TikTokと地域PRは相性が良い? 人気TikTokerの地方プロモーション動画から考える
YouTuberやVTuberが観光大使を務め、地域復興の一旦を担うことは珍しくなくなってきた。この時代の流れはTikTokにも同様に起きている。
今回は、336万人のフォロワー(20204年5月17日時点)を持つ人気TikToker・あああつしが投稿した地域のプロモーションムービーから、TikTokerならではのPR方法を分析していこう。
地域PRがTikTokにマッチしている背景
まず地域のプロモーションムービーを投稿するコンテンツとしては、YouTubeよりTikTokの方が拡散力が上回っているためマッチしているように感じる。YouTubeにも街の紹介動画などは投稿されているが、基本的にYouTubeは長尺の動画をメインとしている。そのため、視聴者からするとそれなりに時間を割かなければいけないと感じ、再生するハードルが高くなりがちだ。一方TikTokは、1分前後の尺の動画が多いため、動画を見ることに対するハードルはYouTubeより低い。
ただ、最近は“ながら見”で長尺動画を流しっぱなしにして視聴する人も増えてきたため、発信する側は目的に合わせてコンテンツを使い分けることが重要だ。たとえばYouTuberでも、TikTokで長尺動画の切り抜きがバズり、本家であるYouTubeチャンネルにファンが流れる現象が増えている。また、最初にYouTubeショートやTikTokといった短尺で知名度を上げ、YouTubeで人間味が伝わるような長尺動画を投稿し、増えたファンを定着させるという戦略も定石になりつつある。よって“バズらせる”という点でいうと、現状TikTokに軍配が上がると感じている。
さらに、YouTubeは気に入ったクリエイターをチャンネル登録し、継続的に視聴するという楽しみ方をする視聴者が多いが、TikTokはスクロールすると、いままで見たことないクリエイターの動画もどんどん表示される。ある程度ユーザーの好みのアルゴリズムに寄せた動画が再生されるものの、拡散させるという目的で言えば、こういった点もTikTokの方がマッチしているだろう。
今回は「地域のことを知ってもらう」ということが目的になるため、固定のファンを増やすのではなく、その地域を知らない人に見てもらうことが大切だ。そのため、相性としてはTikTokの方が合っているのではないだろうか。
あああつしが持つ、唯一無二の撮影スキル
さらに、今回紹介するプロモーションムービーには、あああつしの撮影スキルがTikTiokというコンテンツ力に上乗せされている。
あああつしが2024年4月24日に投稿したのは、福岡市のプロモーションムービーだ。2024年5月17日時点で11.9万回再生となっている。この動画は45秒という尺のなかで、福岡の魅力のみならず動画の撮影の裏側まで詰め込まれているのだ。
動画は、演者である女性が長浜屋台街、博多町家ふるさと館、福岡城などをめぐるという内容になっている。動画の前半では撮影者であるあああつしの姿も写り、どのように撮影しているのかがわかるようになっている。後半には、実際に動画がどのように完成したのかが明かされるのだ。
この動画の見どころは、撮影者を感じさせない自然さだろう。あああつしの存在はもちろん、スマホの存在をあまり感じさせないように各名所を写し出している。また、シーンの切り替えもとても自然だ。そのどれもが福岡の名所を邪魔しておらず、最大限に魅力が伝わるような構成となっている。
@aaa_tsushi_ 前橋市をメジャーで観光してきた笑 ※作品制作のため、特別な許可を得て撮影しています #PR #TikTok #前橋市 #赤城神社 #臨江閣 #白井屋ホテル #呑龍横丁 #群馬美少女図鑑 #あああつし ♬ original sound - あああつし
こちらは20204年4月15日に投稿された、群馬県前橋市のプロモーションムービーだ。2024年5月17日時点で59.8万回再生となっている。先ほど紹介した福岡市の動画同様、前半に撮影風景が写り、後半で完成形が流れるという内容だ。
ここで注目したいのが、メジャーの先に携帯をくくりつけて撮影するという方法だ。この撮影方法はあああつしの特徴でもある。
@aaa_tsushi_ 僕が一番高い!!???#tiktok教室 ♬ i scream - slowed n speds
6000万回以上再生されたこちらの動画で、同様の撮影方法が行われている。動画の視点を携帯そのものにすることで、まるで自分が落ちていっているように見えるのだ。
このように、あああつしの目を引く撮影テクニックと地域のプロモーションという2つがマッチし、ここまでの再生回数となったのだろう。
動画配信コンテンツの進化とともに、プロモーションの方法もともに進化している。今後もどんな発信のしかたがあるのか、クリエイターの発想力を楽しみにしたい。