競争激しい女性YouTuberの“ひとり飲み動画” 人気の新たな要因は言葉選びにあり?
「しおりのなんとなく日常」という女性のひとり飲みチャンネルが毎回、安定した再生数を獲得している。人気チャンネルが乱立する女性のひとり飲みジャンルのなかで、なぜ同チャンネルが支持されるのか。今回は女性のひとり飲みコンテンツにおける競争と、人気クリエイターの共通点を同チャンネルから紐解いてみたい。
しおりのなんとなく日常は、ソロ活を極める女性「しおり」が、国内外のグルメを食べ尽くす動画を投稿しているチャンネルだ。チャンネル開設は2020年5月と比較的最近にも関わらず、心地よい、落ち着いた声で視聴者を魅了しており、登録者数は32万人を突破(2023年12月14日時点)。着々とファンを獲得している、注目のクリエイターのひとりだ。
しおりの人気の秘訣はなにか。そのヒントが、2023年12月6日に投稿された再生回数13万回の「【磯丸水産】ぼっち滑り込みハッピーアワー、たわいもない日が素敵な1日に~」(2023年12月15日時点)という動画に隠されている。内容は、予定が早く終わったしおりが海鮮居酒屋チェーン店でひとり飲みをするというもの。昼間の明るい様子や、金額が低いことを表現する際には、『安心してください、履いてますよ』というギャグで今年脚光を浴びた芸人・とにかく明るい安村を意味しているのか、「安村」というテロップが当てられている。しっかりとトレンドを押さえていることがうかがえる。ハッピーアワーを「HH」と略し、貝の感想を伝える際には「口内が料亭」と表現する点もなかなかおもしろい。
約10分ほどの動画にはこういったポイントが無数に散りばめられており、テンポのよさが際立っている。しおりの秀逸な言葉選びと飲みっぷりに魅せられ、あっという間に終わってしまったこの1本から、言葉選びがこのチャンネルの最大の特徴になっていることが読み取れたのだった。
YouTubeではここ数年、女性のひとり飲みコンテンツが大人気である。テレビ業界でADとして働く飯岡の豪快な飲みっぷりが人気の「サイボーグAD飯岡チャンネル」(登録者数55万人・2023年12月15日時点)や、独特なワードチョイスで視聴者を惹きつけ、エッセイなども出版する酒村ゆっけが手がける「世界一のゆっけ」(登録者数103万人・2023年12月15日時点)など、人気チャンネルが乱立している。俳優・川口春奈のチャンネルでも“ぼっち飲み”企画がとくに好評で、視聴者からのリクエストが多く寄せられることからも、女性がひとりで飲む動画の需要が大きいことは確実だ。
では、この人気YouTuberたちが激しい競争を繰り広げるジャンルのなかで、なぜしおりが毎回、再生数を伸ばせるのか。注目したのは、やはり先に触れたしおりのワードチョイスだ。しおりの言葉選びは視聴者からもつねに注目されており、動画のコメント欄には「しおりさんの言葉選びは、やっぱり秀逸」「言葉選びと行動とセンスが大好き」といった感想が書き込まれている。思わず反応してしまうユニークな言葉の数々は、今年チャンネル登録者数100万人を突破した酒村ゆっけを彷彿とさせるものでもあることから、言葉(ワード)が視聴者が目を留めるポイントとなっていると考えられる。
YouTubeで人気チャンネルがひしめく女性のひとり飲みコンテンツは、これまではYouTuberたちの清々しい飲みっぷりと食べっぷりが人気の理由となっていることが多かった。しかしながら、しおりが安定的に再生数を伸ばせる最大の要因は、どこかクスっと笑ってしまいそうな、言葉選びが大きなポイントにあるといえる。人気YouTuberの地位を確立した酒村ゆっけとしおりから、“言葉を操れる者が動画を制す”という新たな共通点が見出された女性のひとり飲みジャンルは、今後どのような展開を迎えるのか。新たなヒロインの誕生が楽しみだ。