予想してみよう。キリスト教における復活は3日後とされるが、ゲーム内で合成素材として使われる「安逸」とサンデーのボス形態で書かれているテキストも、3日という日数と関連性がある。「安逸」のフレーバーテキストには以下のような一文が記されている。

「スマホの電源も切ってしまおう。月曜日になんで連絡付かないのって聞かれたら、スマホが家出して、やっと戻るよう説得できたんだって答えればいい」

 さらに、サンデーのボス形態のフレーバーテキストを見てみよう。

「ハルモニア聖歌隊」を基盤に、「秩序」と「調和」の力で織り成した殻。その中では生まれたばかりの神が眠っている。運命は長い夜に始動を始め、形而上の退治は子供時代の夢を囁きながら、夜明けの到来を虚しく拒む。

 気になるのは眠っている点や夜明けの到来を拒んでいる点で、あきらかに「安逸」を意識した内容になっている。前述した復活までの3日という日数は、「安逸」のフレーバーテキストで触れられている金曜日から月曜日までの日数とも合致する。

 このふたつの関連性と、サンデーがメインストーリー後に行方不明である点も踏まえれば、彼は文字通り「安逸(=何もしないでぶらぶらと暮らすこと)」のときを過ごしており、「永遠の日曜日」を超えて月曜日という“現実”に向かっている最中であるということが伺える。

 「たかがアイテムのフレーバーテキストが、今後のヒントになりえるか」と疑問に思う人もいるだろう。だが、実はこうした伏線の張り方は過去にも前例があるため、可能性としては十分に考えられる(ご存じの方もいるだろうが、「開拓進行計」のことだ)。

もしもサンデーが前を向くのならば、彼が選ぶ新たな「運命」に注目したい

 今後のストーリーでサンデーの「月曜日」を描くのであれば、プレイアブル化はそのタイミングになるであろう。筆者個人としては、考察を抜きにしてもサンデーのプレイアブル化はぜひ実施してもらいたいと思っている。

 人々の苦難を救いたいと願う高潔な精神の持ち主であり、その考えを分かりやすく伝えようとして俗物的な「週休7日」という表現を持ち出すお茶目さ。

 メインストーリー中は切迫した状態に置かれていたサンデーだが、平常時の彼は真面目でありつつもたまに面白いことを言い出す人物像なのではないかと期待してしまう。ときどきロビンと一緒にイベントにも出演して、シリアスかつシュールな笑いを生み出してほしい。

 そして、サンデーが実装されるのであればキャラクターごとに設定されている「運命(ロール)」も気になるところだ。

 サンデーは「調和」の星神を信仰する組織に属していながら、「秩序」の星神を信仰する人物だ。そんな彼が、もしもプレイアブルキャラクターとして実装されるとしたら、そしてふたたび主人公たちの前に現れるとしたら、彼がどのような“運命”を選択し、たどるのか。楽しみにしたい。

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