『FF14』ファンフェスに開発チームが集結 あの「サーバー斬鉄剣」解決秘話などを語り尽くす

『FF14』ファンフェスに開発チームが集結

 スクウェア・エニックスが開発・運営するオンラインRPG『FINAL FANTASY XIV(以下、『FF14』)』のイベント『ファイナルファンタジーXIV ファンフェスティバル 2024 in TOKYO』内にて、1月7日に本作の開発メンバーによる座談会「開発チームのここが言いたい」が実施された。

 本座談会では、プロデューサー兼ディレクターを務める吉田直樹氏をはじめ、開発チーム各セクションから錚々たるメンバーが集結し、知られざる小ネタや、いまだからこそ言える開発秘話などが語られていった。

【出演者一覧】(敬称略)
吉田直樹:プロデューサー兼ディレクター
市田真也:リードアーティスト
祖堅正慶:サウンドディレクター兼コンポーザー
織田万里:シニアストーリーデザイナー
林洋介:リードアイテムデザイナー
小田切慧:ゲームUIデザイナー
高橋新:リードレベルデザイナー
高梨佳樹:リードバックグラウンドアーティスト
中川誠貴:リードバトルコンテンツデザイナー
塩田修平:リードノンコンバットコンテンツプログラマー
室内俊夫:グローバルコミュニティプロデューサー

 『FF14』ユーザーにはおなじみの面々が揃ったなかで、まずは唯一、今回が初めての顔出し出演となる塩田氏の紹介が。同氏はゲーム開発者歴16年間のうち、なんと10年を『FF14』チームで過ごしているという。

 役職の「リードノンコンバットコンテンツプログラマー」とは読んで字のごとくで、生活系コンテンツやシステムの実装・保守等、バトルを除いたほぼすべての領域が担当範囲。会場のスクリーン上には、塩田氏がこれまで担当した仕事として30以上の項目が公開されたが、これすらも一部抜粋したリストに過ぎないそうだ。

 そんな塩田氏の担当業務のなかでも、ひと際目を引くのが「サーバー斬鉄剣の解消」という項目。「サーバー斬鉄剣」とは、パッチ2.X~3.Xにかけて存在した不具合の俗称で、「オーディン」などを撃破した瞬間にその場にいるプレイヤーが一斉にサーバーから切断されてしまうという現象を指す。

 これの解消にあたった塩田氏は、まず「オーディン」撃破時にその場に集まった200名前後のプレイヤーに対する報酬付与の処理がサーバーに負荷を与えていたことが原因であると特定。

 その報酬処理のなかでも、とりわけアチーブメントの更新処理に時間がかかっていたことに気付き、「最終的にはアチーブメントの更新処理を従来の100倍程度に高速化」することで不具合の解消につなげたと明かし、会場のユーザーからはどよめきの声が上がっていた。

 かくして、「いまだからこそ言える裏話」としてはこれ以上ない題材からスタートすると、中盤には、コンポーザーを務める祖堅氏が「スイーツをラーメンにする作業」という独特の表現で、BGMにまつわる本作ならではの苦労話を語る場面も。

 祖堅氏によれば、ゲーム楽曲のアレンジメント作業とは、「スイーツをラーメンにする作業」に等しいのだそう。『FF14』には歴代の『FF』シリーズ作品のBGMのアレンジ版を多数実装しているが、「一度完成されている音楽を壊すのは、ゼロベースで作曲するよりも格段に難しい」とのこと。

 ユーザーたちが原作をプレイするなかで思い出として昇華されたBGMとは、すなわち「スイーツ」。それを『FF14』のためにアレンジして実装するという作業は、いわば「スイーツをラーメンに作り替えてもらえませんか。だって元は同じ小麦粉でしょう?」と言われているのと同義である……。

 ……よって、ユーザーたちの「思い出の味」を壊さずにアレンジ楽曲として仕上げていく作業には、とてつもないプレッシャーが伴うのだと吐露した祖堅氏。

 ちなみに、これまでもっともアレンジに苦労したのは「妖星乱舞 第1楽章 〜次元の狭間オメガ:シグマ編〜 Dancing Mad - Movement I」から始まる一連のBGM。オリジナル曲の「妖星乱舞」が18分近くもあるだけに「巨大なスイーツを巨大なラーメンにする作業だった」とも語っていた。

 冒頭では塩田氏によるバグ解消にまつわる話題もあったが、一方で“あえて消さずに残しているバグ”も存在すると言及したのは、ゲームUIデザイナーの小田切氏だ。

 『FF14』には自身のキャラクターの自己紹介写真を作成する「ポートレート」機能が実装されているのだが、この「ポートレート」が静止画であるにもかかわらず、キャラクターが装備している武器のエフェクトが揺れ動き続ける仕様は、厳密に言うとバグなのだとか。

 本来であれば武器エフェクトにも一時停止を適用するのが正しいのだが、そうしなかった理由は、小田切氏いわく“一枚絵の中で武器エフェクトだけがキラキラしている光景が、まるでカードダスのキラカードのようで映えるから”とのこと。

 結果、バグではなく仕様ということで貫くことにしたとの裏話を受けて、吉田氏も「厳密に言えばバグだが、そうした(直すかどうかの)判断のときには“おもしろさ”を優先していく気風が我々にはある」とうなずいた。

 ただ、こうした「良かれと思って」の判断が、将来的にポートレートに革新的なアップデートを加えようとした際などに、思わぬ足かせとなってしまう可能性もゼロではないのが悩みどころとも。

 実際、2024年夏にリリース予定のパッチ7.0では「第1次グラフィックアップデート」も実施されることになっており、そこでグラフィック担当班から「ポートレートの武器エフェクトを停止させてもらえないか?」と打診があったそうだ。

 小田切氏は「そのままがいいなぁ……」とやんわり拒否したそうだが、グラフィック班の苦労がしのばれるエピソードだった。

 その後も、登壇者たちが代わる代わる珠玉の「ネタ」を発表していき、開発チームの情熱やこだわりが約1時間30分にわたって語り尽くされた本座談会。

 最後には「カッパの着ぐるみ実装時期が知りたい!」とのスライドとともに、ステージ上にカッパの着ぐるみが出現。……その中から、『FF』シリーズの生みの親である坂口博信氏(現・ミストウォーカー CEO)が登場するという、出演者&会場騒然のサプライズもあったので、興味のある人はぜひ配信アーカイブを最後までチェックしてみてほしい。

[Day 1] FINAL FANTASY XIV FAN FESTIVAL 2024 in TOKYO

© SQUARE ENIX

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