オシャレVlog×釣り? レッドオーシャンで“釣りガール”が支持を集める秘密を紐解く

 ある女性が運営するYouTubeチャンネル「釣れない釣りlog」が、ほかの釣りチャンネルとは一線を画したコンテンツで安定した再生数を獲得している。YouTubeで人気クリエイターたちがひしめく釣りジャンルで、なぜ同チャンネルが注目されているのか。今回は「釣れない釣りlog」の動画から、人気ジャンルで支持を集める戦術を紐解いてみたい。

 「釣れない釣りlog」は、都内在住の釣りガール・Akiが運営するYouTubeチャンネル。登録者数は2.6万人とまだ小さなチャンネルだが、安定した再生数で徐々にその人数を増やしている、注目の動画クリエイターだ(2024年2月25日時点)。

 2024年2月18日に投稿された動画では、「カレイが釣れている」という情報をもとに、東京湾で釣りをする様子を公開している。この日はなかなか釣れず、Akiも半ば諦めモードだったのだが、その状況から一転、歓喜の瞬間が訪れる。魚がかかっているとは言い切れない、微妙な感覚を覚えながら糸を巻き上げると、かかっていたのはなんと2匹のカレイ。狙っていたカレイのまさかのダブルヒットに「えっ! 2匹!?」と興奮が収まらないAkiだが、「まさか釣れると思わなかったので、本当に嬉しい」と、釣果には大満足だったようだ。

[東京湾]まだ見ぬカレイを求めて、、冬の夜釣りに挑む釣れない釣りガール!?

 この動画でとくに印象に残るのは、綺麗にネイルが施され、ファッションリングが光る指でエサとなる生きたアオイソメを素早く釣り針につけていくAkiの姿だ。都会と自然のギャップを感じるいいスパイスになっており、待っているあいだの夕日や、ライトに照らされた工場風景もまた美しい。とくに「釣れたらいいけど、釣れない夜もそれもまたいい」という、“釣り=釣れてナンボ”という考え方を変えてくれる、このチャンネルを象徴するAkiの言葉は、特筆に値するものだ。

 東京湾でのカレイ2匹釣りという今回の動画は、そのドラマチックな結末に多くの視聴者も興奮した模様。しかし同チャンネルがYouTubeの人気ジャンルである釣りで安定した再生数をとれるのには、ある特徴が関係していると考えられる。

 そのひとつが、オシャレなVlog動画を彷彿とさせる編集だ。先に触れた映像美はもちろん、BGMに釣りコンテンツではなかなか耳にしないカフェミュージックやチルミュージックのほか、軽快な楽曲を使用。視聴者を唯一無二の世界へと引き込んでいく編集は、釣り好き視聴者のみならず、幅広い視聴者を魅了する力を持っているようだ。

 さらに同チャンネルはコンセプト設計もピカイチ。人気釣り系YouTuberのチャンネルでとくに再生数が伸びている動画は、巨大な魚や珍しい魚が釣れたときのコンテンツだが、このチャンネルは名前からも想像できるとおり、“釣れない”ことを売りにしている。

 もちろん、魚が釣れている動画もあるが、コンセプトとチャンネル名は活動開始時にAkiが釣り1年目の初心者だったことに起因しているため、釣れないことにフォーカスされているのだ。事実、同チャンネルの1本目の動画には、海に来て釣り糸を垂らすもまったく釣れないことに触れ、「ぜんっぜん釣れないので、あえて動画にしてみます」というテロップが入っており、釣れない様子を動画にしている旨の説明がある。

 今回取り上げたカレイ釣りの動画には「最近は釣れる釣りlogですね」というコメントが書き込まれている。Akiの腕前がどんどん上がり、最近は釣れることが多くなったようだ。しかしながら、釣れないことに重きを置いたブランディングは実に秀逸。人気クリエイターが多くいるジャンルで後発のクリエイターが頭ひとつ抜けるためには、コンセプトや編集の差別化が重要であることがよくわかる事例といえそうだ。

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