毛嫌いしていたオープンイヤーイヤホンに心を掴まれ、新型マウスであの時の力士を思い出した2023年
リアルサウンドテック編集部による連載「エンタメとテクノロジーの隙間から」。ガジェットやテクノロジー、ゲームにYouTubeやTikTokまで、ありとあらゆる「エンタメ×テクノロジー」に囲まれて過ごす編集部のスタッフが、リレー形式で毎週その身に起こったことや最近見て・試してよかったモノ・コトについて気軽に記していく。
第8回は年末企画のひとつとして、編集長の中村が「2023年のベストバイ」について書いていきます。イヤホン・ヘッドホンなどの音響機器やマウス・キーボードなどのデスク周辺機器、そしてテック関係の書籍とバランスよく紹介したつもりが、年末の疲労からか明後日の方向にシフトしていきました。
すべてのオープンイヤーイヤホンに謝罪したくなった『JBL SOUNDGEAR SENSE』
個人的にオープンイヤー型のイヤホンは、過去に一度試したものがあまりにも聴こえづらいし音質も今ひとつだったので、ずっと距離を取っていました。ただ、今年ひょんな機会から『JBL SOUNDGEAR SENSE』を試すことになり、実際に耳にはめてみると、音がいいのなんの。耳元にスピーカーがあるかのように豊かなサウンドと付け心地の良さに「オープンイヤー型イヤホン、今までバカにしててごめんよ……」と謝り倒したくなりました。
音の特徴としては、ドライバーが16.2mmと大きく、独自のBASSエンハンスメント(低音強化アルゴリズム)を採用しているとのことで、実際に低音の鳴りがすごく心地いいんです。よくリファレンスに使うBillie Eilish「bury a friend」を聴いても、この曲の特徴というべきサブベースの鳴りがまあ気持ちいい。これは主観になりますが、インナーイヤー型のイヤホンだと感じない振動ーー“空間鳴り”のようなものを『JBL SOUNDGEAR SENSE』からは感じるとでもいいましょうか。とにかくオープンイヤーに挑戦してみたいという人にはまず間違いなく勧めたい一品です。
ちなみにネックバンドも付属していて、有線イヤホンっぽくすることもできるのですが、ランニングに使ってみたところ、それはもう風の音しか聴こえませんでした。多分使い方を間違えているみたいなので、正しい使用方法がわかる方はこっそり教えてください。
モニターヘッドホンに革命を起こしたSONY『MDR-MV1』
今年発売となったばかりの『MDR-MV1』は、おなじくSONY『CD900ST』の後継機的な立ち位置でありながら、見た目も性格も違う面白い一台です。SONY『MDR-CD900ST』をもともと制作用・作業用のヘッドホンとして使っていた筆者ですが、今年春に『MDR-MV1』を少しだけ試した際に衝撃を受けました。背面開放型という特殊な形状で、開放型の抜けの良さと密閉型の音の良さを両立しているうえ、お互いの弱点も補い合いつつ、軽いし良い意味でフラットに聴こえるしと個人的に非の打ち所がないモニターヘッドホンだったのです。
“自宅で本物のスタジオの音を再現”する有料サービス「360 Virtual Mixing Environment」にも対応していますが、測定に費用と時間がかかるため、筆者はまだ試せていません。それをしなくとも十分だと思える性能がある、というのが大きいのですが。
めちゃくちゃ良い音で聴きたい、というよりは、バランスのいい音で聴きたい、音と映像のバランスを見たいなど、制作面での需要に応えるタイプの製品なので、少し特殊な立ち位置ではあるものの、いまや誰もが何かを作る時代になった2023年において、このような機材の需要は今後も高まっていくでしょう。