『大神』はなぜ人々の記憶に残るのか? PS2時代の傑作を解剖する

 2021年4月20日は、かつてカプコンより発売されたアクションゲーム『大神』のリリース15周年となる。本作は、日本神話をベースとした世界観や水墨画タッチのグラフィック、心温まるストーリーなどで当時多くのプレイヤーに衝撃を与えたタイトルだ。既に多くのプレイヤーによって魅力を語り尽くされた感もあるタイトルだが、今回はそんな『大神』が今なお愛されている理由について、「キャラクター」「システム」「BGM」の3つの観点から考察していく。

日本人の心の琴線に触れる神話・昔話由来のキャラクターたち


 『大神』は、2006年4月20日にカプコンからリリースされたPlay Station 2用のアクションゲームだ。2007年度の「日本ゲーム大賞」で優秀賞を受賞したほか、第10回の「文化庁メディア芸術祭」ではエンターテインメント部門の大賞を受賞している。後にHDリマスター化された『大神 絶景版』がPlay Station 3、Play Station 4、X box One、Nintendo Switch、PC向けにリリースされた。リマスター版が他機種に渡り展開されていることからも人気の高さが伺える。

 本作は、闇に包まれ荒廃してしまった「ナカツクニ」が舞台となる。プレイヤーはそんなナカツクニの大神「アマテラス」となって、人々を苦しめる妖怪を退治しながら世界に自然や命を取り戻していくのである。強大なボスキャラクターと戦ったり、謎解き要素のあるダンジョンを攻略したりといった要素は『ゼルダの伝説』等に通ずるものもあるだろう。

 本作の世界観は日本神話がベースになっており、アマテラスの他にも「スサノオ」や「ヤマタノオロチ」といった誰もが知っているキャラクターが多数登場する。また、「舌切り雀」や「浦島太郎」などの昔話を元ネタにしたイベントやロケーションも数多い。しかも、これらの元ネタに独自の解釈やアレンジを加え、強烈な個性を持ったキャラクター達を生み出しているのである。

 たとえば、「天照大御神」といえば日本の主神であり、一般的には女神であると解釈する声が多い。しかし、本作の主人公である「アマテラス」の見た目は白狼(というよりも日本犬)そのもので、神でありながら人と会話することができない。信仰心の薄い人々には「わんこ」や「シロちゃん」と呼ばれ、神として丁重に扱われるシーンはほとんど見られないし、普段は本物の犬のようにとぼけた表情や愛らしい仕種を見せる。しかし、そんなアマテラスが人々のために奔走し強大な妖怪に立ち向かうからこそ、『大神』のストーリーはプレイヤーの心を惹き付けるのだろう。


 その他にも、竜宮城で不老不死となり子供の姿のまま数十年を生きている「ウラシマ」、怠けもので見栄っ張りの「スサノオ」などの神話や昔話をベースとしたキャラクターにさまざまなアレンジが加えられているのが印象的だ。本来の神話・昔話との食い違いは、本作の開発者があえて取り入れたおかしみでもあり、キャラクターに愛嬌を持たせる効果を発揮している。

人々を幸せにして経験値を稼ぐ「幸玉」がプレイアビリティを高める


 本作のプレイアビリティを高める一因として、「幸玉」のシステムが挙げられる。何故なら、幸玉はアマテラスが神であるという設定を活かし、プレイヤーが能動的かつ自然に”ナカツクニの世直し”を行うきっかけを作っているからだ。

 幸玉は信仰心や感謝の気持ちの象徴であり、いわゆる”経験値”に相当するポイントだ。本作では、大神たるアマテラスの力の源は信仰心や気持ちの象徴と定義されている。そのため、世界が荒廃し神様を信じる人々が少ない序盤は本来の力を発揮できないというわけだ。しかし、「困っている人を助ける」「動物に餌を与える」「枯れ木に花を咲かせる」といった行動によって取得できる幸玉を使えば、アマテラスの能力を上昇させることができる。

 このようなシステムは、ともすれば経験値稼ぎのための”作業”になってしまいかねない。しかし、『大神』では魅力的なキャラクター、愛くるしい小動物、そして水墨画タッチの美しい世界が連動し、プレイヤーが能動的に”ナカツクニの世直し”に参加したくなる設計になっている。そのため、幸玉を得る行動には、経験値稼ぎ以上の意味が付与されており、作品に対する愛着が湧きやすいのではないだろうか。

 さらに、この幸玉のシステム=善行の積み重ねは、終盤のイベントで真価を発揮する。詳しく語ることは避けるが、アマテラスとして多くのキャラクターや動物に干渉すればするほど、最終局面での演出が説得力を持ち、プレイヤーを感動させるはずだ。

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