『Weekly Virtual News』(2024年1月22日号)

人気アニメの聖地巡礼、産業スパイ、最新の倉庫作業ーーメタバースならではの体験が続々

倉庫バイトで体験する物流業務効率化 京セラの「大人の社会科見学」が好調

 『VRChat』では、ビジネス領域の施策でありながら、一般ユーザーの注目をも集める取り組みがたびたび登場する。その一つが、京セラによる公式ワールド展開だ。これまで機械工具、GANレーザーの2部門が、自らの事業をわかりやすく伝えるパビリオンを公開しており、その内容は「大人の社会科見学」として好評を博している。

 そして京セラ3番目の施策として展開されるのが、スマートフォン事業だ。同社は今年、コンシューマ向けスマートフォン事業からの撤退を発表しているが、その一方で一般ユーザーに向けて法人向け事業・プロダクト紹介を目的に、あらたなワールドをひとつ公開した。

 メインテーマは「高耐久スマートフォン」と、「物流業務の効率化」。アウトドアでも活躍するスマートフォンを倉庫作業の現場に採用すると、入荷も出荷も楽になる……ということを、実際に倉庫作業を体験することで理解してもらおうという取り組みだ。ちょっとしたバイト体験だが、「荷物のQRコードを読み込むと配置先がわかり、とても楽」という感覚を、身体を使って理解してもらおうという狙いだ。

 同ワールドには同社のスマートフォンとそのユースケースを展示したパビリオンも併設されており、「京セラはスマホも手掛けている」ことをわかりやすく体験できる。社会科見学の場としても秀逸であり、幅広い年齢層にオススメできるメタバース活用例だ。担当者によれば、京セラ社内でも、反響のよさからメタバースの取り組みは好感触らしく、今後も新たなパビリオンが建設されそうだ。

“本家”によるバーチャル・スーパーカミオカンデが登場

 一方、国産メタバースの『cluster』には、世界最大の水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置・スーパーカミオカンデがやってきた。とはいえファンメイドではない。これは神岡宇宙素粒子研究施設の助教授が制作したもの――つまり、“本家”によるスーパーカミオカンデの再現空間だ。

 世界最大の水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置であり、ノーベル物理学賞にもつながった有名な施設だが、その内部へ行くことはできない。だがメタバース空間なら、それもできる。チェレンコフ光をエフェクトで擬似再現した空間で、内部に設けられた展示物と合わせて、この施設がどういったものであるかを体験を通して理解することができる。

 同ワールドの制作に至ったきっかけとして、VR空間で遊び、国際宇宙ステーションの再現などに触発されたと、同施設で研究を行う家城佳助教は語る。学術方面とメタバースとの相性は、科学技術振興機構が発刊した調査報告書にて、「理系集会」や「バーチャル学会」といった学術系イベントが取りあげられていることからも裏付けられる。領域の最前線にいる人物・団体のメタバース参戦が、今年も続くことを期待したいところだ。

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