にじさんじ・イブラヒムが放つ色とりどりな魅力 溢れ出る創造性とフランクな雰囲気が人を惹き付ける

『Minecraft』でつくりあげた村・橋・城……建築家・イブラヒムの肖像

 ここまでイブラヒムのゲームとそのこだわりについて筆を進めてきたが、彼の活動の中でもっとも強くこだわったゲームプレイ、そのレガシーについては触れていない。

 『Minecraft』をプレイするときの配信内容とスピード感、くわえてにじさんじサーバーで作り上げてきた様々な建築物とその高いクオリティは、もしかすればイブラヒムがにじさんじに残したもっとも深い足跡なのかもしれない。

 イブラヒムは2020年8月に『Minecraft』のにじさんじサーバーに初めてログイン。翌月の9月中旬からサーバー内で本格的にプレイを始めると、「街よりも空が近い村」とリスナーから呼ばれるほどに辺鄙な場所に自身の住まいを作り始めた。

 中心地から住居となる村までの線路・道を整え、資材となるアイテムのために採掘場もつくり、そこからは地上の建築物を骨組みから完成までつぎつぎとつくりあげていった。

 約1か月ほどで20回程度の配信をおこない、配信時間こそ3時間~8時間と日によって差がありつつ、次々に建築物を完成させていく。彼が手がけた建築物の数・クオリティ・規模感、なにより制作におけるスピード感は、新人離れした“マイクラ玄人ぶり”を感じさせ、多くのリスナーやファンに衝撃を与えることになった。

 一例を挙げてみよう。街の中心地から自身の住まいまでの長い線路を何度も往復するうちに、「この海の上を走る線路、なんかできないか?」と感じたところから、超巨大な橋を制作することを決定。

 橋のデザイン構想・材料集め・実制作などすべてイブラヒム1人が務め、かなり大がかりな建築かつ海の上での作業という難しさがあったにも関わらず、6日間・わずか4回の配信で完成を見た。

""にじさんじ大橋"" 最終回

 建築途中・建築終了後にはにじさんじの同僚らがイブラヒムの村を見学しに訪れ、その広大さ・高いクオリティに驚きの声をあげることになったわけだが、その噂を聞きつけたとあるライバーのリクエストによって、さらに壮大な建築物の制作に着手することとなる。そのとあるライバーとは、元1期生の先輩であり、チーム「なんもしてねぇ」の一員として大会優勝を果たしていた勇気ちひろだ。

「アブラさん(勇気ちひろのイブラヒムに対する愛称)のマイクラがすごいってリスナーがいうから、頼みごとがある。ちひろのためにお城を作ってほしい」

 『Apex Legends』を通じて大会優勝を果たした仲間ということで、和気あいあいとしたムードを漂わせつつ、「城の建築」という思い切ったオーダーを勇気はイブラヒムに出したわけだが、このオーダーをイブラヒムは快諾。以前から建築してみたかったという「天空城」をテーマに制作していくことになった。

 2021年7月10日からスタートしたちひろ城の建築は、高さ・奥行き・自然さを意識しつつ空中に土ブロックを積み上げて浮島を構築することから始まった。普通であればこの浮島を作るだけでも一苦労だが、さらに出来上がった浮島(土台)の上に超巨大な西洋風のお城と城壁を建築していったのだ。

 イブラヒムが苦手な内装も、勇気ちひろのためにと趣向を凝らしたデザインを次々とつくりあげ、城の外には城下町もしっかりとある……といった形がおおまかな建築内容だ。

 ハート型の噴水や、「なんもしてねぇ」メンバーのパーソナルカラーで組まれた窓、「エモくね?」と言いながらストーリー性を持たせて作られた水路、牢屋、図書館などなど……ハリボテなどではなく中身までこだわり抜いた、渾身の建築に仕上がった「ちひろ城」。

 おそらくにじさんじサーバー史上もっとも大がかりであろう建築計画ということもあり、オーダーを出した勇気ちひろとチームメイトのプティの2人も、フィールドの整地・資材確保・実制作に帯同。サプライズでイブラヒムの誕生日を祝うなど、改めてチームワークの高さと仲の良さを見せてくれた。

 今回もまた、建築途中・完成後に関わらず多くのにじさんじの先輩・後輩らが足を運び、多くのにじさんじファンの注目を集めることになったのは言うまでもなく、コメントの言われるがままに足を運んで、「なにこれ…」と絶句する同僚らは後を絶たなかった。

 ゲームの大会やイベントなどで同じチームとなったストリーマーからも「イブラヒムさんの建築、すごいんでしょ?」と声をかけられるなど、「イブラヒムといえば『Minecraft』がすごい」というイメージがすっかり定着したようだ。

 かなりの大掛かりな計画だと思われていた「ちひろ城」建築だが、オーダーを受けてから約2か月後となる2021年9月29日、ちひろ・プティの二人に、そして期待して待っていた多くのファンに「天空城・ちひろ城」がお披露目されることになった。

【Minecraft】ちひろ城を、NsNにお披露目【にじさんじ/イブラヒム】

 その評判は海外にも届くこととなる。著名な掲示板サイト「Reddit」では当建築について「Ibrahim the Minecraft god」と投稿がされ多くの称賛コメントで溢れた。

Ibrahim the Minecraft god 💧
byu/pisxgt inNijisanji

 そして、またしてもイブラヒムの手腕は“公式”に届くこととなる。

 元々、にじさんじの『Minecraft』は国内外それぞれの事務所でサーバーが分けられていたが、ゲートサーバーを通じて日本・韓国・インドネシア・ワールドとそれぞれのサーバーに行き来できるようになり、12月14日にはEN(英語圏)サーバーも統合された。

 イブラヒムはゲームログインの際に必ず使用することになるゲートサーバーのロビースペースを華やかにする、いわばデザイン・建築担当を任されることになったのだ。かなりの大役を1人で任された彼だが各地域サーバーの特色や小ネタを仕込んだ広場を構想、みごとにポップで華やかな広場を制作したのだ。

【Minecraft】ついにクリエイティブモード解禁!にじ鯖ロビー改築計画!【にじさんじ/イブラヒム】

 普段の『Minecraft』配信では使用できないクリエイティブモードやMODをつかいつつ、一つひとつの建築物の意図や特徴を汲んでゲートサーバーに”模写”していったわけが、その構築力・理解力・想像力の豊かさには、広場を新設したあとに『Minecraft』を配信でプレイしようとした多くのにじさんじメンバーの度肝を抜くことになり、「新しくできたロビー広場を見学する」だけで終えてしまう配信もあったほどだ。

 またゲートサーバー実装の影響もあり、海外で活動するにじさんじメンバーが日本サーバーへと見学しにくることがあるが、海外のメンバーが「あそこに行きたい!」と口に出し、海外リスナーからも「行ってほしい」とコメントされる場所として、イブラヒムが建築した村とちひろ城は真っ先に候補に挙がってくる。にじさんじ随一の観光名所となったわけだ。

 ちなみに、じつはちひろ城の建築は2023年9月上旬現在でもつづいている。正確に言えば、完成している状態ではないのだ。イブラヒム自身の活動が多忙になったことや、本丸となるちひろ城が完成したこともあり、イブラヒムが『Minecraft』をプレイすることが少なくなってしまい、城下町部分がいまだ未完成のままなのだ。

 レギュラー番組のMCやカジュアル大会・企画への参加も相次ぐイブラヒム。スピーディかつコツコツと街を形成していく彼のプレイングを、また見れる日を心待ちにしていよう。

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