『スプラトゥーン3』非正規アプリの使用に厳重注意 広がる外部サービス活用ーー“グレー”は“白”か、“黒”か

『スプラトゥーン3』非正規アプリの使用に厳重注意

“グレー”は“白”か、“黒”か。外部サービス浸透の例は『スプラトゥーン3』だけにとどまらない

スプラトゥーン3 紹介映像

 今回の任天堂の対応に、一部ユーザーからは批判の声も上がっている。「公式アプリが使いにくいから非正規アプリを使用している」「公式アプリから見られない情報を得るためには、非正規アプリを使用せざるを得ない」。概ねこのどちらかが彼らの言い分だ。得てして非正規アプリ開発者およびそのユーザーと運営の意見の対立は、利便性・体験を重視する前者と、運用を考える後者という構図に帰結する。どちらが欠けてもサービスが存続できないことは忘れてはならない。

 そのうえで前者に欠けている視点があるとするならば、「公式が意図を持って機能の制限や、データマスキングを行っているかもしれない」という点だろう。たとえば、ユーザーのプライバシーや、プレイヤー人口の平均化・維持を考えるなどの視点から、イカリングには、サードパーティ製アプリにある機能が盛り込まれていない可能性もある。

 一方、「ポケットモンスター」シリーズから派生したMOBAタイトル『Pokémon UNITE』(以下、『ポケモンユナイト』)では、『ユナメイト』と呼ばれるサードパーティ製のサービスが流行している。

 ユナメイトとは、独自のマッチング・レーティング機能を持つ、ソロプレイヤー向けの外部ツール。ゲーム内のカスタムバトル・ドラフトモードとDiscordを併用することで、シングルプレイでもチームメイトとなった味方とボイスチャットで連携を取りながら、対戦を楽しむことができる。公式のランクマッチに横たわる「野良プレイヤーとの連携の難しさ」「スキルやレーティングの格差によるアンバランスなマッチング」といった課題に対処したシステムを持つとして、2023年8月のリリース以降、一定数のプレイヤーに受け入れられているサービスだ。

【公式】『ポケモンユナイト』ゲームプレイトレーラー

 『スプラトゥーン3』における非正規アプリと、『ポケモンユナイト』におけるユナメイト。この両者には共通項がある。どちらも公式が開発・提供しているわけではない、サードパーティ製のサービスであるという点だ。

 現状、後者に関しては、運営から是非に関する言及がないため、一概に同じ問題をはらむとするものではない。しかしながら、少なくとも『ポケモンユナイト』内では、「アクティブプレイヤーが外部サービス経由でカスタムバトルへと流出することで、公式ランクマッチに人口減少が起こっていること」「(ユナメイトのサービス対象となっている)日本国内のプレイヤーと、それ以外の地域のプレイヤー間で公式のランクレートの持つ意味・価値が変わっていること」など、今後騒動に発展しかねない火種がくすぶりつつある。

 一見すると、両者には公式から見解が明言されている・されていないという点で、明確な差があるように感じられる。しかし、問題の本質は、運営側にマイナスがあるかどうかだ。ここにも、利便性・体験を重視するコアなユーザーと、運用を考える運営という構図が見え隠れする。こうしたサービスを一部のユーザー側の論理だけで是としていくかには、議論や検討の余地があるだろう。

 また、任天堂が発売する対戦アクション「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズには、ユナメイトのネーミングのもとになった類似サービス『スマメイト』が存在する。リリースされたのは2014年の11月と、約9年の歴史を持つが、こちらもユナメイト同様、公式からは一切の言及がないまま、これまで運営を続けている。

 なかには「先駆的サービスがお咎めなしなのだから、ユナメイトも問題がないのでは?」と考える人もいるかもしれない。しかし、両サービスが母体とするタイトルには、買い切り型と、基本プレイ無料・アイテム課金型というマネタイズモデルの違いがあることを忘れてはならない。

 「スマッシュブラザーズ」は、プレイヤーが購入した時点で売上が立っているのに対し、『ポケモンユナイト』は、長く運用していくことで利益が最大化する。カスタムバトル・ドラフトモードでレーティングマッチを行う現行のユナメイトの仕様では、本来であればゲーム内通貨を使ってアンロックするはずのキャラクターがすべて使用可能であるため、母体となるタイトルのマネタイズポイントを奪っているという問題点もある。

 “グレー”は“白”なのか、“黒”なのか。『スプラトゥーン3』における非正規アプリの問題は、世のさまざまな事象に思考の道筋を示しているような気がしてならない。もちろんそれは、騒動が表面化していても、していなくても、だ。娯楽性が高いゲームジャンルであるとはいえ、各プレイヤーには俯瞰をともなう多角的な視点から、善悪を判断する目が求められているのかもしれない。

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