『ALTDEUS: Beyond Chronos』郡陽介×高橋邦幸(MONACA)対談 “ストーリーに寄り添う音楽”の作り方を考える

『ALTDEUS: Beyond Chronos』郡陽介×高橋邦幸(MONACA)対談 “ストーリーに寄り添う音楽”の作り方を考える

 VRゲーム『ALTDEUS: Beyond Chronos(通称:アルトデウス: BC)』に迫る特集企画。第一回目は本作の制作を手掛けるMyDearest代表取締役兼総合プロデューサーの岸上健人氏に、第二回目は制作・開発に携わるディレクターの柏倉晴樹氏、アニメーター兼演出の田村直彬氏、プログラマーの中地功貴氏、3名のクリエイター陣に取材を実施した。

 そして、第三回目となる今回は『アルトデウス: BC』のサウンドを手掛けるサウンドプロデューサーの郡陽介氏と作曲家の高橋邦幸(MONACA)氏へ話を伺った。プレイヤーがキャラクターや作品の世界に入り込む一つの要素である“サウンド”にスポットを当て、『アルトデウス: BC』の世界観を彩るサウンドクリエイトの裏側に迫る。(阿部裕華)

特集「国産VRゲームの最前線『ALTDEUS: Beyond Chronos-』誕生の軌跡」はこちら

音楽ありきでスタートした『アルトデウス: BC』

郡陽介

ーー 郡さんは前作『東京クロノス』から引き続きの楽曲制作となりますが、高橋さんはVRゲームの楽曲制作自体が初めてとのこと。どういった経緯で『アルトデウス: BC』に高橋さんの参加が決まったのか教えてください。

郡陽介(以下、郡):『アルトデウス: BC』制作前から、音楽を取り入れた作品をつくりたいと社内で話が出ていました。前作の『東京クロノス』ではBGMをあまり使用しておらず、主題歌やエンディングテーマを含めても20曲弱でした。というのも、当初は海外のゲームのようにBGMは必要ないのではというところからスタートしていたからです。でも、『東京クロノス』は少人数の登場人物が閉じ込められた空間だったため、音自体ほとんど鳴らない。それだと寂し過ぎるということで、少しだけBGMを追加しました。『東京クロノス』をつくり切ったときには、もう少し音楽のある作品を作りたいよねと。

 (柏倉)晴樹監督と話して『アルトデウス: BC』にはゴリゴリ音楽を入れましょうとなりました。ただ、『アルトデウス: BC』は『東京クロノス』のシナリオの3倍くらい。エンディングテーマが5曲、BGMだけでも35曲程度必要じゃないかと……。僕はボイスの収録にも携わっていたため、一人でつくり切るのは時間的に無理じゃない?という話になりまして。そこで、高橋さんへオファーをしました。

高橋邦幸(MONACA)

高橋邦幸(以下、高橋):僕も以前からVRゲームに関わる機会はほしいと思っていました。個人的にVRゲームは、ストーリーやキャラクター性にフォーカスした作品が市場に少ないという認識に止まっていて。

 『アルトデウス: BC』は、ゲームの内容からアニメの劇伴のような音楽でも問題ない、これは面白そうな仕事だぞ、という気持ちでお受けしました。

ーー 高橋さんにはどのような楽曲を依頼したのでしょうか?

郡:『アルトデウス: BC』のメインとなるシーンにフォーカスした楽曲制作を10曲ご依頼しました。特定のシーンでキャラクターのドラマが深く描かれているので、キャラクターにもフォーカスしながら制作していただきました。

高橋:ご依頼いただいて、シナリオと発注リストを読み込みながら制作を進めていたのですが、僕以外に郡さんもBGMを作られることを知らなかったので「このシナリオで10曲じゃ足りないのでは……?」とちょっと焦ったんですよ。ユーザーの方に「曲が足りていない」と思われて、ゲーム自体のトータルクオリティが誤解されてしまうかもしれない。まずいぞと(笑)。それで『アルトデウス: BC』の世界観や雰囲気を説明する、汎用的に使えそうな曲を勝手に2曲追加しました。

郡:本来は僕がそういった楽曲をつくる予定だったのですが、発注の際にお伝えしていなくて……。高橋さんは「この10曲だけで作品を成立させようとしているのか?」と気にしてくださったんですよ(笑)。結果として、とても素晴らしい12曲をつくっていただきました。

プレイヤーの感情を誘導させる音楽

ーー シナリオを読んだ際、高橋さんは『アルトデウス: BC』の世界観をどのように感じましたか?

高橋:冒頭から主人公の親友が敵に捕食されていますよね。常に後ろめたさがあるし、過去を背負っている状態で物語が進んでいく。街も虚構ですし、虚ろで儚い印象をシナリオから強く受け取りました。

 また、大前提として『アルトデウス: BC』は前作『東京クロノス』から地続きになっている作品なので、SF・未来感という今作の色を入れつつも前作の雰囲気や世界観を壊さないようには意識しましたね。

郡:そうだったんですね! 初めて知りました。

高橋:「アドベンチャーパート」にはあまり必要のないメロディを入れないようにしています。前作では環境音のような音楽だったと伺っていたので、そこから極端に乖離してしまうと前作ファンの方には受け入れられないかもと思って(笑)。

 「マシンアクションパート」は別ですけどね。全ての作品に通じますが、バトルシーンはとにかくカロリーが高くなります。特にアニメよりゲームの方が、プレイヤーによってボスを倒したりするタイミングが変わってくるので、常にテンションを高い状態で維持させる必要があると思っています。郡さんからは今回「殺意高めでお願いします」とオーダーを受けました(笑)。

郡:本作のPVに使用している楽曲「Sunlight」を高橋さんに聴いていただいた上で、「これよりも殺意高めでお願いします」と。仕上がってきた曲「Save the World」を聞いたら「Sunlight」よりも“絶対殺すマン”な曲でした(笑)。

ーー なぜ、そのようなオーダーを……?

郡:主人公・クロエの親友・コーコを捕食した敵と戦うシーンで流れる曲だったんです。最も復讐心が強まった状態のバトルシーンだったので、「Sunlight」のバトルシーンと比較して殺意が高いだろうと。

高橋:この戦いに至るまでの背景があるので、かなり直球な感情の曲に仕上げましたね。『Sunlight』は状況を俯瞰しているような音楽だったのですが、僕がつくるシーンはより当事者感が強い曲がハマると思って、そのような方向にしました。

ーー 「アドベンチャーパート」ではBGMに徹した楽曲に、「マシンアクションパート」ではプレイヤーの感情スイッチを押すような楽曲にしているんですね。

郡:儚さや繊細さ透明感を感じる音楽に統一されている一方で、全てにおいて感情が見える音楽をつくっていただきました。『アルトデウス: BC』では、プレイヤーが音楽に誘導されて感情を受け取りやすく背中を押されるようにしたかった。加えて音のリズムに合わせてゲームを進めてほしい気持ちもありました。なので、そこは楽曲制作だけでなく演出面でも一番気を付けました。ユーザーがコントローラーで選択するタイミングを細かく考慮しながら、音量やテンポ、環境音からクロスフェードしていくタイミングのバランスなどにかなり気を付けています。

ーー  開発クリエイターのみなさんにお話を伺った際、「マシンアクションパート」の長さを一曲の長さに合わせたと聞きました。シーンに曲を合わせるのではなく、曲にシーンを合わせた理由を教えてください。

郡:当初のバトルシーンは、10分程度の尺がありました。すると敵と戦っている最中に音楽が途切れます。曲の最初のセクションをループ再生するとか、環境音で尺を繋ぐとか考えてはいましたが、それだと浮いて聴こえてしまう。

 特に、バトル終盤でマキア(クロエの操縦するマシン)がビームを打つのですが、緊張感もなければ爽快感もなかった。サビ頭が合っていないとか、映像のリズムと音楽のリズムが合っていないとか、そういった調整が全くされていない状態で、単純に「これは面白いのか……?」と。高橋さんにつくっていただいた音楽もめちゃめちゃカッコいいから、何とかして音楽を活かしたいと駄々をこねました(笑)。ほかにも、敵が襲来しているのにダラダラ会話していたら死んでしまうだろう、制限時間がある方が正しいのではないかと思ったのもあります。監督も同じ思いだったので、結局、音合わせでセリフをカットすることにしました。

高橋:発注の際には「ビームを打つタイミングで音楽にブレイクを入れたい」とおっしゃっていたので、演出に合わせてサビのタイミングを微調整するのかなと思っていましたが、試遊させていただいたらそのまま流れていて本当に音楽に合わせてもらっていると感じました。もっとセリフを入れたかったんじゃないのかなと。ちょっと申し訳なかったですね(笑)。

ーー 「アドベンチャーパート」は、シーンに曲を合わせているのか、曲にシーンを合わせているのか、どちらでしょう?

郡:シーンに合わせて曲を流しています。シーンの背景やセリフのタイミングを考えながら音楽のタイミングを合わせている感じです。

高橋:ブリーフィングシーンの音楽がばっちりでした。ブロック再生はあまり経験がなかったので、実際に試遊してなるほど!となりました。(ブロック遷移とは別に)ステムはかなり調整されているんですか?

郡:しています。前回の盛り上がりを受けて次のセクションに入らないといけないので、ステムのバランスや鳴らし方は気を付けてつくりました。特にブリーフィングシーンはめちゃめちゃ気合いが入っているので、嬉しいです。

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