SFC時代の名作が現行機で復刻 『CLOCK TOWER』はなぜ熱狂的な支持を集めるのか

『クロックタワー』はなぜこれほどまでに支持されるのか

 発売から30年近くが経ってもなお、フリークたちの熱狂的な支持を獲得している『クロックタワー』。その面白さはいったいどのような点にあるのだろうか。

 最大のポイントは、昔の作品であるがゆえのシステムのシンプルさ・不自由さと、ホラージャンルとの好相性だろう。殺人鬼からの逃亡がメインのゲーム性である『クロックタワー』では、マウスポインタでキャラクターに行動の指示を出すという性質上、操作に一定の“もどかしさ”が生まれる。どれだけ状況が緊迫しても、プレイヤーは何が起こるかはっきりとはわからない画面上の各部を冷静に選択しながら、その場をやり過ごさなくてはならない。

 また、ゲームの進行にあたって障害となる敵キャラクターたちは、いつも神出鬼没。初見プレイではトリガーもまったくわからないため、調査や探索には一定の緊張感がつきまとう。これらの要素が「美しいグラフィック」「あえての無音という音楽的演出」「固定カメラ・3人称視点がもたらす映画的客観性」などと絡み合い、プレイヤーを作品の世界に引きずり込む。そこから生まれる恐怖心や焦燥感がゲーム全体に抜群のホラーらしさを与えている面がある。

スーパーファミコン版『CLOCK TOWER』

 一方で、ひ弱な少女である主人公・ジェニファーは、敵からの攻撃や、特定のアクションの繰り返しによって疲労が蓄積すると、次の行動をおこなえなくなったり、倒れてしまったりする。回復には一定時間の休息が必要。もし極度の疲労状態で敵と出くわせば、やり過ごせる確率は途端に低まる。プレイヤーは、先述のとおり神出鬼没なギミックから逃れるために、先にある危機を予測しながらジェニファーを休息させつつ、攻略を進めなくてはならない。

 一見すると不自由さを感じるこの仕組みだが、そこにはホラーゲームとしてのリアリティも同居する。疲れという“自然の摂理”を重んじるそのアプローチは、ある意味で現代的なゲームの作り方ともいえるのかもしれない。

復刻版に期待するポイントは?

『CLOCK TOWER』新規アニメイメージ

 サバイバルホラーの金字塔として現在もなお広く愛される『クロックタワー』だけに、満を持しての復刻には多くのファンが期待を寄せているに違いない。発売を手掛けるサンソフトのプレスリリースによると、追加要素としてアニメーションによるオープニング映像や、新規テーマ曲、新たなカットシーン、映像ギャラリーなどが盛り込まれる予定だという。

 こうした情報を踏まえたうえで、ひとりのファンとして期待する変更点を挙げるとするならば、数々のバグの修正、UI・UXの改善、ロード時間の短縮がその筆頭となるだろう。ひとつのレトロゲームとして完成されたシステムであるだけに、オリジナル版にあった体験を損なわず、より基本的な部分を底上げすることが求められるのではないだろうか。欲を言えば、一部だけでなく全体を通じて、映像面・音楽面のリファインがあれば申し分ないが、それによってバランスが崩れてしまうならば、原作に近い形で復刻されることに意義を見出したい。

主人公のジェニファー

 読者のなかにいるファンの方々は、復刻版にどのような変更を期待するだろうか。発売までは長くてもあと半年ほど。歴史に埋もれつつある往年の名作が、新たなプレイヤーの目に触れることをとてもうれしく思う。

©2023 SUNSOFT
©CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
©2023 WayForward Technologies.
©2023 Limited Run Games.

「アトリエ」シリーズの原点『マリーのアトリエ』が現代に復刻 リメイク版をいま発売することの意義とは

7月13日、『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』(以下、『マリーのアトリエ Remake』)が発売とな…

関連記事