にじさんじ・弦月藤士郎が体現する“多様な在り方” 活動の節々から読み取れる「自分らしさを大切に」というメッセージ
自分を着飾るコスメやスキンケアにも敏感 活動から垣間見える“弦月藤士郎”という表現
現在、弦月の活動で印象的に映るのは、ファッションやメイクにまつわる配信であろう。
ここ数年は配信やSNSなどを通じてコスメやスキンケアについて話題にあげることが多く、女性・男性リスナー問わずにさまざまなコメントが投稿されることが多い模様だ。
弦月自身もプライベートでは香水をつけており、配信中に明かしたところでは20数個もの香水を所持しているとのこと。また、自身が所持しているコスメを一部公開したこともあり、ブランドの知識だけでなく、用途別の使い方や使用感まで丁寧に話せることから、これまで長い間に渡ってメイクをしてきた経験を感じられる。
平成から令和へと移り変わり、メンズメイクに注目が集まっているるなかで、弦月のような経験者からの言葉はとても有用なアドバイスとなるはず。逆に女性のリスナーのなかには、「メイクに理解のある男性タレント」として弦月の名前を知ったかたもいるかもしれない。
かつて弦月は「僕は、(リスナーが)『弦月のために稼いだ』と思っていつもより稼げたお金を、自分に回してくれた方がたすかるなって思う」「弦月のために稼いだお金で自分用のコスメを買うのはアリ。正直そうして欲しい」と話していたことがある。
「ファッションやメイクは、誰かに見せるためだけじゃなく、自分自身のためにするものである」という意識が根付いているからこその発言は、力強い響きを伴ってリスナーやファンにも届くはずだ。
現在ではにじさんじ公式から他企業の商品PRを任されることも増えており、「弦月といえばコスメ・ファッション」というイメージは今後徐々に強まっていくだろう。
本稿において、筆者がここまで意識的に触れていなかった部分がある、弦月のジェンダーの垣根を超えた在り方だ。
雑談などで見せる口調やノリの良さ、ファッションやコスメなどに対する感度の高さ、公式グッズや衣装のビジュアルで見せる部分からは、どこか既存の男性らしさ・女性らしさにとらわれない姿が見えてくる。
2010年代から現在にかけて、「LGBTQ+」など性的マイノリティやジェンダーバイアスにまつわる問題・偏見、それらに対するケアや問題意識・解釈が盛んに語られてきた。インターネット上だけでなく、雑誌やテレビなどでも積極的に特集が組まれるようになっており、若年層だけでなく広い世代にこういった考え方が広まりつつある。
にじさんじ内で言えば、先に述べた緑仙や引退をしてしまったメリッサ・キンレンカらは性別について「男」「女」という区切りを設けることなく活動を続けていた。
弦月も「性別は“弦月”ということでやらせてもらっている」とデビュー直後から話しており、そうした性別にとらわれない自身の在り方を伝えるように、「女の子じゃなくてもワンピース着ていいんだよ」とSNSでメッセージを送っている。
本稿で記してきた、弦月のビジュアルや活動内容の変化も踏まえれば、その意識や在り方の一端が掴めるかと思う。自身の活動内容・言動をはじめとして「弦月藤士郎」の表現を通し、ファンやリスナーに「勇気」を与えていく。そのしなやかな強さを持って、今後弦月はどのような歩みと姿を見せてくれるのだろうか?