配信者にとっての“音”の重要性って? 蛇足と考える「理想の調音環境」

蛇足と考える「理想の調音環境」

 コロナ禍以降、PCでゲームをするユーザーが増えていることは周知の事実だが、それによって自身のPC環境により気を配ったり、環境を充実させようとする人が増加している。そのなかの一つであり、大きな要素を占めるのが“音”だろう。

 ボイスチャットを使用するゲームが増えたことや通話しながらのゲームなどのプレイスタイルが登場したこともあり、上下左右の住人との騒音問題や、配信者においては自身のプライバシー保護など、音により気を配ることが増えてきた。

 そこで今回は歌い手としてキャリアをスタートさせ、現在はストリーマーとして活躍し続ける蛇足にインタビュー。キャリアと音に関する話や、音楽スタジオの設計、施工を行う「NICE COMPANY」とゲーマー向けの環境改善を提案する「GRAPHT」のタッグが作る、プロ仕様の調音パネル『CvoNis』シリーズを試した感想などについて語ってもらった。(編集部)

キャリアの1歩目は「1000円のマイク」から 自然体で歩んできた15年間

――まずは蛇足さんが配信、動画投稿を始めたきっかけを教えてください。

蛇足:ニコニコ動画が会員登録制になる前のまだ(β)だった時代――いわば“無法地帯”だったころに動画投稿を始めました。当時、ニコニコ動画というものがあると友だちに教えてもらってはじめはリスナーとして見ていたんです。

 VOCALOIDが流行る前から「歌ってみた」文化があったんですけど、そのとき初めて聴いたのが「HoneyWorks」として活動しているGomさんの歌ってみた動画でした。そこからいろいろと聴いていたら、どんどん面白さを感じるようになって。当時、暇で時間があったので「自分でもやってみよう」と思って1000円ぐらいのマイクを買い、動画を投稿し始めたんです。僕が始めたころは、もうVOCALOIDが流行り始めていましたね。

――1000円のマイクでもいいから、とにかく機材を買って動画を投稿するのか、それとも聴く側で居続けるか。大きな一歩であるようにも感じますが、抵抗はなかったですか?

蛇足:動画に入るのは声だけで、自分の名前や顔が知られることもなかったですし、結構気楽に始めましたね。歌ってみた動画の作り方を調べたときも、元々パソコンを扱っていたこともあって、そんなに難しくなさそうだなと思って。

――そこから歌だけでなく配信活動などもやられてきていますが、蛇足さんの中でターニングポイントとは?

蛇足:炎上してしまったこともありましたし、それをふまえて活動の仕方を変えてきたところもあるのでなんとも言えませんが……(笑)。自分の選択でうまくいった、みたいなことはあまりなくて。どちらかというと環境が変わったり、時代が変わったりという流れにに合わせて色々やってきたという感じでしょうか。

――そういった逆境のなかで、環境を変えながら活動を継続すること、新たなファンを獲得することは並大抵のことじゃないと思います。

蛇足:それまでのキャリアと、そこで培った交友関係に助けられたことがすごく大きかったですね。ゼロから始めるのとはまったく難易度が違っただろうなと思いますが、なんとなく生活できるくらいには活動が続けられていて助かってますね。

――15年の活動のなかで、プラットフォームを変えたり、あるいはプラットフォームの空気感が変わっていくことも多々あったと思うんです。それこそ、それこそ初期の“無法地帯”だったニコニコ動画も、いまでは全然空気感が違いますね。そうした中で、蛇足さんご自身の在り方はどのように移ろってきたのでしょう?

蛇足:「歌ってみた」動画自体、ジャンル的にもともとクリーンな世界だったので、そういった変化で困るようなことは無かったですね。「生主(ニコニコ生放送主)」のなかには無茶をするような人たちもいましたけど、僕らはあくまで歌を録って投稿するのが主なので。

 なので、そういう意味で「プラットフォーム」に意識を向けることはあまり無かったかもしれないです。ゲーム配信にしても、そもそも別に自分が変な発言をするようなタイプではないので(笑)、特に意識したことがなかったかもしれないです。

――あくまでも自然体でいられたのは、長く活動を続けてこられた秘密かもしれませんね。逆に、意識的に取り組んできたことや、活動において工夫しているポイントがあればぜひ教えていただきたいです。

蛇足:自分のスタイル的に、あまり競合がいないんです。一般的に、ゲーム配信や生配信のメインストリームにはよく笑ってよく喋る、元気な人が多いじゃないですか。でも自分はあまり喋らないし声も低いし、声を荒げないところがある。周りを見渡したときに、それで有名な人ってなかなかいないんですよね。なので、それを踏まえてどうしたらいいのかは常に考えています。

 それで、最近は料理の配信も始めてみたり、釣りをしてみたり、自分のできる範囲で新しいことにもチャレンジしている感じです。ずっと同じことをやっていても飽きられてしまうと思うので。ゲームに関しては、どんどん新作が出てくるのでいいんですが、それ以外の部分ですよね。

――ゲームのタイトルや流行などは、ストリーマー仲間との交流を通じて把握されることが多いですか?

蛇足:そういったこともあまりないですね。というのも、やっぱり僕は周りよりも頭二つ三つ抜けて年が上なので、お互いに気を使わずに喋れる相手もそんなにいないんですよ。あとはそもそもあまり喋らないので、コラボなどで人が増えれば増えるほど“いるかいないか分からない”んです(笑)。

――そうなんですか? 周囲からは「兄貴」と慕われていらっしゃるじゃないですか。

蛇足:どうでしょうね。慕われているのか馬鹿にされているのか(笑)。

ーーご謙遜を(笑)。いろんな場に呼ばれていらっしゃいますし、慕われているんだと思いますよ。

蛇足:でもみんな、年が近くていいなと思いますね。同世代の人がいることって、なにかをするモチベーションにもなると思いますし、活動する上でもやりやすさがあると思うんです。

 ちょうど配信でけんき(父ノ背中)と話していた時のことなんですけど、その場ではたまたまけんきが一番年下だったんです。そしたら彼から「自分が最年長じゃないことが少ないから嬉しい」みたいな話をされて。自分はその状況になったことが一度もないので、それはちょっと羨ましいなと思いましたね(笑)。

――ここ数年、ゲーム配信やストリーマーの人気がすごく高まっていますが、蛇足さんはこうした盛り上がりをどのように受け止めていますか?

蛇足:すごく良いことだと思います。日本は昔からゲームのプロチームができては消えてを繰り返していて、あまり安定していない印象でしたが、ここ数年でゲームが上手ければ、それでお金を稼ぐことができるようになりましたよね。

 海外の大きな大会で優勝するようなプレイヤーでも、一昔前まではその後のキャリアがゲーム雑誌のライターになるくらいしか選択肢がないということも多かったように思います。でもそうすると、本人のゲームの上手さよりも、伝えることのほうが大事になってくるじゃないですか。それで、その世界に入ってもすぐにやめてしまう人が多かった印象です。なので、しっかりゲームのプレイヤーとして生活が成り立つようになったことはすごくポジティブに受け止めています。

歌い手・蛇足が考える“理想の防音環境” 「騒音を注意する張り紙に『歌声』と書かれて」

――ここからは、ぜひ蛇足さんの「音」に関するお考えやエピソードも聞かせてください。最初は1000円のマイクから始められて、その後は機材や設備もアップグレードされていったかと思います。「歌ってみた」は基本的に家で録ることが多かったですか?

蛇足:そうですね。基本的には全部宅録です。

――近隣住民との兼ね合いなど、防音周りで苦労することが多いというのはストリーマー、歌い手、音楽活動をされている方からよく伺います。蛇足さんも音に関する悩みや、苦労した経験がおありですか?

蛇足:音漏れのトラブルはありましたね。動画投稿を始めたての、2〜3曲くらい投稿した頃に、当時住んでいたマンションのエレベーターに乗ろうとしたら騒音の苦情に関する張り紙が貼ってあるのを見つけたんです。ラジカセやテレビの音、電話の話し声とか色々書いてあったんですけど、一番下に括弧でくくられて(歌声)って書いてあって。もうピンポイントじゃないですか(笑)、確実に俺だと思って。部屋に戻って急いでパソコンをつけて、そのまますぐに防音室を注文しましたね。

――その勢いで。

蛇足:はい(笑)。最初は1.5畳サイズとかの、机と椅子を置いたらギリギリみたいなサイズのものをリースして、引っ越すたびに防音室自体を持って移動していましたね。あらためて、歌って相当な音量なんだと思います。

――逆に、配信であれば声のボリュームも調整できますし、蛇足さんのスタイル的にも少しハードルが下がりそうですね。

蛇足:そうですね。8月にまた引っ越したんですけど、今回のタイミングで騒音に困っている友だちに防音室を譲ったんですよ。どうせ歌わないし、うるさくないから大丈夫だろうと思って。なので、いまは防音室なしです。吸音材はちょこちょこ貼っているんですけどね。

――吸音材は使っていらっしゃるんですね。

蛇足:気休め程度のものですけどね。ちゃんとした吸音材ってめちゃくちゃ高いじゃないですか。スタジオ用のものになってくると分厚くて見栄えとしても難しいですし、普通の部屋に貼るとなると壁紙に直接装着しないといけないので、それを大量に買うのは……と、ためらってしまって。

――今回、調音パネルの『CvoNis』を試していただきましたが、使用してみた率直な感想をお聞かせください。

蛇足:引っ越したばかりというのもあって、部屋に物があまりなくて、部屋鳴りや環境音がかなりあったんですよ。もともとはそれをソフトで軽減していたんですが、今回はそれを切って試してみました。

 宅録用のリフレクションフィルターとは性質が異なるので、自分の前というよりも後ろに置いた方が効果を感じられました。あと、これは試せていないんですけど、今回自宅で使った方はグリーンのカラーなのでクロマキー合成のグリーンバックとしても使えるようになっているんですよね。

 サイズ感的に一つひとつはコンパクトで、そのままだと左右が映っちゃうと思うので、クロマキーで背景を抜いて使うならもう2面くらい増やして、左右に足して試してみたいところです。

――コンパクトなので、自分の使い方に合わせた配置に変えやすい、拡張性が高い点は魅力ですよね。それこそ、過去の蛇足さんのようにお引っ越しされるときもそこまで仰々しくならずに済むかと思います。

蛇足:そうですね。重くもないですし、場所を移動したり、使わないときによけておいたりするのも楽なので、手軽に使える製品だと思いました。これくらいのコンパクトさなら、どこかしらに立てかけておく、みたいな使い方もいいかもしれません。ストリーミング環境に合ったものでもありますが、いまは在宅勤務の人も増えてるから、そういう意味で使える人も多そうです。

――あとは『CvoNis』は調音だけでなく、副産物的な効果が多いのも特長です。防音材にはグラスウールが使われていることが多いのですが、『CvoNis』は天然素材のウールが使われているので、断熱や調湿、消臭の効果もあるんですよ。こういった製品では珍しいですよね。

蛇足:たしかに、調音材でそういった効果があるのは聞いたことないですね。色は両面ブラックのものもあるんですよね?

――はい。あとはインテリアに合わせて白系の色がいいのではといった案や、使わないときはパネルとして置いておけるようにアートを入れる案も出ているようです。

蛇足:いいですね。それだったら、それこそ壁に立てかけておくだけでも見栄えがよくなりますし。リモートワーク用など、クロマキーをしない人が緑のパネルを使うのはちょっと難しいですし、柄や色のバリエーションが増えるとより「欲しい」という人が増えそうです。

 あと、価格帯も普通の吸音材の値段を考えると、この面積でこの値段だったら安い方だと思います。画角外に置いても全然いいと思うので、Webカメラに映らないところに置いておいて、もう少しデッドにしたいときだけ手前に引っ張り出してくるといった使い方でも十分に効果はありそうですね。

――そうですね。壁面に『CvoNis』を置いておくだけでかなり変わると思います。

蛇足:あとはドアとか窓とか、一番音が抜けるところにうまく配置できればもっと良いなと思いました。いま、小窓に大きめのマウスパッドを貼ってなんとかしようとしているんですよ(笑)。

――サイズを変更したりしてフレキシブルに使えるような、フィットできる製品があればさらによさそうですね。

蛇足:それができたらすごく助かりますね。

CvoNis / Separate Folio Panel

https://store.grapht.tokyo/collections/all/CvoNis

■製品情報
『CvoNis / Separate Folio Panel』
希望小売価格:CvoNis / Separate Folio Panel (3枚セット) 43,780円(税込)
       CvoNis / Separate Folio Panel-single (1枚)16,500円(税込)
サイズ   :1枚あたりW1,200×H600×D50(mm)重量2,700g
カラー   :ブラック、グリーン(クロマキーカラー)
素材    :・不織布生地:ポリプロピレン     
            ・ジャージ生地:ポリエステル(カノコメッシュ)
                 ・中わた:羊毛混合ポリエステル
                         ・パネルフレーム:木製 
                         ・パネルヒンジ:ステンレス板蝶番
                         ・パネルジョイント:面ファスナー
原産国   :日本
仕様    :二つ折りパネル。縦積み、横接続可能。
保証期間  :1年

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