ダイソン初の空気清浄ヘッドホン『Dyson Zone』 着想の原点はまさかの“バックパック”だった

 1998年に日本法人を設立し、2023年で25周年を迎えるダイソン。世界85カ国に進出し、最先端のテクノロジーとエンジニアリングを軸に先進的なプロダクトを世に送り出し続け、掃除機や空気清浄機、ヘアケア、照明など、さまざまなラインナップの製品を販売している。

 5126回の試作品を経て完成した世界初のサイクロン掃除機『G-Force』は日本の市場で受け入れられ、ダイソンがグローバル企業へと成長する足がかりになった。また、ダイソン初の直営店も2015年に表参道へオープンさせ、ダイソンのテクノロジーや製品を実際にタッチ&トライして試せる体験型ショップの可能性を切り拓いた。まさにダイソンにとって、日本は特別な場所であり、重要なマーケットとして位置付けられているわけだ。

 そして、先日にダイソン日本法人設立25周年を記念した「Dyson Japan 25th anniversary Press conference」が原宿Jingにて開催され、創業者 兼 チーフエンジニアのジェームズ ダイソンとチーフエンジニアのジェイク ダイソンが来日。また同会場ではダイソン製品のデモ体験や研究開発の過程を学べる展示など、ダイソンの世界観に没入できるポップアップイベントも開催されていた。今回は同イベントのメディア体験会に参加し、空気清浄ヘッドホン『Dyson Zone』の体験や開発の背景について取材してきた。

「騒音公害」と「大気汚染」という2つの問題に着目

 会場では『Dyson Zone』の開発に携わったシニアエンジニアリングマネージャーのジェームズ ディスーザ氏も自ら解説。ダイソン初のオーディオ・ウェアラブル製品となった『Dyson Zone』はいつの時代も、新たな挑戦を怠らない企業カルチャーが生み出したといえよう。

 これまでの製品における研究開発の知見や、数十年にわたる音響学の経験、オーディオに関する専門知識を駆使することで、空気清浄機能を搭載した画期的なヘッドホンが誕生したという。

『Dyson Zone』の開発に携わったシニアエンジニアリングマネージャーのジェームズ ディスーザ氏

 ジェームズ氏は「6年の歳月をかけ、500以上のプロトタイプ作成を経て完成したのがDyson Zoneになっている。ダイソンが創業以来、一貫して日常生活の問題をエンジニアリングや科学的アプローチで解決していくという姿勢で取り組んできた成果として、画期的な製品を世に出すことができた」と述べる。製品デモでは『Dyson Zone』の開発で工夫したことや、どのような思いを持って取り組んできたかの説明をジェームズ氏は語った。『Dyson Zone』を開発するにあたって氏は「騒音公害」と「大気汚染」という2つの大きな問題に着目したという。

 現在、世界人口の半分が都市部に住んでいるといわれ、2050年にはこの割合が7割に達するという予測がなされている。さらに人口の増加の伴い、交通、輸送、建設などのインフラが発展すると、今まで以上に騒音公害や大気汚染の問題が深刻化し、人々の生活環境に影響を及ぼす恐れもあるのだ。

空気質センサー内蔵のバックパックによる調査が、ヘッドホン開発の原点に

開発時に使われた空気質センサー内蔵のバックパック

 こうした課題をパーソナル(個人)が身につける製品で、どのように解決していけばいいのか。ひとつの突破口になったのが、屋外の空気汚染の実態をデータとして可視化するプロジェクトだった。

 「ダイソンの空気清浄機に搭載された空気質センサーを内蔵したバックパックを背負い、日常生活における空気の状態を調査する取り組みを行っていた。この空気質調査から、都市部での大気汚染に着目し、さらには日常的に騒音公害にさらされる環境に対し、テクノロジーで解決することに挑戦したのが『Dyson Zone』だった」

 また、製品化に向けては「科学的なアプローチ」にこだわり、音を科学するオーディオエンジニアリングを用いて製品開発を行ってきたそうだ。

 「従来のオーディオ製品は、ゴールデンリスナーと呼ばれる人が『良い音』を判断し、音響開発を進めていくのが業界の慣習になっている。だが、人それぞれ音の感じ方や音の良し悪しを判断する基準も異なるわけであり、科学的なアプローチに沿って開発する手法を採用した。没入感のある卓越したリスニング体験や究極の快適性を追求し、ダイソンでしかできないオーディオ体験を目指した」(ジェームズ氏)

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