イジられ役なだけじゃない、真摯なアーティストとしての姿 にじさんじ・甲斐田晴の“人を惹き付けるギャップ”を振り返る

にじさんじ・甲斐田晴の“人を惹き付けるギャップ”

 現在のVTuberシーンにおけるトップランナーの一つであるにじさんじ。そのなかにおいてもタレントの活躍する分野は日々拡がっている。

 メインとなる生配信に加え、事務所が主導する企画への参加や監修、主に一人ひとりのライバーが主導となって進む歌ってみたなどの動画のほか、ここ数年ほどはエンターテインメントのフィールドでアーティストとして日の目を見る者も増加してきた。

 育成プロジェクトである「バーチャル・タレント・アカデミー(VTA)」からも新規ライバーがデビューし始めており、現在約150名のメンバーが所属・活動しているにじさんじ。その層の厚さで今後も大きな影響を与えるだろう。

 アプリのテスターとしてデビューしたにじさんじの1期生から、近年設立されたVTAからのデビュー組まで、数年のなかでドラスティックな変化を遂げていったにじさんじ所属のタレントたち。こうしたなかで、彼ら/彼女らの「タレント化・アイドル化」が注目されることも多い。

 この変化はバーチャルタレント〜VTuber業界全体で数年以上前から段階的に進んできたものであり、この連載でも何度か触れてきた点だ。にじさんじ所属ライバーの「タレント化・アイドル化」について、もしもキーとなるメンバーをあげるとするならば、それは今回紹介する甲斐田晴ではないかと筆者はひそやかに感じている。

 長尾景、弦月藤士郎の2人とともに「VΔLZ(ヴァルツ)」としてデビューをした甲斐田晴。2020年4月2日にSNSで初投稿をすると、4月4日にYouTubeで初配信をおこない、デビューを果たした。

 甲斐田晴は、一見するとさわやかなルックスと声を持ち、「好青年」という印象を受ける人物だ。そのファーストインプレッションとは裏腹に、彼はコアなオタクでもある。デビュー早々からアニメを中心にして、マンガやゲームなどに精通していることを明かしており、特にフィギュアに関してはデビュー当時から専用棚を作って置いているほど。

 よりコアな話題として美少女ゲームなどにも精通しており、こうしたカルチャーに触れて身につけたオタクらしい感性・センスが配信のなかで滲み出ることも多い。

 彼が人気なのは、さわやか好青年なイメージ/コアな話題にも精通するオタク力といった部分だけではない。フレンドリーで愛想の良い性格や臨機応変な立ち回りを心がけることで多くのライバーに慕われるところは、甲斐田の大きな魅力だろう。デビュー当初は先輩から、ここ1年では後輩とも繋がり、ボケ役が多いにじさんじのなかでツッコミ役あるいはイジられ役として愛されるようになったのだ。

 彼がデビューした2020年4月から秋にかけてというと、にじさんじ内では『Apex Legends』『スプラトゥーン2』『ARK: Survival Evolved』などをメインにしたコラボ配信や大会、共同サーバーを使った企画などがスタートしたころだ。

 現在のように大会のバランス・運営などさまざまな面で「やりやすいメソッド」などがまだまだ掴めてなかった頃、先輩らも「面白い配信」を生み出すために四苦八苦するなか、新人・甲斐田晴はデビューすることになった。

 当初、甲斐田はさわやかな好青年なイメージをもたれていたが、新人ということもあり先輩たちからイジられることが増えていく。それに応えるように「陰キャオタク」(甲斐田自身の自己評価)ながらもボケにツッコミと全力を尽くし、リスナーの笑いを誘うことが増えていった。

 『ARK: Survival Evolved』を使ったトライブ(チーム)対抗のボス討伐企画では、本間ひまわり、天宮こころ、アルス・アルマル、シェリン・バーガンディ、そして後に「ROF-MAO」としてメンバー同士になる加賀美ハヤトと不破湊ら7名で組んだトライブ・魔武天(まぶてん)を結成、多くの見せ場を作り、配信を盛り上げた。振り返ってみれば、現在の彼へと通じていくキッカケとなった配信だといえよう。

 また『VTuber最協決定戦 ver. APEX LEGENDS Season3』では、大先輩であるChroNoiRの両名、叶・葛葉とチーム「イケメン三羽烏(さんばが)」として出場。

 元来イジり役である二人にくわえて、コーチであるゲーム配信者・ボドカもそこへ乗じることでひたすらにイジり倒されることとなった。

 こうしたコミュニケーションを通じて仲を深め、本番では甲斐田らしい献身的なプレイと、慌てた葛葉を落ち着かせる好プレーなど、大活躍する姿を多くのリスナーに届けた。

【ARK/魔武天】チームのため、地下世界でも戦うぞ!【にじさんじ/甲斐田晴】
【漫画】お仕事先での正しい挨拶の仕方。

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