タイパ重視のZ世代のポッドキャストとの相性は? 起業家・朝比奈ひかりが考える
Z世代は「音楽を聴くだけでは満足できない」
ーーでは、ここからはSpotifyが公開した「Culture Next」のレポートを軸にお話を聞いていきます。まずは、このレポートを見て朝比奈さんが率直に思ったことをうかがいたいです。
朝比奈:目次の部分にある「深い体験」というのは、まさにいまのZ世代が重きを置いていることだと思います。いろいろな情報とともに生きてきたからこそ、Z世代は浅いものは浅いと気づいてしまう。だから、音楽アプリひとつをとっても、音楽を聴くだけでは満足できなくなっているんです。
ーーなるほど。プラスアルファが求められるようになっているのですね。
朝比奈:おっしゃるとおりです。たとえば、SpotifyのBlend機能(=自分と招待した人の好みの音楽をもとにした共有プレイリストを自動的に作成してくれるもの)は、わたしも当時の彼氏と使っていました。ひとりで音楽を楽しむのもいいけれど、誰かと共有すると、相手への理解度が深まりますよね。Blend機能は好きな人と同じ曲が聴けることに加えて、お互いの好みにマッチする曲に新しく出会えるのもいいです。
ーー実際に朝比奈さんもSpotifyの機能を活用されていたんですね。
朝比奈:はい。ちなみに現在の彼とは、グループセッション(=ユーザーが離れた場所にいてもリアルタイムで同じ音楽を楽しむことができる)を使って、一緒に作ったプレイリストを流すこともあります。付き合った日に作ったプレイリストは「結婚式で流そうね」と約束をしていて。
ーーそんなに素敵な活用法が!
朝比奈:デジタルネイティブなZ世代にとっては、音楽を流すだけのアプリは物足りなくなってしまうと思います。たとえば、Z世代って基本的にLINEを交換しないんですよ。
ーーたしかに、インスタグラムのDMでやりとりすると聞きます。それって、どうしてですか?
朝比奈:LINEだと会話を続けるのがむずかしいからだと思います。インスタグラムだと、ストーリーズから会話が弾んだりしますよね。「これ、わたしも好き!」とか、「今度行ってみたいと思ってた」とか。ただ会話を楽しむというよりは、シェアしたものから会話を弾ませる方が主流になっているんですよね。Spotifyも音楽アプリではあるけれど、いろいろな機能があるからコミュニケーションの題材を作ることができる。あとは、LINEの設定などで、自分はこういう音楽が好きだというのを自己紹介のように使っている人も多いと思います。わたしが学生のころは、音楽を知る媒体がテレビだったので、「きのうのMステのあの歌よかったよね」みたいな感じでブームが広がっていましたが、最近はTikTokから流行りが生まれることが多いらしいです。
タイパ重視でコンテンツを楽しむZ世代とポッドキャストの相性
ーーポッドキャストなどの音声コンテンツはいかがですか?
朝比奈:ポッドキャストは、聴く人はすごい聴くけれど、聴かない人はまだ触れてもいない……という感じで、熱量が分かれていると思います。ただ、ポッドキャストは海外も力を入れているので、流行するのは時間の問題という感じがしますよね。
ーーYouTubeでも「ながら聴き」をする人が増えていますもんね。ポッドキャストの楽しみ方は、それに近いというか。
朝比奈:そうですね。YouTubeも、少し前までは企画系や商品紹介の動画ばかりでしたが、最近では焼肉を食べながらダラダラしゃべる……とか雑談系の動画が増えている気がします。その方が、再生回数が取れるんでしょうね。とくに、Z世代はタイパ(=タイムパフォーマンス)を気にする人が多いので、倍速視聴できるかどうか、など。「Culture Next」のレポートにも、Z世代の21%が倍速視聴をしていると書いてありました。
ーー朝比奈さんは、ご自身でもポッドキャストで『若者ラジオ』をやられていましたよね? 音声コンテンツを始めようと思った理由を教えてください。
朝比奈:フリュー時代の上司が音声広告の会社を起業して。そのタイミングで「ポッドキャスト始めてみればいいじゃん」と言われたのがきっかけです。最近は更新できなくなっていたのですが、いまも月に2万回くらいは再生されているみたいなんですよね。それもあって、ちょうど「またやりたいね」という話をしていたところです。
ーー最後に朝比奈さんがオーディオストリーミングサービスに望むものを教えてください。
朝比奈:音楽面の機能については、すでに満足してしまっている部分があるんですよね。音声コンテンツの部分でいうなら、ジムと同じような感じで、学びのパーソナルトレーナーがいてくれたらいいなと思うことがあります。「話し方講座」などをポッドキャストで聴いていると、挫折してしまうことが多くて……。「あなたには、これ!」「これとこれを何時間分聴いたら目標を達成できます!」とアドバイスをくれる人がいたら、続けられそうだな、と。コンテンツに溢れている世の中ではありますが、まだまだ楽しみが広がっていくと思うとワクワクします。
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